11話 憑依強奪
「今の世を冒険者をしていてどう思う?」
レフィクルは今度はこちらの番だとでも言うように一人一人射抜く様な視線で見つめる。
「それはガウシアン王国が世界を統一してからということですよね?」
「うむ」
そう言われてそれぞれなにやら思い返している様だが、いち早く答えたのはエルフの女だった。
「ヴィロームでの冒険者にとってでの5年間は最悪でした。 入るものは拒まず、けれど町中での生活は高額の税金を徴収される為、宿や食事は高額になり、そして町を出るにも高額の金額を請求される為、冒険者達は町を出るにも出れず絶望だけしかありませんでした」
レフィクルは顔には出さずに驚く。
「ふむ……ヴィローム以外ではどうだった?」
誰1人不満はないようで言う言葉が見つからないのを確認する。 そしてレフィクルは各々が口にする場所からこの連中がレジスタンスの連中だと確信が取れると、そろそろこの茶番も終わりにさせようとする。
「ヴィロームはオークの巣……ダークエルフの住処があり、地上を自分たちのものにしようと企んでいるからな。
その為に冒険者達に常に監視という目的の為にそうしているのだろう。
だが……その話が事実であればやりすぎだな」
「随分とあんた詳しいんだな?ただの放浪者とは思えないぞ」
今まで後方で黙って様子を見ていたスキンヘッドの男がレフィクルに不審な目を向けてくる。
レフィクルはその目を見てニヤリと口角を上げる。
「ヴィロームは早速税収などを調べてみよう。 事実であればヴィロームを任せた領主を罰せねばならんな」
レフィクルが自身の素性を明かす事になる言葉を言うと、一瞬にして3人それぞれ武器に手をかける。
「あんたまさか…」
ゆっくりとレフィクルは立ち上がり佇まいを直す。 そしてこれだけの人数を前に臆することなく威風堂々と……
「如何にも、余がレフィクルだ。
偽りごとを聞きたくないが故、名を偽らせてもらった」
レフィクルはハッキリと素性を明かす。
「相手は国王陛下だぞ! 武器に手をかけるな、無礼だぞ!」
最初に声をかけてきた男はやはりレフィクルを知っていたようで、慌てた様子で止めに入る。
だがレフィクルは自身に挑む者の力量を測るべく行動に移す。 電光石火の如き勢いで3人を素通りした。
「是非もなし」
3人はレフィクルの姿を捉えることもできないままその場に崩れるように倒れた。 レフィクルはそのあまりの脆さに拍子抜けする。
「マルス!セッター!セレヴェリヴェンさん!」
「感謝しろ、殺さないでやった」
驚愕の顔をレフィクルに向けてくるが、その男はレフィクルに武器を向けてはこない。
「さぁどうする、余は無手だぞ?」
それどころか残る男1人と3人の女はあまりの出来事に凍りついているようだ。 噂では神の代行者までいると言われるレジスタンスがこの程度だと知りレフィクルの熱も冷めてしまう。
「興が冷めた。 余の命を狙っていたのでは無いのか?
