プロローグ
自分のブログ「フィーネ×ノベル×etc...」の以下のページより転載↓
http://blogs.yahoo.co.jp/fine_novels/64228947.html
それが、一体どれだけの時間の出来事だったのかはわからない。
突然衝撃が起き、次の瞬間には吹き飛ばされていた。
そしてそのまま、俺は気を失ったらしい。
「……っちゃん、永志坊ちゃん!」
「……う、ん……」
女性の声――メイド長の冬子さんの声だ。
一体何が起きたのだろう? 全くわからない。
それに、俺は地面に寝ているようだ。背中に感じる冷たさがそれを物語っている。
「冬子さん……。一体何が起きたんですか? 確か、自家用機で九州の方に向かっていたはず……」
「落ち着いて聞いて。エンジントラブルで突然飛行機が落ちたの。幸い、落ちたのは森の中で他の人に迷惑をかけることはなかったんだけど……」
「ほ、『他の人に』ってことは……」
「……」
その沈黙が全てを物語っていた。
周りを見ると、木々と、壊れた飛行機と、冬子さんしか見えなかった。
もちろん、飛行機に乗っていたのが俺と冬子さんだけなわけがない。その時乗っていたのは、俺と両親、冬子さん、機長、副機長。そして、俺の専属メイドで大切な義妹――。
頭がその事実を受け入れるまで少し時間がかかった。
そして、それを理解した時、
「うわああああああああああああっ」
俺には、泣くことしか出来なかった。
一体どれだけの時間が過ぎたのだろう?
どうやら、まだ俺は森の中にいるようだ。
とりあえず、落ち着いた。まだ、現実を受け入れたくない気持ちはあるけど。
近くには、やはり壊れた飛行機があった。どうなったのかはわからないが、火事にはなっていないようだ。
冬子さんは……近くにいない。
ん、置き手紙がある。
「ここだと電波が通じないので、電波が通じるところまで行って、救助を要請してきます。ここから動かないように」
よかった。彼女までいなくなったらどうしようかと思った。
とりあえず、何か使える物がないか壊れた飛行機を探索してみよう。
その時いろいろ見ちゃったら……まぁその時はその時だ。どのみち乗り越えなくちゃいけないんだから。
まずは一番近くにあった残骸を探る。トイレらしきものがあるから、どうやら飛行機の後部のようだ。
ぼろぼろのトイレットペーパー、割れた鏡、くの字に曲がったドア。
うーむ、使えてもトイレットペーパーくらいか。
飛行機の向きから考えると、前方は向かって左の方だろう。残骸もそっち側に多い。順番に見ていくか。
ところで、どうして俺と冬子さんだけ助かったのだろう?
確か……俺はちょうどトイレを終えて立っていたんだっけな。冬子さんは食事の準備をしてて座っていなかったんだろう。
ということは、シートベルトをしていた方が助からなかった……。悲しいな。
少し歩くと、飛行機の翼らしきものがあった。どうやら飛行機の真ん中くらいのようだ。
「これは……」
そこには、土にまみれた足があった。
細くて綺麗な足。母親ではないだろう。
「真奈……」
やはり、実際に見てしまうと悲しみが溢れ出してくる。
同い年の義妹で、俺の専属メイド――。俺はメイドなんて思ってなかったけど、彼女は俺に尽くしてくれた。
もしかしたら、うちになんて来なければ、こんな事にはならなかったのかもしれない。
「ごめん、ごめんな、真奈……」
もう届かないとわかっていても、謝罪の言葉が口から出てしまう。
きっと彼女は、うちに来て悪かったなんて思ってないだろうけど。
「…………」
その時、何かが聞こえた。すごく小さいが、確かに聞こえた。
動物の鳴き声ではない。人間の声だ。それに、何か聞き覚えがあるような……。
俺は、全神経を耳に集中させて、もう一度聞こえないか待った。
なぜか、幻聴じゃないかって感じはしなかった。
「……いし……ま。……いしさ……」
「!?」
この声は……真奈!?
いやでもこの足は確かに真奈のはず……。
そりゃ、生きていればうれしいけどさ、流石に見間違えないって。
「永志さま! 永志さま!」
「ま、真奈!?」
声が聞こえた方を向くと、そこには真奈の姿が。
「よかったぁ~。永志様、無事だったんですね!」
「えっ? えっ?」
もう何が何だかわからない。幻覚でも見ているのだろうか……。
混乱する俺をよそに、喜びのあまり俺に抱きついてきた真奈……だったのだが、その姿は透けるように俺を通り過ぎてしまった。
「あれ? 永志さまを真っ正面にとらえていたはずなのに……」
この天然メイドめ。もっと状況を見ろ……
「って、もしかして……」
「? どうしたんですか」
少し冷静になって考えてみよう。
まず、彼女の服装。
九州の方に向かっていたのは、修学旅行(現地集合)のため。彼女は俺と同い年だから、普通に俺と一緒に学校に通っている。そして、学校行事の時はちゃんと制服を着る。しかし、今の彼女の服装は家にいる時のメイド服。着替えるのがめんどくさいからと言って今回は家を出た時から制服だったはず……。
それに、さっき真奈が抱きつこうとしてきた時。
真っ正面から向かってきて、そのまま俺を通り過ぎた……。
ここから導き出される答えは、
「ゆ、幽霊!?」
「ほえ?」
その直後、俺は気を失った……。
今後の作品の参考にしたいので、感想・意見等あれば是非お願いします!