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鴉〜人〜  作者: 座布団
6/16

第6羽

4〜6羽を同時に投稿したので気をつけて下さい。今回あとがきに色々書いてますがちょっとした補足なので気にしなくても大丈夫です。

 


 ◆ミヤ


「いたっ、何するのよトリン。いたっ、まだ朝のこと怒ってるの?」



「もし聞かれてたら髪の毛全部毟ってた」



「そんな恐ろしいことやめて。というかトリンがあいつのこと大好きなことぐらい皆知ってーーいたいっ」



「天罰」



「いったーい、抓る(つねる)のやめてよ。すっごく痛いんだから」



「お姉ちゃん次第」



 ▲△▲△▲△▲△▲


 ◇クレイン



「確かにこれは変だな」



 ギルドでロット山の調査の依頼を受けて来たが、巧妙に隠されたトラップや集団で徘徊するゴブリン。しかもそれぞれ持っている武器も鉄製だ、恐らく襲った冒険者から奪ったものだろう。



「こりゃ確実にキングがいるな」



 それもとびっきりの個体だ。キングの中でも更に上位だろう。このレベルになると国で対応しても下手をしたら負けるだろう。



「グゲェ!」



 見つかったか!5匹のゴブリンの集団がこちらを威嚇している。



「『八咫烏の導き』、エアスラスト」



 ゴブリン達が直線に並ぶ位置に1つ歪みを作り自分の手元にもう1つ作って手を突っ込む。そのまま風の魔法でゴブリン達を切り刻む。『エアスラスト』は直線だけだが広い範囲を攻撃できる上に威力も高い。



「ふぅー」



 何とか仲間を呼ばれる前に殺れたか。キングを見つける前に騒がれるのは面倒だからな。死体も隠しておこう。


 交戦した位置から移動して今は山の中腹らへんだ。頂上に近付くにつれてゴブリンの上位種にあたるアーチャーやメイジをチラホラ見かけるようになった。それらも予想より数が多い。



「早くキングを倒さないとゴブリンやまになってしまうな」



 見つからないようにコソコソと移動すること2時間、ゴブリンの集落らしきものを見つけた。集落というよりちょっとした村のようになっている。



「これは転生者が絡んでる可能性があるな」



 別の世界から転生した何かがモンスターや無機物にその魂を宿すことがあることを永い生の中で何回か見たことがある。今回のゴブリンキングも恐らく転生者の魂を宿している可能性がある。



「前回の転生者から学んだ教訓は『先手必勝』だ。ヴォルテックス」



 村の中で一番大きい小屋を中心にとっておきの魔法を放つ。風と雷の複合魔法の『ヴォルテックス』。色々やっていたら偶然出来たオリジナルの魔法で、電気を纏った竜巻が相手を襲う。ちなみに雷は水と風の複合属性だ。



「もう発火したか。このままだと山の木も燃えてしまうかもな」



 中心の大きな小屋は一瞬でバラバラになってヴォルテックスに呑み込まれ、周りの小屋はヴォルテックスの熱によって火がつき始めた。あの火をヴォルテックスが巻き上げてしまう前に消そう。でないと山が禿げる。


 ヴォルテックスを解除して村跡地に足を踏み入れる。火や電気で焼けたゴブリンや風に切り裂かれたゴブリンがそこかしこに倒れている。

 ヴォルテックスの中心にあった大きな小屋跡地には一際大きなゴブリンがうつ伏せで倒れている。



「グゥ……」



 どうやら生きているようだ。大きさから見てこいつが件のキングゴブリンだろう。転生者である疑いもある。話を聞くために傷を癒してやるか。ポーションをローブの中から取り出してバシャバシャと全体にかける。



「ぅあ……何が」



 目を覚ましたようだ。言葉が俺にも理解できるから転生者でほぼ間違いないな。



「お前転生者か」



「なんだお前……グッ!」



 質問に答えなかったので、右手で首を右膝で背骨を抑える。人ならこれで動くのが難しくなるがゴブリンはどうだろう。



「俺の言葉分かるよな。転生者かって聞いてるんだ」



「そうだよ……ならなんだってんだ。それが分かるってことはお前も転生者だろう?同郷のよしみで見逃してくれよ」



 残念だが俺は転生者じゃないし転生者だったとしても同郷とは限らないだろう。



「お前が普通のゴブリンとして生活するなら見逃してやってもいい」



「普通のゴブリンって何だよ」



「お前が改善しようと思った生活だよ。それが呑めないならここで死んでもらう。もし呑むなら『誓約』で縛らせてもらう」



『誓約』とは、強制力の約束みたいなものでそれを破ると設定されたペナルティーが課せられる。俺が課すのは五感と声の喪失。呪いとは違って俺が解除しない限り戻ることはない。



「クソが!これからだってのに!」



「『誓約』を受けるな?」



「受けるよ……受けりゃいいんだろ!」



 本人の承認を得たので『誓約』をしよう。ゴブリンの後頭部に掌を当てて魔力を流す。魔力を流している間に条件とペナルティーを念じれば完了だ。条件は『永久に()()()()であること』ペナルティーは『五感と声の喪失』だ。このゴブリンというのは俺がイメージするゴブリンが反映されるので、人と同じ言葉は話せなくなるし行動も理性的ではなくなる。強引に破ろうとすればペナルティーが課せられる。



「終わりだ。これでお前は晴れてゴブリンだ」



「グゲガ、ギャガっ!?」



 転生者は思想が危険だったりとんでもない力を持っていたりと世界のバランスを崩す要因になるので見つけ次第殺すか力を封じるしかない。初めの頃は罪悪感もあったが今となっては義務感だな。



「第二の人生じゃなくてゴブリン生を楽しめ」



 呆然とする転生者を置いて山を下る。道中遭遇したゴブリン達は狩ってその装備を回収する。これをギルドに売ればちょっとした収入になる。それにミヤ達もまだ買い物の途中だろう。

『ヴォルテックス』は高周波誘導加熱を元に考えて、竜巻をコイルに見立ててそこに電気を走らせることで発熱するという感じです。竜巻に抵抗値とかあるのか知らないですけどファンタジーなので許してください。

因みに雷属性が水と風の複合なのは水蒸気と上昇気流から来てます。

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