第一章 - 2
自分のブログ「フィーネ×ノベル×etc...」の以下のページより転載↓
http://blogs.yahoo.co.jp/fine_novels/64254646.html
外に出ると、まだギリギリ日があった。
森の中なので日が落ちてしまうと完全に真っ暗になってしまう。星空の観賞をするならいいんだろうが、今はそれどころじゃない。
「あれ、真奈こんな近くにいたの?」
「それが、永志さまがお婆さんと話している時、これ以上離れられなかったの」
「離れられない?」
試しに、真奈に鳥居の方まで歩いてもらった。すると、だいたい二メートルくらいのところで、これ以上行けないと真奈は言った。
今度は逆に、俺が離れてみることにした。すると、やはり二メートルくらい離れると、今度は真奈が滑るようにして、二メートルを保ったまま俺についてくる。
「これも、さっき婆さんが言ってた力の作用か?」
「多分、そうじゃないかな。やった、これで永志さまと離れられないっ」
「……ふむ、やはりお祓いしてもらったほうがいいかな……」
「うわ~ん、ご主人様がいじめるぅ……」
泣き真似をする真奈をよそに家に帰宅。よそにって言ってもついて来ちゃうんだが。
大広間には、何人か集まっていた。どうやら、会社の人もいるようだ。
俺の父親は「ドリームーン」という超巨大会社の社長をしている。様々な分野を展開していて、ここ数年で最も発展した会社と言っても過言じゃないだろう。
そんな大きな会社の社長が亡くなったわけで、いろいろ会社でも大変だったんだろう。
今ここにいるのは副社長とか専務などの重役数名。みんな、疲れ切った顔している。
分家の人は、父さんの弟とかがいるな。一応、挨拶しておこう。
「おじさん、ご無沙汰しております」
「おお、永志君か。よかったよ、君だけでも助かってくれて」
「一応、巻き込まれなかった優紗がいることをお忘れ無く」
「ははは、そうだったな。でも、やはり男が残ってなくちゃな」
「まあ、そうですね」
「まだ何人か集まってないようだね。流石に今回は全員集まるまで話は出来そうにないから、君は少し休んできたまえ。疲れてるだろう?」
「そう、ですね。おじさんたちも、無理しないでください」
「ああ、そうだな」
おじさんのところを離れ、冬子さんのところへ。
今日はもう部屋で休むと伝え、大広間を出た。
「やっぱりおじさん、いい人ですねっ」
「あれでも、地方の支部全て任されてるくらい敏腕だからな……。下手なことは出来ないよ」
「それで、どうするんですか?」
「一応、優紗の顔見てから風呂入って寝る」
「そういえば、さっきから優紗ちゃん見ませんね。じゃ、優紗ちゃんの部屋に行きましょうか」
優紗とは、俺の実の妹だ。歳は中学二年生。俺の親友……悪友に誘われてちょっとオタクになりかけている哀れな妹。
さっきから見ないって事は、流石に親が死んで悲しんでるのかな。
優紗の部屋についた。なにやら部屋の中から声が聞こえる。
「ふふふ……。これでマキちゃんにお金使いたい放題……」
何を言ってるんだこのアホ妹は。
ちなみに、マキちゃんってのはアニメ化もされたとある人気ラノベの登場人物「壱前真希」のことだ。設定は高校生アイドル。ヒロイン並に人気があり、アイドルという設定もあってかキャラCDが何枚か発売されている。
とりあえず、このままだとまずいので部屋に入ろう。
「優紗、入るぞ?」
返事を聞かず、さっさとドアを開ける。
「ふぇっ、兄ちゃん!?」
案の定、優紗の前にはマキちゃんのフィギア、ポスター、CDと様々なグッズがならんでいた。そして両手には、一番のお気に入りであるマキちゃん抱き枕が。
全て、親の金を使って買い集めたものだ。
「いつの間にそんなに増えたんだ? この前使いすぎで怒られたばかりだよな?」
