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7話 【闘争の神】

 王宮に戻ったレフィクルは妻ラーネッドが待つ部屋に向かう。



「レフィクル様、ご無事で何よりです」

「明日から忙しくなる。 今日のうちに堪能しておけ」

「……戦でございますか?」

「そうだ、レドナクセラ帝国を我が領土となり東を制圧したとなれば隣国も黙ってはいまい。 後方の憂いがなくなった今、数年のうちに全土を制圧してみせよう」


 そう言ってレフィクルは汗で汚れた衣服を脱ぎ捨てベッドに横になる。 ラーネッドが妖艶な眼差しを向け、貪る様にレフィクルに跨っていくのだったーーー




 翌日からレフィクルはルベズリーブに命じ、広大にして強大な西のトラキアル王国と北の山脈にあるドワーフの国、ロメオ・イ・フリエタに進軍させ、同時に名も聞かないような弱小国をも掌握するため、一斉に動き始めた。


 以前より身分などよりもその能力を高く評価して集めたレフィクルの軍は少数ながら強大で、2年後のレフィクルが30歳になる時、強大なトラキアル王国の大半を制圧していた。





 そんなある日のことだ。レフィクルが1人王宮を離れ物見遊山で、噂で聞いた常に中立を保つキャビン魔道王国を調べに出たときのことだ。



「ちょいとそこ行く兄さん」


 そう声をかけてきた男は一見冒険者の戦士のようで、随分とチャラついた感じがある。 だがレフィクルはすぐにその男から発するオーラの様なものと、身につけている装備から強大な魔力を感じて警戒する。



「余に何か用か、道化」

「兄さん、あんたちょっとやり過ぎだ。 戦いがこのままじゃ無くなっちまう」

「それは余が大陸を制圧するからとでも言うのか?」

「そそ、そういう事。 だからもうこの辺で辞めて貰えたら面倒な事にならずに済むんだよなぁ」


 レフィクルはこの男から感じ取れる雰囲気と、考え方から人ではないと悟る。



「貴様、何者だ!」

「クククッ、良いねぇ、さすがだよ。

俺はさ、闘いと争いを何よりも好む【闘争の神エナブ】様だ」

「フン、神だと? 神が人に頼み事とは、神というのも大したものではなさそうだな」


 レフィクルがそう言った瞬間【闘争の神エナブ】が神威を露わにする。



「あんたさ、ちょっと強いからって調子に乗りすぎだ。 神は人を殺められない掟があるんだが、行きすぎた者に対しては別なんだぜ」


 レフィクルの知る由は無かったが、【闘争の神エナブ】の言った事はハッタリだ。 神の制約である、人種を殺める事が出来ないのはいかなる理由があれ変わりはない。

 【闘争の神エナブ】が脅すように言うが、レフィクルはそれを聞いて臆するどころか口元をニヤつかせる。



「神とやらがどの程度の強さなのか試す良い機会だ」

「あんたさ、神と戦って勝てると思っているのか?」

「それで死ぬようなら、余はそこまでだっただけだ」


 言うが早いか電光石火の如くレフィクルが斬りかかる。 【闘争の神エナブ】はその攻撃を悠々と躱し、鞘に収まったままの剣でレフィクルを殴りつける。

 ブファッと口から血を吹き転がるレフィクルを見て【闘争の神エナブ】は余裕の表情を浮かべる。



「その程度の腕で神に勝てると本気で思ったのか?」


 だが、レフィクルを見ると血反吐を吐いているが、その口元は敗北ではなく喜びに満ちた笑みを浮かべている。



「やっと、余が本気で戦える相手が現れたようで嬉しく思うぞ!」


 言うが早いか、レフィクルがバネのように飛び起き攻撃を仕掛ける。 だが【闘争の神エナブ】は余裕の表情のままだ。



「死ね【闘争の神エナブ】」


 レフィクルのその一撃は【闘争の神エナブ】さえわからなかった。 一瞬レフィクルの姿が消え、ぼやけたように見えた次の瞬間には的確に急所攻撃(スニークアタック)を繰り出してくる。



「き、貴様……」


 だが【闘争の神エナブ】も苦しむ表情を見せながらも、口元を歪ませる。



「拒絶する!」


 【闘争の神エナブ】がそう言うと急所を刺した短剣がポロリと落ち、砕けていた。



「【闘争の神】の拒絶の力だ。貴様の攻撃はーー」


 ボトッーー



「無駄口が多過ぎだ。

身体と首が離れては、拒絶もクソもなかろう」


 レフィクルはそう言いつつも仮にも相手は神、故にレフィクルは油断なく見守っていると【闘争の神エナブ】はスーッと薄くなって消えていった。 そしてその直後、レフィクルに猛烈な頭痛が走る。

 耐え難いほどの膨大な知識を、知恵を詰め込まれていった。

 痛みが治まりレフィクルはニヤつかせる。



「これが【闘争の神】とやらの力か」


 【闘争の神】の力を得たレフィクルはキャビン魔道王国の事などどうでも良くなり、一旦王宮に戻る事にした。




 王宮に戻ったレフィクルは早速ルベズリーブを呼びだす。 そして自身に魔法で攻撃してみせろと酔狂な事を言いだす。



「何を言っているんですか? 何処かで頭でも打ったんですか?」

「良いからさっさとしろ」

「どうなっても知りませんからね」


 ルベズリーブは軽症程度で済む攻撃魔法をレフィクルに放つ。 すると直撃を受けた瞬間に「拒絶する」と声が聞こえたかと思った次の瞬間、魔法が消え去った。



「レフィクル様、キャビン魔導王国に向かったはずだというのに一体何があったんですか?」

「なに、ちょっと途中で【闘争の神エナブ】が余に挑んできたから殺したまでよ」

「……! さすがはレフィクル様」


 フッとレフィクルは笑った。 ルベズリーブは驚く。 この時レフィクルに仕えて初めて自身に向けて笑う姿を見せたのだった。



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