第8話 火竜
起きたら昼過ぎだった。
とりあえず、ギルドで昨日の魔石を換金する。3860ゾルになった。
PTの2倍弱か。まあ、目的が魔法取得だったからおまけみたいなものか。
でもなんか騒がしい。
緊急招集とかいってる。
自分には関係ないと思ってギルドをでようとして捕まった…。
火竜が地上で目撃されたらしい。
回復職が必要だとかで、全体回復持ちの自分が目を付けられたようだ。
それも長時間維持できるということもバレてる。
上級魔法が使えるところまで…。エクスプロージョンか。
緊急招集から逃げるとギルドから強制退会させられるらしい。
もはや、逃げられない…。
誰だ、自分の能力をギルドにばらしたのは?
狼が犯人と見て間違いない。
広場まで連行された。
火竜と戦いたくない…。
S、Aランクを招集しているようだ。
もう、諦めた。とっとと終わらせて欲しい。
だんだん、賑やかになってきた中でぽつんとしている俺。
火竜と戦うとすれば使えるのは上級氷攻撃魔法コキュートスか。
昨日覚えたばかりで撃てるかすら分からない。
そんなことを考えていると声をかけられた。
「こないだのダークエルフじゃないか、お前も上級だったのか」
この前、助けたPTのプレートメール着た前衛のようだ。
「いえ、回復職として来たので上級じゃないですよ」
「神官で呼ばれてるのは、Aクラス以上だぞ」
「神官じゃないです…」
「神官以外の回復職ってないだろ?」
「呪術師です…」
「そんなの聞いたことないぞ?」
説明が面倒だが、無視するわけにもいかないしなぁ。
「全体回復に特化している回復職なんですよ、だから中級でも呼ばれたんです」
「どのくらいの能力かわからんな、すごいのか?」
「半径150mの味方全員を常時回復させることができます」
「めちゃくちゃすごい能力じゃないか」
「そろそろ、呼ばれるみたいですよ」
職業ごとに分けられるようだ。広場にはもう50人ほど冒険者がいる。
こんな人数で大丈夫なのか?
このうちSランクってどのくらいいるんだろうか…。
回復職が呼び出されたので行こうとしたら、お前は向こうだと言われた。
そこは魔法職の場所じゃないか…。
「お前は、上級魔法を撃ってMPがなくなったら回復職の陣地ではなく前衛後方中心に移動しろ、前衛の150m以内だ」
もはや逃げられない。狼め、死んだら恨んでやる。
「魔法職で上級魔法を撃てるのはどのくらいいるんですか?」
「お前を入れて今は4人だ、先月1人死んだ」
「コキュートス以上の上級魔法はありますか?」
「氷魔法の最上級がコキュートスだ。お前は撃てるのか?」
「覚えていますが、撃ったことはないです、中級じゃどうせ撃つ相手がいないし」
「これでコキュートスを撃てるのはお前を入れて3人になった」
1人撃てないのかよ!まあ、自分も発動できるかどうか分からんけど。
「早く持ち場に行け!」
魔法職の場所には12人いた…。誰だ覚えてない奴は?
ちなみに神官は8人くらいいる。残りが剣士だろう。
隣の魔法職に聞いてみた。人間の女の子だ。
「神官が少なすぎないか?」
「冒険者の神官自体が少ないのよ、上級者となるとあのくらいでしょ、というかなんでダークエルフ?真夜中のダークエルフってソロと聞いたけど、なんで魔法職にいるの?前衛ならもっと前よ」
「最初はここから魔法を撃てと言われたんだよ」
「魔法術師がソロなんて、あなた馬鹿でしょ?」
「回復職なんだよ」
「だったら、あっちよ」
「魔法も撃てるんだよ、もう出発だぞ」
ぞろぞろと西に向かって進んでいった。どうやら西の城門に向かっていくみたいだ。
「なんの魔法を撃てるの?」
「コキュートスだよ、それに火竜なんて下階層の魔物だろ?なんでこんなに集まってるんだ?」
「どこで覚えたのよ、そんなの!それと火竜じゃなくて火竜亜種よ。最下階層にいる覇竜よ」
聞いてねーよ!無茶苦茶強いじゃん。それ。
城門をくぐってどんどん西に向かっていく。西の森が燃えているのが見える…。あそこなのか。
森の入口で止まった、ここで待機らしい。そうすると、覇竜らしきものがこっちに向かってきている…。でかい!
詠唱が始まった。上級魔法は有効範囲が広い。俺もコキュートスの詠唱を始めた。
詠唱が終わった、魔法が発動する。
MPが一気に持ってかれた!エクスプロージョンよりもMP使うのかよ。
3発のコキュートスと1発のサンダーストームが覇竜に撃ち込まれた。
続いて中級魔法が撃ち込まれていく。
空を飛んでいた覇竜が地面に落下する。前衛がそれを迎え撃った。
自分も前衛の後ろに移動し、探知で30人の前衛を補足する。
全体回復を発動した。
竜は麻痺状態になっている。誰かサンダーウェブかパラライズを撃ったんだろう。
次々と剣が打ち込まれる。
これだけ入ればいくら何でも楽勝じゃね?
傷ついた覇竜が火を吹いた、一気に前衛が飲み込まれた。
俺は残り少ないMPでパラライズを撃った。
魔法が飛びかい覇竜はまた麻痺状態になった。
神官の詠唱が始まった。8人って少なすぎるよ。前衛30人いるんだし。
最初の一撃で死んだ前衛はさすがにいないがHPがかなり削られてる。
前衛は、それでも必死で剣を打ち込んだ。
覇竜が叫び声をあげ、尻尾を振り回しながら倒れていく。
前衛が巻き込まれて何人かふっ飛ばされている。
覇竜は死んだが、前衛で死んだものは5人だった…。ふっ飛んだ際に死んだようだ。それが探知で分かっていた。
戦闘時間は10分に満たないだろう。それでも死者がでた…。全員Aクラスだったそうだ。
ふと、ギルドカードを見た。レベルは54になっていた。