◇03 淡井美羽との接触
◇03 淡井美羽との接触
「あは。そんなにびっくりしなくてもいーのに」
楽しそうに淡井は笑う。
いや、というか驚かないのは今回に限っては無理な相談だ。なにしろこっちは命がかかっている。
予知夢によれば今日中に彼女からの接触があり、屋上に呼び出され、そして殺されるのだから警戒するなという方が無理だし、そんな彼女に不意を打たれたら、それはもう心臓を直接握られて弄られているんじゃないかと思えるほど動悸が激しくなっても無理はないというものだろう。
とはいえ、それを悟られれば挙動不審な人間と思われる。
「……なに、淡井さん。あ、プリント書いたから、はい」
俺は努めて平静を装って言葉を返す。が、
「そんな取り繕わなくてもいいと思うなっ」
一瞬で見抜かれた。
かなり動転はしたが、かといって態度を変えるのもそれはそれでみっともないだろう。そう考えた俺は、差し出したプリントをひらりと動かしつつ、直前と同じように落ち着いた様子で続ける。
「プリントなら書いたよ」
「もう書いちゃったの?」
淡井は言いつつ、プリントを受け取った。
にまー、と淡井は笑顔を見せる。その笑顔は夢で突き落とされる前に見た、イタズラ心のような感情が表出したようなもので、タイミング的に少しぞくりとしたものを感じずにはいられない。
「そっか。んー、でも一応言っておこうかな」
こほん、とわざとらしくかわいらしい咳払いの後、
「生徒会からの要請です。今日の放課後に、屋上に来てください」
「今日は嫌だと言ったら?」
思わず反射的に答えてしまう。正直、着実に自分の死が迫ってきているようで嫌だ。もちろん、意識して突き飛ばされないようにすればいいだけなのだけれど、どういった文脈であんな事になったのかわからない以上慎重になるべきだろう。
「嫌?用事?でも書類があるし……おねがい、来てくれないかな?」
「俺、あんまり高いところが得意じゃないから」
「嘘ね。だってキミ、フナサキ君に『学校の屋上って特別な感じがしていいよな』とかいってたでしょ?それに、わたしは嘘くらい見抜けるからねっ」
即刻看破されてしまう。
「でもちょっと、本当に嫌そうだね?もし本当に嫌なら来なくてもいいけど、明日書類渡すからそれはちゃんと書いてよ? ―――それじゃっ」
意外にもあっさり引き下がり、俺の答えを待つ事もなく淡井はプリントを持ったまま自分の席に戻って行った。