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いろんな意味でのふたりの格差

4話です。

特に物語に進展がないので覚悟してください。

チアキは悪夢を見ていた。

自分より確実に小さい幼女に手も足も出ないでフルボッコにされるという悪夢を。


レティシアよる戦闘訓練は凄惨なものだった。

まず、近づけない。

というもの、常に半透明の魔力弾が襲ってくるからである。

レティシア曰く、「この程度、魔力を感知できればどうってことないから」とのことだったが、魔力とは無縁な世界で生きてきたチアキには避けるどころか感じ取ることも困難を極めた。

そして、なんとかで魔力弾を切り抜けたチアキに待つのはまさかの体術による戦闘だった。威力は低いものの的確な体捌きであしらわれ、狙いすましたように魔力弾が飛んでくる。


遠距離ならば魔力弾。

近距離ならばステゴロ&魔力弾。


弱体化していたのではなかっただろうか?


そんなこんなで、かれこれ2時間ほど経ち、再度チアキが魔力弾に弾き飛ばされ、立ち上がり挑もうとした時体から不意に力が抜けてその場に崩れた。


「どうやら魔力切れのようね。休憩でも入れましょうか?」


「いや、まだやれるぞ」


「やだ。私が疲れたから休憩。チアキだってまともに動けないんだから休みなさいよ」


「でも、時間がもったいないだろ」


「万全を期したいって私は言ったはずよ。それに、休む間は座学よ。魔力や魔法といったことの説明をするわ」


「わーたよ」


「あんた、だいぶ口調が崩れてきたわね」


「こっちが素だよ。それともあれかもうちょっとかしこまった方がレティシア様はお好みか?」


「そういうじゃないわよ。最初とはだいぶ変わったと思っただけよ。あと、レティシア様じゃなくてレティシアのままでいいわ、今更そんな呼び方されても気持ち悪いだけだから」


「わかったよ、レティシア。これでいいか?」


「ええ」


最初、出会った当初の硬い雰囲気はなくなった二人であった。きつい口調同士ではあるが、最初のとげとげしさは皆無と言える。


「じゃあ、休みがてら座学を始めようかしら」


「おう!」


仁王立ちで仕切り始めたレティシアに便乗してチアキは胡座で正面に座った。

さながら、ちびっ子先生の特別講義といった感じだ。


「じゃあ、何から聞きたい?」


さっそく、説明のために質問を促すレティシア先生。


「結局、魔力ってなんなんですか?」


ノリの良い生徒チアキだった。


「まず、魔力っていうのは体内の精神エネルギーと、空気中にある魔素の混ぜ合わせたエネルギーなの」


精神エネルギー、新しいワードの登場である。


「じゃあ、精神エネルギーってのは何ですか?」


「精神エネルギーは簡単に言うと魂みたいなものね。これだけじゃ基本肉体の維持しかできないの。だから、融通の利かない精神エネルギーにたいして、自然物の素にも当たる魔素を混ぜることで幅広く利用するっわけ」


「魔素ってすげぇんだな」


かなり、幼げな感想だった。


「そうでもないわ。魔素は色々なもののベースなんだけどそれだけだとエネルギー不足。だから、高エネルギーの精神エネルギーと混ぜて使うの」


「じゃあ、精霊ってのはどういう状態なんだ。意志を持った魔力って話だったと思うんだが?」


「そうね。前回より詳しく説明すると、まず精霊は器を失った魂の残滓と魔素が混ざって生まれる自然現象みたいなものなの。で、魂に残った器の記憶から意志を持つようになるのよ。ただ、エネルギーの塊なのは同じだから物理干渉は基本できないわ。でも、特例として魂の密度が高くて純度の高い生者以上の強力なものに限り、実体を形作ることがことが出来るようになるの。それが、」


チアキが割り込むように言った。


「霊獣。今の俺の事なんだな」


決めゼリフを奪われ少し不服そうにレティシアは続けた。


「そういう事。精霊にして生物、故に霊獣。チアキは、生きたまま精霊に変質したことで霊獣になったんじゃないかしら」


ふと、チアキは気になっていたことを思い出す。


「なあ、そういや変質なんだったんだ?」


「変質っと言うのは、チアキみたいに召喚されたり偶然流れ着いたり理由は様々なんだけど、この世界に来たほかの世界の人間がこの世界で生き残りやすいようにこの世界に合わせた変化を意味してるの。普通は、人系種族に変わるはずだから、チアキはかなりのイレギュラーなのよね」


