◇22 夢3
◇ 22 夢3
俺はまたしても屋上にいた。
しかし見慣れた光景ではない。というのも、既に日が落ちており、さらに展望も違っていた。
まず第一に、学校の屋上とは違いフェンスは準備されていなかった。生と死の境が剥き出しになっていて、しかし一方で吹く風は阻害されず解放感にはあふれている。
目の前には、淡井が立っている。
俺と淡井は、何事かを喋っているようだった。
現実感覚が薄く、何を言っているかは理解できなかったが。
人の声が認識できない代わりに、やたらと風音が耳についた。ごうごう、と、風が鼓膜にぶつかってうるさい。
淡井は珍しい事に、時折感情を露わにしていた。いや、感情をあらわにする事は別に珍しい事ではないが、その感情の種類が負の感情、―――怒りだとか悲しみだとかである事は、多少、珍しいと言っていいだろう。
対する俺の心情は、俺自身の事なのにさっぱりわからない。どこか他人の行動を見ているような感覚すらあった。
やがて、淡井が落ち着き、俺も行動を止める。
二人の間に一見すると無為な時間が流れ、実際に無為な風が肌を撫でていく。
淡井の後ろには、生死の境界。
俺はなんとなく、この時点で何が起こるか、朧げに想像ができてしまっていたが。
はたして、俺が動く。
その行動は、しかし、淡井を突き飛ばすといった簡単に予想しうるものではなく。
俺は、淡井に抱きつき、そのまま一歩を踏み出した。
見える駐車場。淡井の驚愕。そして、―――あまりにも早い死へのカウントダウン。
十階以上あるマンションの屋上だったらしく、多少は長い落下を味わう事になったが、直ぐに俺と淡井は車をかすめつつ、地上に重力を以て叩きつけられる。
特に奇跡など起きるはずもなく、俺と淡井はあっけなく死んだ。
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世川和也………マンションから飛び降り、死亡。
淡井美羽………世川和也に巻き込まれ、マンションから落下し、死亡。
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