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12話 レフィクルの未来予想図

「グオオオオオオオオ……己、彼奴らめ……」


 元の肉体に戻り目が覚めたレフィクルが苦悶の表情を浮かべ全身の激痛に耐えている。

 慌てた様子でルベズリーブが転移(テレポート)して現れ、レフィクルに息がある事を確認すると普段通り落ち着いた態度に戻る。



「レフィクル様、随分と酷いお姿になりましたね。だからあれ程己の力を過信しない様進言させて頂いてきたと言うのに」

「五月蝿い! ルベズリーブ、さっさと余を運べ!」

「やれやれ、分かりました。ですがその怪我、暫くは療養が必要になりますよ」


 レフィクルに対してこれだけの発言が出来るのは、彼がレフィクルの絶対なる信用を得ている腹心の1人だから言えるのだ。



「……魔導門(ゲート)

……さぁ戻りましょう。戻って早く休んでくださいな」


 ヨロヨロとレフィクルは歩き、魔法で作り出された魔法の門をくぐり、後を追う様にルベズリーブも門をくぐると2人の姿は消え、少しした後にゲートが消える。




 王宮に戻ったレフィクルを見たスエドムッサが駆け寄り体を支える。



「レフィクル父様! このお怪我は一体!」


 スエドムッサに支えられたレフィクルは、1度我が娘を見つめた後体を預けるように意識を失ってしまう。

 初めて見る父レフィクルのそんな姿に、後から現れたルベズリーブを見て睨みつける。



「ルベズリーブ! 貴方がついていながらこれはどういう事ですか!」

「姫様、申し訳ないんですが私が迎えに行った時、既にその状態だったんですよ。

まぁ命に別状はなさそうなので、しばらく……いえ、たまにはのんびりしていただく良い機会だと思います」

「父様のこんな姿を見てのうのうと……」


 そこでハッとスエドムッサが冷静になり、すぐに近くにいた者に薬師を呼ぶよう手配する。



「神聖魔法が使えれば……

ルベズリーブ申し訳ありません、少し冷静さを失っていました」

「……いえ、私も落ち着いているように見せていますが……」


 ルベズリーブが掌を前に出すとガタガタと小刻みに震えているのがわかった。



「ムッサ姫、レフィクル様の容体が落ち着いたあとでお話をよろしいでしょうか?」


 スエドムッサが頷いて答えると父レフィクルを抱えながら王宮に消えていく。




「クソがぁぁぁぁぁ!」


 1人残ったルベズリーブが初めて怒りをあらわにして叫ぶ。 その光景を恐れながら近くで見ていた兵士の1人に声をかける。



「直ちにログェヘプレーベに来るよう早馬を出すのだ」

「ハッ!」




 薬師が到着しレフィクルの治療を施し容体が完全に落ち着いたのは翌日の事だった。

 安心したスエドムッサは思い出したようにルベズリーブの元に向かう。



「ルベズリーブ……」

「レフィクル様の容体が落ち着きましたか」


 泣き明かしたのであろうスエドムッサが目の周りを赤くさせたまま頷いて答えると、ルベズリーブは安堵の溜息を吐いた。



「それで私に話とはなんですか?」


 ルベズリーブは復讐に飲み込まれつつあるレフィクルの話をスエドムッサにする。 当然それだけでは意味がわからないスエドムッサはルベズリーブに尋ねる。



「復讐に囚われると復讐者(アベンジャー)となりましてね、周囲から畏怖の念を抱かせやすくなるそうです。 そしてその恨みや怨念で力が増幅されるそうですが、同時に負の感情がやがて精神をも支配してしまい、レフィクル様はレフィクル様ではなくなってしまうのです」

「……ぐ、具体的にどうなるんですか?」

「恐らく、としか言えませんが……全ての復讐を終えた後、魔物の様になってしまわれるのかもしれませんね」


 スエドムッサが絶望的な顔色を見せる。 世間一般では狂王と恐れられているレフィクルだが、その実態は非常に民思いであり、以前一度だけ母であるラーネッドとスエドムッサに話していた事があった。




『いずれこの世に神はもちろん、統治する王など必要ない世界を作る。 民が考え民が主導となって動く世界だ』

『それでは意見などがまとまらず争いが絶えなくなるのではないでしょうか?』

『民が権力者であり支配者であり、被支配者となるのだ。 民が自己責任で政治を行う。 その結果が良くも悪くも全て民の決断だ』

『それがレフィクル様のお求めになる世界ですか?』

『努力した者全て報われるとは限らぬが、少なくとも誰にも努力する権利は与えられるべきだと余は思う』

『そうなったら素晴らしいですね。 ですがそうなったら私達はどう暮らしていくおつもりですか?』

『どこか気に入った土地で暮らせば良い』



 その時スエドムッサはまだ小さかった為あまりよくわからなかったが、子供ながらにすごい事なのだろうとだけ思っていた。

 だが最近になりその意味を理解する。 レフィクルの側近は全て元奴隷だ。 だがレフィクルに拾われ努力した者達にはそれ相応の結果が出ている。

 スエドムッサ自身もあのまま奴隷であったら、どこかの貴族に買われ慰み者などになっていたかもしれなかったのだ。



「ルベズリーブ、どうしたらお父様は元のお父様に戻れますか」

「難しいですね。 一応ログェヘプレーベを呼んであるので、彼女に相談してみるとしますよ」

「頼みましたよ、ルベズリーブ」




 数日後ログェヘプレーベが王宮に参上し事の成り行きをルベズリーブから聞く事になる。



「それで今レフィクル様の容体はどのような状態でやがりますか?」

「薬師の力では即時完治とはいかない為、まだ怪我の程は酷いが……今は王宮にて療養してもらっている」

「なるほど、それで私を呼び立てやがった理由は、レジスタンスの所在を探りやがれといったところでやがりますね?」

「さすがはログェヘプレーベ、話が早い。

レフィクル様は放っておけと言っていたが、こうなってくると連中の目的やらを調べておく必要があるだろうとな」

「それでは早速取り掛かりやがりましょう」

「それと復讐者(アベンジャー)についてなのだが……」


 ルベズリーブが復讐者(アベンジャー)について何か知らないか聞くと、ログェヘプレーベは難しい顔を見せてくる。



復讐者(アベンジャー)からの解放は魅入られた者が打ち勝つ以外術は……」

「……そうか、済まなかった」

「それでは」


 着たばかりにも関わらずログェヘプレーベはすぐさま戻ろうとする。



「私の魔法で送ろうか?」


 ログェヘプレーベが立ち止まり首だけ振り返る。



「魔法に頼ってばかりいやがると、いざという時困りやがりますよ」


 ふふふと笑って出ていった。



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