「実際、その種族ってのどれくらいいるもんなんだ?」


「そうね。基本的な種族としては、亜人族、森人族、獣人族、魔人族、有翼族、海人族ね。で、別枠に精霊、龍族、魔獣なんかがいるわよ」


「結構いるんだな」


「さらに、種族の中でも区分があったりするわね。亜人族だったら、人や鬼人とか吸血種なんかがいるわね。あとは、ハーフも亜人に含まれるかな。次に森人族には、白と黒がいるわ。チアキにわかりやすくいいならエルフとダークエルフみたいな感じかな。獣人族は、文字通り人×動物って感じの種族よ。区分としては動物の数だけあるわね。魔人族は、悪魔や淫魔、あと夢魔とかもいるわね。で、有翼族は羽がある以外の特徴はないわね。亜人に区分する人もいるけど当人達が認めてないって感じね。ラスト海人族は、人間をベースに水かきとエラがあって水陸両用の作りをした種族ね。あと、……やっぱり、こんだけ人系種族の種類がある中で、人ですらないチアキってかなりすごいわよね」


改めて豊富すぎる種族のバリエーションを説明しながら、チアキの身に起きた偶然の凄さにレティシアは感心をしていた。

対しチアキはただただ圧倒されながら聞いているだけだった。ぶっちゃけ、かなりの人種がこの世界にいることぐらいしか理解出来なかった。


「かなり、話がそれちゃったわね。この世界にはこれだけの人種があり、それ以上に人がいるわ。まあ、知っていて損はないだろうから頭の片隅にでも置いてなさい」


レティシアは、話題のズレに気づきまとめつつ修正した。


「じゃあ、話を戻すわね。次に魔力使い方の話をするわよ。まず、魔力には属性があって人それぞれで大なり小なり違いがあるわ。これは精神エネルギー『魂』のよる影響ね」


「どんな違いが出るんだ?」


「まず、四大属性と陰と陽の6つが基本の属性よ。個体の『土』、流体の『水』、気体の『空』、そして三つを繋ぐエネルギーとしての熱の『火』の四属性。で、陰のマイナスと陽のプラスが別枠ね」


「ん? 元素の話か何かか?」


チアキは、自身の世界の知識を用いて理解しようとしたが、レティシアはバッサリと否定した。


「それは、あなたの世界での話でしょ。こっちでは、単純な分類でしかないし、強いて言うなら天、地、海の三界を表すってい解釈の方が近いわね」


「なるほどな。じゃあ、陰と陽は何なんだ?プラスだマイナスだなんて言われてもぶっちゃけわかんないしな」


「それものそうよね。じゃあ、対人の魔法の効果を表してると思ってくれたらいいわ。陽の魔法はプラスの効果を与える魔法。例えば、回復魔法とか身体強化の類ね。で、陰はその反対」


「バフ、デバフって感じか」


自身の知識の範囲内で理解を深めるチアキ。逆に、レティシアはチアキの言葉の意味がわからならかった。


「ばふ、でばふってなに?」


レティシアに質問されることでわ、チアキは気づいた。ゲームの存在しない異世界にRPGの用語を使って伝わるわけがないと。


「えっとだな。バフっていうのが味方や自身を有利にする効果の意味で、デバフがその反対で相手を不利にするものを意味するんだよ」


チアキの説明に納得したように頷くレティシア。


「なるほどね。だったら、陰と陽とも意味合いが繋がるわね。じゃあ、属性も理解出来たし次に行こうかしら。じっと座りっぱなしっていうのも飽きてきただろうし、そろそろ体を動かすわよ」


レティシアの言う通り集中力の切れかけてきていたチアキにとっては、ナイスタイミングと言えた。


「おし、今度は何をするんだ?」


意気揚々と立ち上がりながらチアキは言った。

対して、レティシアはチアキから少し距離を取りつつ軽く全身に力を入れた。すると、レティシアの体がこれまでも何度か目にして来た白い光に包まれ、少しの風圧とともにチアキを圧倒した。この白い光がチアキにもにわかった。


