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第一章 - 1

自分のブログ「フィーネ×ノベル×etc...」の以下のページより転載↓

http://blogs.yahoo.co.jp/fine_novels/64243207.html

 次に目を覚ました時は、ちゃんとベッドだった。

 どうやら、病院のようだ。

 一日に二度も気絶して大丈夫なんだろうか……? 後で医者に訊いてみよう。

「あ、目が覚めましたか? 大丈夫ですか? どこか痛んだりしませんか?」

 横にいた看護師さんが呼びかけてくる。

「はい、なんとか大丈夫です。ところで、冬子さんは……?」

「メイド服の人ですか? それならすぐにお呼びします。あなたが起きたら連絡するように言われてますので」

「じゃあお願いします」

 看護師さんは部屋を出ていった。

「永志さま! 大丈夫ですか?」

 その直後、真奈の声がした。

「うわっ」

「『うわっ』とはなんですか! お化け見たみたいに……」

「いや、お前そのお化けだろ」

「えーそんなわけ……と言いたいところですが、さっきから誰も反応してくれないし、物取ろうとすると透けて取れないし、壁とか抜けて通れるし、多分そうなんだろうな~とは思ってましたけど」

「じゃあお願いだ、早く成仏してくれ」

「ひど~い! 死してなお主人にぞんざいな扱いをされるなんて……」

「冗談だ。というか『死してなお』っておかしいだろ。お前をそんな扱いしたことないはずだが」

「えへっ」

 はぁ、疲れる。

 しかし、そうなるとなぜ俺には彼女が見えるのだろう? まさか俺、そういう類いのものが見えちゃう体質!?

「……とりあえず、後で神社かどっか行って『看て』もらおう……」

「なんか今、人を病気みたいな扱いされた気がする……」

 と、そこに看護師さんと冬子さんがやってきた。

「びっくりしましたよ。戻ってきたら気絶してるんだもの」

「ははは……、すいません」

 流石に幽霊(しかも身内の)を見て気絶したとは言えない。

「もう大丈夫なんですか?」

「ええ、特に怪我もないみたいですし、大丈夫です」

「じゃあ、すぐで悪いんだけど、自宅に戻りますよ」

「はい?」

「夢月家本家で一気に人が亡くなった上、会社の社長が亡くなったので、分家の人たちが今後について話し合うと」

「で、本家から俺が行け、と」

「優紗お嬢様にも行ってもらいます」

「あいつがいても意味ないと思うが……。まぁいいや、わかった」

「じゃあ、今から行きますよ。あ、看護師さん、ありがとうございました。退院します」

「え、ちょっと……」

 戸惑う看護師さんをよそに、俺は冬子さんに引っ張られて病院を出て、外で待っていたリムジンに乗った。

 というか、ここはどこだ?

 家まで一体何時間かかるんだ?

 今更ながら思った疑問を冬子さんに訊いてみると、

「そんなことより坊ちゃん、こちらの書類に目を通しておいてください。場合によっては明日にもあなたが社長になる可能性だってあるのですから」

 と、返されてしまった。

 ……ちょっと待てよ。明日にも社長!?

 俺まだ高校二年生だぜ……。


 そうこうしているうちに自宅に着いた。

 すっかり忘れていたが、ちゃんと真奈はついてきていた。というか普通に座席に座っていた。

 俺のことを気遣ってか、もしくは冬子さんがいたからか、車内では無言だった。

 正直、話しかけてくれた方が気が楽だったんだが……。

 車を降り、急いで大広間へ。

 しかし、そこには人がいなかった。

「あれ、これはどういうことだ?」

「分家の人たちも忙しいですからね。到着が遅れているのでしょう。海外に行ってる方もいますし」

「……じゃあ看護師さん困らしてまで急いで退院する必要無かったんじゃ」

「……仰るとおりです。ちょっと気が動転してました」

「冬子さんにしては珍しいですね」

「お恥ずかしい限りです……」

 冬子さん――本名、吉里冬子――は俺が生まれる前からメイドとしてうちで働いてくれている。かなりまじめな人で、それを買われて数年前メイド長となった。

 こんなミスするなんて今まで見たことない。やはり雇い主が亡くなった上に、自分まで大きな事故に巻き込まれたから気が動転していたのだろう。

「学校への連絡はもう済んでるんだよね?」

「はい。言われたとおり、真奈の事は言っておりません」

 そう。真奈が死んだことは学校に伝えていない。旅行中の同級生たちを悲しませたくないってのもあるが、少し思い当たる節があったのであえて隠した。

 何か法に触れる気もするが、まぁ大丈夫でしょ。

「それじゃあ、ちょっと『あの人』のところに行ってくるね」

「わかりました。遅くならないようお気をつけ下さい」

 俺はさっき脱いだばかりの靴をはき、外へ。

 そして、家の裏門から出て、人気の無い森の方へ歩いて行った。

「永志さま、『あの人』というのは……?」

「うわっ、びっくりした」

「ちょっとぉ……」

 悲しそうに真奈は俺を見る。未だメイド服だ。

「ごめん、ごめん。さっきからずっと無言だったからさ」

「だって、私と話してたら他の人から見たら独り言言ってる変人に見えちゃうじゃないですか。だから、ご主人様が変人に見られないように気を遣ってたんですっ」

「変人、変人ってなぁ……」

「で、『あの人』って?」

「お前は会ったことなかったか……。いや、記憶にないくらい小さい頃は会ったかもしれないな。あの人ってのは通称、『不死身婆さん』」

「ふ、不死身!?」

「今霊体のお前が驚くな。……みんなからそう呼ばれている。本名は誰も知らないみたいだ。で、その婆さんは今から向かう『占術の寺』ってところに一人で住んでいる。どうやって生活してるのか、それもわからない。独自の占いや変な術を持っていて、その力はかなりのものだそうだ」

