第2羽
明言しますが主人公さいつよです。言うなれば瞬間移動する呂布みたいなもんです。話は変わりますがあの呂布のテーマめっちゃ熱いですよね。シリーズ通して大好きです。
「ふむ、一度寝るか」
読んでいた本を閉じてベッドに潜り込む。
今日はとある商人の屋敷に忍び込んでオークションの参加権利書を盗む仕事がある。忍び込むのは夜が最適なので移動時間も考慮して時間まで寝るとしよう。
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「ふぅ……いい時間だな」
仮眠から起きたのは予定していた時間のちょうど1時間前。依頼内容を再度確認して仕事用の服に着替える。
黒いズボンに黒い服、黒いローブを羽織ってペストマスクを着けてハットを被る。パッと見で無くとも怪しい出で立ちになるが昔から仕事着はコレに決めている。特にこの手作りのペストマスクは防塵防煙仕様で素材も貴重な物を使っている。
「あと30分か……」
柱に掛けている時計はもうすぐ短針が9を指す。滞りなく行けば日付が変わるまでに帰れるだろう。
「レイヴン、依頼が来たわよ」
早めに出ようかと思っていたらうちの長女が帰って来た。
「おかえりミヤ、帰って来たらまずは挨拶をするようにいつも言っているだろう」
「はいはい」
少し生意気なこの少女はミヤと言って三姉妹の長女だ。白銀の髪に赤い瞳で人目を引く容姿をしているがいかんせん残念な娘だ。
「これから行くのってアランだっけ。ならこの依頼もついでにやって来たら?」
ミヤが言ったアランとはレイヤーズ王国のアランの街だ。王都に次ぐ人口で第二の首都と言えるだろう。
「ふむ、『ミード商会の会長の屋敷にあるオークションの参加権利書を守って欲しい』か。今から盗み行くからこれは受けられない」
こういう風に依頼内容が矛盾してしまうことが偶にあるがその時は報酬が高い方を優先するようにしている。悪いがこちらも商売だからな。
「じゃあ前金返して来てよ。どうせ行くんなら権利書の代わりに置いて来たら?」
ミヤの名案を採用しよう。
「もう時間だな。次女と三女にも戻るように連絡しておいてくれ」
「分かった」
さて仕事に行くか。
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転移でアランの街まで飛んで来た。門を通る手間が面倒なので飛翔で街の中に入る。
思っていたよりも住人達が沢山いる。祭か何かあったんだろうか。明日という可能性もあるか。
「とりあえず屋敷に向かうか」
飛翔で屋根に登る。浮遊が使えれば楽なんだが残念ながら俺には使えなかった。
屋根を飛び移ること5分。商人の屋敷が見えて来た。コの字型の屋敷で中庭には噴水がある。
見ると門だけでなく屋根の上にも2人警備がいる。
「『八咫烏の導き』」
警備の背後の空間が歪む。その歪みと同じ物が俺のすぐ隣にも現れる。その歪みの中に体を入れて行くと抜けた先には警備の背中がある。
「ぐっ」
無警戒だった警備の首に腕を回して叫ばれないように口も塞ぐ。そのまま歪みに警備を引きずり込む。
「ふっ」
「ーーっ」
カクンと力が抜けた。上手く気絶させられたみたいだ。
俺の固有スキル『八咫烏の導き』は相互通行出来る2つの歪みを発生させるスキルだ。視界に入る範囲なら何処にでも出すことが出来る。
同じ要領で反対側にいた警備も無力化する。
「さて、あとはゆっくり探すか」
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何事もなく依頼の品を手に入れることが出来た。あとは依頼主のところに行って報酬と交換するだけだ。
「予想通り日付が変わるまでに帰れそうだな」
同じように屋根を飛び移って依頼主の屋敷まで移動するが依頼主の屋敷は三軒隣だった。大胆なことをするなと思ったがそんなものか?
「これだけ近いと正面から入るのはマズイか」
仕方がないので窓から中を覗いてスキルで侵入して依頼主を探すが人の気配が無い。
「……嵌められたか?」
そう呟くと同時に玄関が蹴り破られ鎧に身を包んだ騎士らしき奴らが入って来た。どうやらこの依頼は罠だったらしい。
「この屋敷の中に『レイヴン』がいるはずだ、探し出せ!」
一際凝った意匠の鎧を着た騎士が命令する。恐らくあれが隊長だろう。だが俺を捕まえるのに全身鎧は悪手だな、盗賊団なら良いかもしれないが俺には駄目だ。
「『八咫烏の導き』」
隊長(仮)の足元と胸の前に歪みを作ると……
「うわぁっがは!」
歪みに入った足が胸の前の歪みから飛び出して顔にヒットする。ちゃんと体の沈み込みまで考えて胸の前に歪みを作ったんだ。
「タ、タイラント様!大丈夫ですか!」
隊長の名前はタイラントか、一応覚えておこう。それと今回の雇い主の名前も覚えておこう、恐らく偽名だろうがな。
「帰るか」
基本的に仕事と日常のパートを2羽ごとに投稿していきます。