「あ、う……」
「親が死んで悲しんでるかと思えば……」
「! もしかして、さっきの聞いてたの……?」
「ちょうど部屋の前に来たら聞こえてきた。全くアホが……」
「うぅ~、ごめんなさい……」
「これから忙しくなるんだから、少し気を引き締めろよ」
「はぁ~い。……ところで兄さん、真奈お義姉ちゃんも死んじゃったはずだよね? なんでそこにいるの?」
「「……え」」
優紗が放った一言に、俺と真奈は凍り付いた。
「あっ、もしかして幽霊!? すごい、本物だ!」
そう言って真奈の体をすり抜けるのをおもしろがっている。
「あーマジか。妹も見えるとは……」
「えーとね、優紗ちゃん。私も詳しいことはわからないんだけど、なんだか成仏出来なかったみたい。だから、これからは幽霊として、お義兄さんの面倒みるからね?」
「うん、わかった! アホな兄ちゃんをこれからもよろしくお願いです!」
「……優紗」
「ギクッ。……何? 兄さん」
「アホ」と言われたことを怒ろうかと思ったが、それより重要な事があったので今回は見逃す。
「このことは、誰にも言うな。あと、死亡届を出させるのを全力で阻止しろ」
「へ? なんで?」
「不死身婆さんが生き返る可能性があるって言ってたからだ」
「うえ、あの婆さんが……。でも、あの婆さんが言うなら……」
「そういうわけだ。じゃ、よろしくな。俺は疲れたから風呂入って寝る」
「う、うん……」
優紗の部屋を後にし、自室から着替えを持って浴場へ。
当然のごとく、真奈もついてくる。
「……っておい、外に出てろよ!?」
「って言われても、二メートル以上は離れられないから」
「じゃあ消えたり出来ないのか!?」
「無理です」
「はぁ……」
うちの浴場はかなり大きい。作りもホテルとかにある大浴場みたいな感じで、シャワーがいくつもある。いくら金があるとは言え、なんでこんなものを作ってしまったのだろう。修学旅行とかの団体でも泊める気か。
とりあえず、反対側を見てるよう真奈に言い、服を脱ぎ裸に。
そして、タオルを巻いて中へ……
「あ」
忘れてた。手前にサウナがあるせいで、一番近いシャワーでもドアから確実に二メートル以上はある。
そして、なぜか真奈も裸に……?
「このメイド服、脱げるんですねっ」
「ちょっ」
あちゃー見てしまった。年頃の女の子(ただし幽霊)の裸を見てしまったぁ……。
着やせするタイプかな。メイド服や制服着てる時より大きく……じゃなくて!
「なぜ脱げる!? なぜ脱いだ!?」
「だって、お風呂入るんですよ? 脱がなきゃ服が濡れちゃうじゃないですか」
「そーいう問題ではないだろ!」
「ちょっと恥ずかしいですけど……ご主人様となら……」
「あーもう何今更恥ずかしがってんだ、このアホメイドっ!」
「もう、いいじゃないですか。昔は優紗ちゃんと三人で入ってたんですし」
「いつの話をしてるんだ! いいから早く服着てこい!」
「じゃあ永志さまこっちに来て下さい。じゃないと向こうに行けません」
「はいはいわかったよっ」
この後、真奈に服を着させて、「絶対にこっち向くなよ? 向いたらあらゆる手を使って成仏させてやる」と脅し、何とか風呂に入ることが出来た。
すごく悔しそうにしている真奈を無視して、自室へ。
疲れたしさっさと寝ようってとこで、もう一つ困ったことが起きた。
「一緒に寝ましょっ」
やっぱり。
「お前の部屋すぐ横だから大丈夫じゃ」
「私が大丈夫じゃないです」
「何が大丈夫じゃないんだ?」
「いろいろ大丈夫じゃないんです」
「お前、幽霊になったのをいいことにさっきからやりたい放題してないか?」
「気のせいです。さ、寝ましょう」
これ以上続けても余計に疲れるだけだから今日は諦めよう……。
今後の作品の参考にしたいので、感想・意見等あれば是非お願いします!