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8話 素晴らしき王

 更に1年後、レフィクル31歳の時ガウシアン王国は大陸全土を支配する王となった。

 従わない者には容赦なく処刑するレフィクルのやり方は、人々に狂王としての恐怖の対象になる反面、反抗せずに従い働く者の生活は守られたため、熱狂的にレフィクルを讃える者たちも多く存在し、神の如く崇められていく。



「レフィクル様、レフィクル様を讃える神殿は大変な賑わいを見せております。

それとレジスタンスなどと言う連中が集まり、何やらやらかそうとしているようです」

「フム、神殿の方は各地にどんどん作らせよ。 最近、余に神威というものが纏い始めた」

「それはそれは、神界の制圧でもする気ですか?」

「フン、神界などどうでも良い。 神と名乗る癖に高みの見物しかせず、苦しむ者も救わぬ癖にでかい面をしているような輩に興味はない」

「それはずいぶんな言われ様ですが、確かに間違ってはおりませんな。 それで……」

「レジスタンスなど放っておけ。 無気力な者よりマシだ」


 そう言ってレフィクルはラーネッドの待つ部屋へと向かった。

 部屋に入るとラーネッドがレフィクルを心配そうに見つめる。



「最近はいつもその目で余を見るな。

未来では間も無く余が死ぬか?」

「いえ、ただレフィクル様は今のようなレフィクル様では無くなってしまいます」


 レフィクルがそれを聞いてピクッと反応し、ラーネッドがレフィクルにすがるように抱きついてくる。



「お願いしますレフィクル様、今のレフィクル様は私の知る未来の方とは違い、身分差別などをしないとても素晴らしく偉大な王です。

どうかこのままお変わりにならないでください」


 レフィクルはそれを聞いて笑いだす。 しかも高笑いだった。 ひとしきり笑った後すがるように抱きつくラーネッドに口づける。



「余は余だ。余のやり方はよほどのことでもない限り変わらぬし、変えるつもりもない」


 ラーネッドはその言葉を信じる事にした。 なぜなら今まで一度でもレフィクルが嘘をついた事がなかったからだった。



「明日、立つ」

「どちらへ、ですか?」

「わかっているのだろう?」

「そこまでは分かりません。 私はレフィクル様を殺すためだけに訓練を受けて過去に来たのですから」

「なるほど。

ヴェニデに行く。 どうも良く無い噂を耳にした」



 それはヴェニデを任せた領主がレフィクル信者を作り出しているというものだった。

 神殿を作り崇められる程度ならわかるが信者となると話は変わり、場合によっては狂信者になると異教徒という理由だけで殺人が起こりかねない。 レフィクルはそうなる事は避けたいと思っていた。



「全くもって……」

「けしからん、ですか?」


 フッと笑ってラーネッドを見つめる。

 この頃になると、妻であるラーネッドにレフィクルは心を許しつつあった。





 翌日、レフィクルは王都を発つ。

 レフィクルの怒りに合わせたかのように黒い雲が天を包み、シトシトと冷たい雨が降り出していた。



 ヴェニデに着いたレフィクルは領主に早速会い、そしてその場で殺した。



「愚かなことをしたものだ。 こんな事を余が望むとでも思ったか」


 事を済ますとレフィクルはさっさと国に戻る準備を始める。 町からは雨が降っているにも関わらずレフィクルを讃える声が聞こえてくる。

 兵士の1人を呼びつけると、発つのは明日にすると伝えた。



「余の心境でも写すのか?」



 翌朝レフィクルは心を落ち着かせてみると、薄暗く曇ってはいるが雨は降らないようだった。



「近いうち新しい領主を寄こす。 それまで貴様らが指揮をとれ」


 そう言ってレフィクルは国に戻るべく発った。

 町を抜ける間町は祭りのような騒ぎで、レフィクルはこの異常さに少なからず呆れながら馬を進めていた。

 先を進むうちに人の気配は感じるが誰もいない場所がある。 その一点が気になり、見続けているとボンヤリと誰かがいるのが見えてくる。

 レフィクルはわざわざ隠れ見る者に興味を抱き馬を止めてその一点を見つめる。 同じぐらいの年齢だろうか、その隠れ見ている人物はレフィクルが馬を止めて見続けていると、焦り酷く怯えた顔を見せだしていた。



「いかがなさいましたか?」

「何でもない!」


 レフィクルは隠れ見ていた事がバレて慌てているその男の滑稽さに笑みがこぼれ、口元を歪ませると馬を進ませた。


 町を出て馬を進ませる間、町で見かけた自分を隠れ見ていた男の事を思い出す。 妙に一体何者だったのかが気にはなったが、今はラーネッドの待つ王都へと馬を進ませる事を優先させる事にしたようだった。




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