第四章 - 1
自分のブログ「フィーネ×ノベル×etc...」の以下のページより転載↓
http://blogs.yahoo.co.jp/fine_novels/64370612.html
そして課外学習の日。
今回は珍しく近場で、寺とか神社が密集していて、外国人観光客が好きそうなところだ。
しかも、中高合同。さぞ、現地住民にとっては迷惑だろう。
「優紗~、準備できたか~?」
「もうちょっと~」
一体何にそんな時間がかかるのか謎だが、優紗がまだ部屋から出てこない。
「女の子は身だしなみを整えるのに時間がかかるんですよ」
「制服でも?」
「髪型とかお化粧とかあるじゃないですか。それに光明学園は緩いからアクセサリーも相当派手じゃなきゃつけてオッケーだし」
「ふーん」
女子はよくわからん。
数分後、ようやく支度の出来た優紗と共にリムジンに乗り込む。
そこから良助、美波、雪乃の家に行き、彼らを拾ってから現地へ。
幸い、道路は空いていて集合時間からかなり余裕を持って集合場所である大きな駅の前に着いた。
「とうちゃ~く!」
「美波は元気だな……」
ぐったりした様子で良助がつぶやく。
「良助君、どうしたの?」
と、雪乃が心配そうに訪ねる。
「昨日夜更かしして……」
「アニメ観てたんだろ」
「なぜわかった……?」
俺の指摘に驚く良助。と言っても、そんなに驚くことではない。だって……
「そりゃ、同じ状況のやつが身近にいるからな……」
俺の横には優紗が大あくびをしていた。こいつも同じアニメを観ていたんだろう。車の中では爆睡してたし。
集合時間になり、優紗とは一旦お別れ。
まず学年ごとに点呼を取るのだ。
俺たちは担任のもとへ行き、各自名前を言っていく。
その後、担任から注意事項を聞き、それが終われば班で自由行動だ。
課外学習とは名ばかりで、今回の目的は中高の交流。そのため、班は中学生五人、高校生五人の計十人で構成されている。
中高の組み合わせはランダムだが、それ以外は自由のため、うちの班の高校生はもちろん俺、良助、美波、雪乃だ。班自体は修学旅行の前から決めていたので、本当は真奈も入る。
対する中学生は優紗と優紗の友達四人だ。意外にもちゃんと男子がいることに驚き。まあでも、優紗がちょっとオタク気質があるから気の合う男友達がいてもおかしくはないか。
まず、お互いに自己紹介。相手はみんな中二で、男の子は上谷君と下山君、女の子は大川さんと小池さんというらしい。あ、あと優紗ね。
ルートは、高校生の方が決める。午後二時~三時の間に指定された場所に着いて担当の先生に報告することと、渡された地図の範囲から外に出ないこと、昼食は公園などで持参した弁当を食べること以外に規則はないので結構自由にルートを決められる。
俺たちのルートは、行く場所をしぼり、徒歩でぶらぶらする感じだ。
中学生たちの方にも依存はないようなので早速出発。
まずは、駅から一番近いお寺へ。
結構有名な場所で、時々歴史モノのドラマで使われたりしている。
お寺の方もそれを売りにしているのか、「あのドラマの撮影現場」とか「俳優の○○さんがここに来た」みたいなことが書かれている。
しかも拝観料を取る。もうどっか海外の教会みたいだ。
しかし、どうやら大川さんと小池さんはその俳優のファンらしく、喜んでいる。
「なあ永志」「ねえ兄ちゃん」
良助と優紗が同時に聞いてきた。
「「○○って……誰?」」
「……は?」
いやいや、あの俳優、今超人気じゃん。あまりドラマ観ない俺でも知ってるくらいだぞ。
それを聞いたのか、真奈と雪乃は笑いを堪え、美波は呆れてる。
「あんた達、後輩もとい友人の前で無知さらしてんじゃないわよ……」
「え、そんなに有名なのか?」
すると、ご親切に大川さんと小池さんが説明してくれた。
それを聞いて優紗と良助は納得したようだ。
なぜ優紗とこの二人が仲良くなったんだろうか……。
そういえば、心配の種がおとなしい。
(どうした、真奈?)
