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5話 動き出す世界

 そして8年の歳月が流れ、レフィクルは28歳になる。

 この頃のガウシアン王国は貧富の差がはっきりと別れていたが国に混乱は見られない。 というのも、良い暮らしが出来る者たちは皆身分にかかわらず努力した者たちで、貧しい者たちは働きもせず堕落している者たちだったからだ。


 ラーネッドはスエドムッサに戦闘術を教え込み、今では王宮でも屈指の戦士とスエドムッサはなった。 そしてもう一つの顔である暗殺者(アサシン)の技量も習得する。



「父様、レフィクル父様。お相手願います!」

「良かろう。 お前の成長を見てやる」


 娘となってはいるが、その実親子としての年齢差は10歳程しかない。

 幼いにも関わらずラーネッドの教えによりレフィクルを追い詰めていったように見えた。



「フン!」

「痛ぁい」

「まだまだだな、もっと強くなれ」

「レフィクル様は手加減をしなさすぎなんですよ」


 そう言ってルベズリーブが近寄り、その手に持ったタオルをスエドムッサに手渡す。

 対するレフィクルにはタオルを用意すらしていない。 それもそのはず、レフィクルは汗ひとつかいてはいないからだ。



「貴様の方の首尾はどうなっている」

「上場と言ったところですな。我が領土は拡大しております」

「そうか、ではお前はしばらく王宮で休め。余はセイバートゥースに向かう」

「レドナクセラ帝国、ですな」

「あそこを落とせば大陸東方はすべて我が領土だ」

「あの国は奴隷も多くいますし、スラムも多くあると聞きますからな。 心配はしていませんが、一応お気をつけくださいな」

「貴様こそ余がいない間、ラーネッドとスエドムッサを守れよ」


 ルベズリーブは頷きながらレフィクルの変化に気がついてきていた。



「レフィクル父様お出かけですか?」

「ウム。 余が帰ってくるまでにもっと精進していろ」

「はい、レフィクル父様! 次こそは汗ぐらいかかせてみせます!」


 それを聞いてレフィクルがフッと笑う。






 そしてついに運命が動き始める。


 ルベズリーブと同じ時に王宮に連れ帰った、元奴隷であったログェヘプレーベに領主を任せているセイバートゥースの町に辿り着いたレフィクルは手勢を引き連れ館に入り込んだ。



 レフィクルを待ち構えていたログェヘプレーベは妖艶な美女だ。


「これはこれはレフィクル様、ようこそおいでくださりやがりました」

「はっはっはっ、ログェヘプレーベ久しいな。 相変わらず余を愉しませる」

「それは光栄でやがりますね。 奴隷だった私を召しいたばかりか、今では領主にまでしやがっていただき感謝してやがります。

レフィクル様だけですよ、私のこの喋り方を嫌がりやがらないーー」

「……待て」



 レフィクルが黙るようにして外の様子を気にしだす。 ログェヘプレーベも黙って部屋にいた者に素早く手で指示を出した。

 どうやら侵入者のようで、既に館のホールにまで入り込んでいるようで騒がしくなっている。



 レフィクルが扉を開けホールに向かうと兵士に取り囲まれた状態の兜で顔を隠した男がいた。



「貴重な情報を提供してやるってのに邪魔すんなら皆殺しだぜ?」

「ふざけるな! この人数相手に勝てると思ってるのか!」

「試してみるか?」


 男がそう言って構えた剣、レフィクルは即座に強力な力を秘めている事に気がつく。



「待て、お前らじゃ相手にならん。

貴様、今貴重な情報と言ったか?」


 レフィクルが姿を見せ、兵士達がピシッと姿勢を正す。



「陛下!」


 男はレフィクルをジッと見つめると口元をニヤつかせる。



「あぁ、言ったぜ。 あんたが泣いて喜ぶような情報だ」

「貴様! 陛下に対して無礼だグワッ!」


 レフィクルは無駄口を叩く兵士を蹴り飛ばし、剣を抜いて剣先を男に向けた。



「おもしれぇ! 狂王とやらがどんなもんか試してやるぜ!」


 レフィクルは侵入してきた男の持つ剣に気をつけながら様子を伺うように剣を振るい、そしてスローイングダガーを投げて動きを止める。

 剣を躱した男はレフィクルが投げたスローイングダガーをスレスレで躱した。

 だが、その直後から男はレフィクルの攻撃される場所をわかっているかの様に避け出し始めた。



「ほぉ、騎士魔法を使うか。 貴様ただの傭兵風情ではないな。

名前を言ってみろ」


 油断なくレフィクルは身構えながら尋ねる。



「俺の名前はスレ……セイバーだ」

「スレセイバーか、聞いた事がないな。

それで、まだ続けるか?」


 男は一瞬だけそれは違うだろうとでも言いたげな顔をしたが、レフィクルの持つ剣を睨みつける。



「別にあんたを殺しに来たわけじゃねぇ。 ここへは領主に飛び切りの情報を持ってきたつもりだったが、狂王がいるなら話はもっと早ぇ」

「ほぉ、それは余を愉しませるものだろうな?」


 レフィクルは話を聞く事とにし、剣を鞘に納めた。 それを見たスレセイバーと名乗った男も剣を鞘に納める。



「言ってみろ。 聞いてやる」

「あぁいいぜ」


 スレセイバーはそう言うと、レドナクセラ帝国で今起こっているオークの進軍を説明してきた。

 城塞都市ヴァリュームにいる連中が迎撃し、今頃騎士が冒険者達を率いてヴィローム奪還するために進軍している頃だろうと説明する。 そして皇帝は死にヴァリューム以外なら奪うチャンスだとも言ってきた。


 レフィクルはフムと頷くと、兵士に騎馬隊編成の準備の指示を出し、伝令兵に王都に援軍要請も指示する。



「随分簡単に信用しやがんだな?」

「嘘にしては出来過ぎだ。

それより貴様にもついてきてもらうぞ。 嘘であれば死んで償ってもらわねばいかんだろう?」


 レフィクルがそう言うとスレセイバーは「いいぜ」とだけ答えた。




 騎馬隊がどんどん編成されていく中、レフィクルは自分の隣に立つスレセイバーに声をかける。



「貴様、余の配下にならんか?」

「悪いがお断りだ。 誰かに仕えるなんざ考えただけでゾッとするぜ」

「その腕惜しいな」


 レフィクルがそう言って目を細めながらスレセイバーと名乗った男を見る。 名を偽っている事はレフィクルには分かっていて、国を平気で売る様な男など信用していない。 ただ男の持つ武器にだけは興味があった。



 騎馬隊が編成されるとすぐにレフィクルを先頭に走り出す。 その数たかだか2千騎ほどだ。

 レドナクセラ帝国が一望できる場所まで辿り着くと一度レフィクルは兵馬を休ませる。



「貴様のいうとおりだったな。

全軍に通告、レドナクセラ帝国の帝都に進軍。 生きている者がいれば鎮圧し城を奪え」


 ログェヘプレーベがレフィクルの命令を聞くと直ちに全軍に大声でレフィクルの指示を連呼し出した。



「全軍に通告しやがる! レドナクセラ帝国の帝都に進軍しやがれ! 生きている者は全員皆殺しにしやがりなさい!」


 兵士達が一斉に声を上げて馬に跨り始めた。



「はぁっ!」


 兵を待たずにレフィクルが単騎で帝都に向かい馬を走らせた。

 先陣を切る王の姿を見てログェヘプレーベも全軍を率いて後を追い始める。 スレセイバーと名乗った男は走り行く軍を見ながら考え事をした後、レドナクセラ帝国に向けて馬を走らせた。




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