「それが、魔力なんだな」


頷き、チアキを満足げに見ながらレティシアは言った。


「正解!で、今やっているのが魔力放出と可視化ね。基本の魔力操作のひとつなんだけど、今からこれをやってもらうから。まずは、感じ取れるようになった体内の魔力を体の外へ出すの。イメージとしては、身体を張って大きく見せようとする感じよ」


ざっくりとしたレティシアの説明にチアキは常に思っていた感想を口にした。


「毎回思うんだが、お前って説明下手だろ。全くわかんないって訳ではないんだが、実演の絡む説明はとんとダメな感じだよな。あげく、体で覚えろの一択だしよ」


本人も多少なりとも気にしていたことを言われ、恥ずかしさからか顔を赤らめ少しばかり震えている。


「どうした、震えたりして図星だったか?」


レティシアの様子から図星だったと察したチアキは、物理的に攻撃できない以上仕返しのチャンスは今しかないと確信しレティシアをからかおうとした。そして、チアキの言葉に対して俯いてしまったレティシアだったが、急に顔を上げ、


「ええ、そうよ!私天才だからやり方がわからないとか思ったことないもの。経験したことのないことなんて説明出来ないに決まってるでしょ。やることは全部新機軸、私が1番にやるんだから方法なんて存在しないし、最終的に成功するだけなんだもん。あとは、勝手に他人が成功までの流れををまとめて方法として確立するんだから説明できなくても仕方ないでしょ。それに大抵のことは、感覚でなんとかして来たんだもん」


軽い逆ギレだった。ていうか、なんか泣いていた。そんなレティシアを見ていると、体どころか精神的にも幼くなっている疑いを抱かずにはいられないチアキだった。

流石に、このままではまずいとチアキも思いレティシアを宥めるのだった。


「レティシアは、さ、流石だよな。お前はすごい、と思うぞ」


嘘臭かった。

レティシアの表情が変わる。


「何が言いたいの、私を馬鹿にしてるのかしら?」


当たり前の反応である。こんな見切り発車のお世辞が、ばれないわけがなかった。だが、チアキのそれは下手すぎるにしてもほどがあった。レティシアは先程の泣き顔から一転怒りがあらわになりだした。


「あなたは私のことを馬鹿にしてるのよね。そうなんでしょう?だから、さっきからふざけたことばかり言っているんでしょ」


拳を掲げ詰め寄るレティシア。


「ち、ちげえよ。馬鹿になんかしてねえって、ホントだ」


命の危機を前に訴えるチアキ。あの拳になにか感じたのだろうか確かな必死さがあった。


「じゃあ、私のどこがすごいのかしら?さっきみたいないい加減な言葉じゃなくて、はっきりと褒めてみなさいよ、バカにしないんだったら!」


必死さに流され、チアキにチャンスを与えることにしたレティシア。


「さっきは、説明が下手だとは言ったがわからないとは言ってない。なんとなくだ伝わってる。それに、お前のすごさは別にあるんだ。まず、めちゃくちゃ強かった。戦い方を俺が知らないって言ったってあそこまで一方的ぼこれるはずねぇだろ、こんなに体格差があるんだから、この時点ですげえとおもうよ。これじゃ、足んないか?」


このチャンスを生かさんばかりに素直なレティシアに対しての評価を口にするチアキ。思いのほか真っ直ぐな言葉にレティシアは驚きを隠せずたじろいだ。


「な、何よ。戦いでしか人を評価できないのかしら」


文句を言いつつも、嬉しそうなレティシア。


「まあ、多少ガキっぽいとこあるけど」


勢いで口を滑らすチアキ。再び、振り挙げられるレティシアの拳に気づき軌道修正をはかり、


「そういう事が、なんつか、か、可愛いんじゃねかと思い始めてなくもないこともない」


再び明るくなるレティシアの表情に気が緩んだチアキ。


「妹みたいで」


ゴンっ


結局殴られたのだった。


レティシア自身もなぜ殴ってしまったのかわからなかった。ただ、最後の言葉を認めることだけはできなかったのだった。その理由もわからず、レティシアは1人苦心するのだった。 気絶したチアキの隣で。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想貰えると嬉しいです。

正直説明ばっかりで申し訳ない限りです。

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