フン! レジスタンスとはこの程度か、くだらん
余に歯向かえばどうなるか……これは警告だ」
そういうとレフィクルは身近に立っていた、先ほどお茶を手渡してきた女に向かって手を手刀のようにして振り上げる。 女は何が起こったのかわからずただ呆然とレフィクルの振り上げる手を見つめるだけだ。
「や、止めろーーーーーーーー!!」
その攻撃を止めに男が動く。 理由はわからないがずっと気になっていたこの男は、仲間思いのようにみえたため、こうする事で必ず動くと見ていたのだ。 そして見事腕を狙って棒のような杖を振るって防いでくる。 その攻撃を軽く躱し、標的をその男へと変える。
しかしこの男も想定以下であり、レフィクルはもういいとでもいう感じで心の臓を狙って手刀を叩き込む。
「ぐっ…」
「ま、間に合った…の…」
予想外のところからその攻撃を防ぐ者が滑り込んでくる。 それは先ほどまでどこにも目につかなかったほどの大きさの盾であり、使い込んでいる形跡すらない。
「小娘が……珍妙な真似を」
その不思議な力にレフィクルは手刀とは反対の手で短剣を抜き放ち、不思議な力を使ったエルフの小娘に短剣を突きつけようとしたところへ……
「魔法の矢よ敵を打て!魔法矢!」
魔法の詠唱で光の矢が5本レフィクルに命中するが、触れた瞬間に小さく「拒絶する」と呟きかき消す。
「抵抗!? そんなこと!」
「な……んだと!」
同時に声が上がる。
1つは魔法が掻き消された詠唱者の驚きの声で、もう1つはレフィクルからだった。
エルフの小娘を貫こうとしたダガーは突如現れた黄金の鎧で防がれ、短槍が逆に自身を刺し貫いていたのだ。
そこへーーー
「トドメなの! 雷撃!」
そして驚く事にエルフの小娘はレフィクルを貫いたまま短槍から直接魔法を使ってきた。
バリバリと電撃がエルフの小娘が持つ短槍から放出され、レフィクルの体を突き抜けていく。
「グオオオオオオオオ!」
こんなエルフの小娘が今まで数多くの戦いをしてきた中で最も重傷を負わせてきたことに驚く。
レフィクルは貫かれた短槍を無理矢理体から引き抜くと、流石に大ダメージとなったのか、足元はふらつき口と貫かれた箇所から血を吐き流し苦悶の表情を浮かべる。 だがそれとは裏腹に内心で喜んでいるようだった。
「中途半端に生かしたのがあんたの運の尽きだったな!」
いつの間にか意識を刈り取ったはずの目を覚ました3人が手に武器を持ち包囲し、杖を持つ男も加わる。
「この小娘が…」
包囲されていると言うのにレフィクルは他には目もくれず貫かれた腹部を抑えながら、全身金色の鎧に包まれ短槍と丸盾を持ち身構えるエルフの小娘だけを睨みつける。
「はぁ!」
スキンヘッドの男が掛け声と共にレフィクルに切り掛かる。それを合図に一斉に立ち向かっていく。
スキンヘッドの男の剣を腰から抜いた剣で受け止め、7つの宝石がはまった剣を持つ男の剣を逆の手に持ったダガーで受け止める。 当然がら空きになった胴をエルフの小娘が短槍でトドメと言わんばかりに突き入れようとしてきた。
その瞬間レフィクルの口角が上がる。 死を覚悟した顔ではなく、それを待っていたとでもいう顔だ。 レフィクルは【闘争の神】の力である憑依をするつもりでいた。
「セーラムダメだ!レフィクルを攻撃するなー!」
しかしその声は既に遅く、エルフの娘の腕はレフィクルに届かんばかりまで深く突き込まれている。 だがレフィクルに痛覚は一切ない。
「何で……なの?」
レフィクルがエルフの娘の手元を見ると、驚くことに短槍が消え失せている。
どういう事だと頭を上げたところへ……
ズガッ!
エルフの男が放ったが矢がレフィクルの頭部を貫いた。
次の瞬間レフィクルの意識は一瞬だけ遠のきその場に倒れるが、すぐに起き上がり体の各所を確認するように動かす。
そう、今のレフィクルはとどめを刺したエルフの男の体を手に入れていたのだ。
「やったぜ!レフィクルを倒したぞ」
「セレヴェリヴェン…さん?」
「どうしたんですかセレヴェリヴェンさん」
レフィクルは7つの宝石がはまった剣を持つ男が近寄ろうとしたため咄嗟に距離を置いてしまう。
「その小娘が狙いであったが……」
元の体よりも体が重く鈍い。 完全に劣化した状態だった。
「レフィクル、セレヴェリヴェンさんを返せ」
「え?」
「サハラ?」
「貴様、国王であるレフィクルを呼び捨てるか?」
「黙れこの悪魔が!さっさとセレヴェリヴェンさんを返せ!」
「な!セレヴェリヴェンがレフィクル⁉︎」
「私……もう無理……です。
貴様まだ意識を持つか。
マルス、ア……ルダを……」
差し出してくる手にスキンヘッドの男がアルダと呼んだ剣を手渡す。 そして震える手でセレヴェリヴェンは己の胸を心臓を突き刺した。
「無駄だ。 辞めておけ、貴様死ぬぞ?
どちらにしても……同じ事です……自害であれば、貴方も乗り移れ……無いでしょう……
愚かな、そんな事で余が絶えるとでも思ったか。
時間は稼げる……でしょう?皆さん……急いで……目的を……後を……セーラム様を頼み……ます……」