(霊体のせいか、なんだかこういう場所だと気が重たい……)
(そりゃ良かった。そのままおとなしくしててくれ)
(ちょっ、酷い……)
後輩二人の解説があったおかげで、大して見る場所のないこの寺でも小一時間潰せた。
というか、これくらいいないと拝観料の割に合わない気がする……。
続いて、そこから十数分ほど歩き、かなり有名な神社へ。
ちょうどお祭りの時期なのか、本殿への道にたくさん屋台が出ている。見終わったら少し寄ってみよう。
この神社は本殿に行くためにかなり長い階段を昇る必要がある。
「よし、誰が一番早く昇れるか勝負しよう!」
突然、美波がそんな提案を出した。
「おいおい、高校生になって何を……」
「最下位は後で一位の人にチョコバナナを奢る! いいでしょ?」
中学生達は盛り上がっているが、こちらはそうではない。
だって、中学生に美波以上の規格外の運動神経を持った子がいない限り、一位美波の最下位良助は確定だからだ。
「じゃあ他の人の迷惑にならないようにね。よーいどん!」
自分でスタートの合図を出してそのまま猛スピードで階段を駆け上がっていく。
その後ろを何とか追いつこうとする中学生達。優紗は運動不足だからかちょっと遅れている。
そしてさらにその後ろを俺と雪乃。半分も昇らないうちにへとへとの良助が一番最後だ。
結果、思った通りになりました。
「じゃあ良助、あとでチョコバナナとリンゴ飴ね」
「はあ、はあ。なんか増えてるぞ……」
つっこむだけで反論する気力が残ってないようだ。これもいつも通りだな。
「丘咲先輩すごいですね……」
「運動部じゃないのになんでそんなに運動神経いいんですか?」
上谷君と下山君が美波に質問している。確か、二人とも運動部だったな。
「大したことしてないよー。ただ小さい頃から体動かすのが好きで、毎日欠かさずランニングとか簡単なストレッチとかやってるだけだって」
「さ、流石です……」
その後、疲れ切っている良助に肩を貸してやりながら本殿をぐるっと一周。
たまにはこういうのも良いもんだなと、感じさせられた。
下に降りて屋台を見て回る。まだまだ昼食まで時間があるから、みんなで割り勘してたこ焼き二パックを買い、食べた。
(あー、私も食べたいなぁ)
(戻ってきたら地元のお祭りにでも行こうぜ。そのとき買ってやるよ)
(ホント!? ありがとね!)
一応、ちょくちょく真奈の相手をしているが、思った以上に大変だな……。
優紗はさっきから同い年の友達と話していてあまりこっちに来ないし。まあ誰でもそんなもんだろうけど。
ちなみに、元々よく食べる美波はたこ焼き一個や二個程度じゃ満足するはずもなく、ちゃんと良助にチョコバナナとリンゴ飴と綿菓子を買わしていた。
あれ、なんかまた増えてる……。
ゴミの処理がめんどくさいので屋台で買ったものをその場で済ませ、次の目的地に向けて出発。
今度は駅前の商店街だ。駅、と言っても集合場所の方ではなく、その一駅先の駅だ。
寺とか神社ばかりじゃ面白くないだろうと思ってルートに入れた。
かなり昔から地元の人たちに愛されていて、大型スーパーとかコンビニとかが何軒も建ってきている今でも、商店街の活気は変わっていないそうだ。
八百屋や魚屋はもちろん、老舗のお店や駄菓子屋などいろいろなお店が並んでいる。
「寺とか神社ばかりじゃつまらないと思って入れたけど、やっぱり中高生に商店街は面白くなかったかな……」
発案者の雪乃が心配そうに言う。
しかし、それは杞憂だった。
「お、なんか懐かしいものが並んでるぞ」
良助が見つけたのは古いおもちゃを取り扱っているお店だ。
確かに、そこに並んでいるのは俺たちが小学生のころ流行ったおもちゃだ。幼稚園、保育園の時のものまである。
「すげー、懐かしいなこれ」
良助がとある特撮モノの人形を手に取る。それを見た上谷君が反応した。
「あ、池波先輩それ知ってるんですか?」
「もちろん! いやー、小学生のころ好きでよく遊んでたなぁ。なあ、永志」
そういえば、よく良助と美波とその人形使って遊んでたな。真奈は怪獣が怖くて嫌がってた。
「そうだな。確かうちの倉庫にまだ保管してあるはず……」
「こ、今度見せてもらってもいいですか!?」
「あ、ああ。良いよ……」
「よっしゃ!」
上谷君よ、そんなに興奮しなくても……。