「ふぇ~」

「現に、夢月家ではかなり昔からお世話になっている。婆さんのおかげでここまで発展したと言っても過言じゃないだろう、って父さんが言ってた」

「すごいじゃないですか、そのお婆さん。でも、なんで『不死身』なんですか?」

「それがさ、俺の爺さんが子供の時も、父さんが子供の時も、そして今も『婆さん』なんだ」

「えっ?」

「だ~か~ら、いつでも婆さんなんだよ。俺の爺さんが子供の時から今まで、って何十年経ってるよ?」

「あっ、そっか。それで、年を取ってないから不死身ってことね」

「そーいうこと。ほらそうこうしてるうちに着いたぞ」

 目の前には、ぼろぼろの寺が。半壊している鳥居には、かろうじて「占術の寺」と読める。

 日が落ちかけているのも相成って、少し不気味だ。

「ちょっと怖いですね……」

「霊体のお前が言うな……ってつっこみももう飽きたな」

 鳥居をくぐり、中へ。本堂らしき建物の扉を開ける。

 中ももちろんぼろぼろ。明かりなんてものは一切無い。奥には怪しげな扉があり、これまた怪しげな像で塞がれて開閉出来ないようになっている。噂では、その扉の奥に異界の生き物を飼ってるとか、人体実験の施設があるとか。

「婆さ~ん、不死身婆さ~ん」

「その声は……夢月の息子だな?」

 奥から、低い声が聞こえた。そして、暗闇の中からローブで顔を隠し、不可思議な模様のついたアクセサリーをつけ、RPGの魔法使いが持っているような杖をついて一人の婆さんがやってきた。

「ふむ、例の娘も一緒か……しかも霊体じゃとは」

「「えっ」」

 まだ何も言ってないのに真奈に気づきやがった。

 俺もだいぶ昔に来たきりなので、まさか婆さんの力がこれほどだとは思わなかった。

「さしずめ、娘が成仏しないことについて訊きに来たってところかの?」

「そうです。よくわかりましたね」

「ふぉっふぉっふぉっ、わしを舐めるんじゃないよ小僧」

「……で、どうなんでしょう?」

「ふむ……娘よ、ちょっとこっちに来なさい」

「えっ、は、はい」

 さっきの驚きがまだ残っていたようだ。いきなり呼ばれて驚いていた。

 婆さんは、真奈のことをジーと見て、杖で体のいたるところをつんつんしていた。

 真奈は婆さんが少し怖いのか、無抵抗。少しくすぐったそうだ。

というか、なぜ杖で真奈の体を突ける?

「……わかったぞ」

「何か原因があるんですか?」

「この娘、何か協力で特殊な力によっておぬしと繋がっておる。しかし、その繋がりは娘からだけのようじゃ。その力が作用して死んでもなお魂がおぬしに引っ張られてこの世に残っているのだろう」

「じゃあその繋がりを絶てば、成仏すると?」

「え」

 しまった。余計なこと言った。

真奈が悲しそうに俺の方を見ている。うわぁ、超瞳うるうるさせてんじゃん。これ以上この話しにくいなぁ。

「確かにそうじゃが、ちょっと特殊な術を使えば、生き返らすことが出来るぞ」

「「本当に!?」」

「ああ。ただ、ちょっと準備に時間がかかる。その間に自然とその力が切れてしまう可能性もあるが……」

「いいです! 生き返る可能性があるならなんでもいいです! 何とかして数年でも数十年でも待ちます!」

「真奈、興奮しすぎだ。……でも、そうだな。生き返らせられるなら、試す価値はあるだろ」

「そうか。じゃあ、わしはこれから準備に入る。準備が出来次第、お前の家に手紙を出す。それまで待っていておくれ。そうそう、お金は夢月の方に請求しておくぞ」

「金取るんですか……?」

「当たり前じゃ。わしの仕事は無料じゃない。それに今回はかなりの大仕事じゃ。それなりの額になると思ってくれ」

「常識の範疇でお願いしますよ……」

「おぬしの家なら払える額じゃよ。それではな」

「お願いしますっ!」

 真奈がすごく気持ちのこもった声で言い、外へ。

 俺も続いて出ようとすると、婆さんに杖の先端で肩を捕まれた。

 そして、すごい小声で、

「あの娘は、生前から常人にはない何か特殊な力がある。何かまではわしにもわからん。一応、知っておけ」

 と言って、杖を離した。

今後の作品の参考にしたいので、感想・意見等あれば是非お願いします!

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