女子グループも何か見つけたようだ。
あれはどうやら……着せ替え人形かな。
「島崎先輩もこれ持ってたんですか?」
「ええ。懐かしいですね……。まだ私の家にたくさん残ってますよ」
「今度お邪魔してもいいですか!?」
「はい、お待ちしてます」
なんだか同じ流れになってる。
(懐かしいですね~)
(あーそういえば俺らが怪獣で遊んでる時、お前一人で着せ替え人形で遊んでたな)
(ホントですよ! あんな怪獣のどこが良いんだか……)
(確か、人形の一体を良助に持ってかれて、怪獣と戦わせてるの見て真奈がキレたことも……)
(う、そんなことまで覚えてたんですか)
(今これ見て思い出した)
数分店内を見て回り、ひやかしだと悪いと思ったのか、良助と雪乃、上谷君、小池さんがそれぞれ怪獣の人形と着せ替え人形を買っていった。
そろそろ昼が近づいてきたので、俺たちは最終地点の方に行けるハイキングコースへ。
一度来たことある美波がルートを決める時、「あたし絶景ポイント知ってるから、そこで昼食にしよう!」と提案したからだ。
ずっと歩きっぱなしだったので美波以外は少し疲れてきたようが、もう少しでお昼なのでそれまでは頑張ろう。
そして十数分後。
「すっごーい!」
「壮大ですね!」
美波が言う絶景ポイント。それは、ハイキングコースの途中にある、この街を一望できる高台のことだった。
「あの辺が集合場所の駅かな?」
「うーんと、そうだね。で、あそこが一番始めに行った寺だな」
「こうしてみると結構歩いたんだなぁ」
それぞれが感想を言うと、胸を反らして美波が、
「へっへーん、すごいでしょ」
と、自慢げに言っていた。ちなみに美波の胸はあまりない。
(確かにすごいですけど……これってハイキングコース通る人なら誰でも気づくんじゃ……)
(真奈お義姉ちゃん、それは言っちゃダメ)
(そうだよね~……)
久々に真奈のもとに来た優紗がひそひそ会話している。
真奈の声は美波には聞こえないんだからそんなに警戒しなくてもいいだろうに。
「よし、じゃあお昼にしようか」
ちょうどその場所にはベンチがいくつかあったので、分かれて食事。
折角なので、中学生と高校生のペアで食べることに。
後輩達を少し待たせて高校生組で話し合い。
「じゃあとりあえず永志と優紗ちゃんは決まりね」
「なにが『じゃあ』だよ」
「だって、優紗ちゃんのことはみんな知ってるし、会おうと思えば他の子より会いやすいじゃない」
「だから、俺たちが他の子と交流するために、お前には犠牲になってもらおうってことだ。悪く思うな」
「はぁ……」
「私が優紗ちゃんと食べようか……?」
「いや、大丈夫。雪乃は後輩達と食べてくれ」
「そう……? ありがとう」
「じゃあ、後輩達に誰とがいいか聞いてくるか」
後輩達にその話をし、結果俺、優紗(、真奈)ペア、美波、上谷、下山ペア、雪乃、小池ペア、良助、大川ペアとなった。
なんで良助と大川さんがペアなのかと思ったら、どうやら大川さんはお笑いが大好きで、良助みたいな面白い人も好きらしい。それで、今までの珍エピソードを聞きたいんだとか。そんなに良助面白いか……?
小池さんは、やはりさっきのおもちゃ屋でのことから雪乃と食事。元々お互いにおしとやかだからお似合いかも。
男子二人はスポーツの話を聞きたくて美波のところへ。良助のところに行かなかったのは大川さんに気を遣った可能性もあると後で優紗から聞いて知った。
さて、他人の観察してないで、俺たちも昼食にしますか。
と言っても、昼食は優紗とほとんど変わらない。そりゃ、同じメイドさんが作ってるからねぇ。違いと言ったら弁当箱と中身の量くらいか。
「なんでこんなところまで来て兄ちゃんとご飯食べなきゃいけないのよ!」
「そりゃこっちが聞きたいわ……」
「まあまあ二人とも、今なら私と周りを気にせずに話せるからいいじゃないですか」
「そういえば、心配してたほど悪戯しないな」
「そんなしょっちゅう悪戯してません~。本当はしたいけど」
「したいんかい」
「だって、いくら良助君と言えど、可愛い後輩の前で痴態をさらさせるのは流石に可哀想って言うか……」
「なんだその理由」
「まあでも確かにそうだね」
「優紗も納得するなよ……」
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