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第20話 逃走

休んでいると隊長のフュリアスが本部から戻ってきた。


「司令官があなたをお呼びよ」


まあ、そうなる気がしていた…。おれはイングランドには行かない。


「久しぶりだな、セージ。今回は君のおかげでジブラルタルは陥落したよ」


ベルリン本部で会ったレックス軍のヴルフだった。


「俺は魔法を撃っていただけですよ、ギガースを沈めたのはヴァラーハです」


「謙遜するな、君がいなければジブラルタルはこんなに早く落ちなかっただろう。勲章を出すぞ」


そんなものは要らない。俺は面倒なことには付き合いたくないのだ。


「勲章なんて要りませんね、金だけ貰えればそれでいいです」


「そうか、報奨金もはずむぞ」


アヴェルアーカが喜びそうだな。


「ありがとうございます」


「それで次の戦いなんだが、君に参加して欲しい」


だからイングランドにはいかないっつーの。


「ドーバー海峡を渡るのでしょう?俺は参加しません」


「そう言わずに、君がいないとこの作戦は成り立たないのだ」


知らんって言っとるがな。もう逃げよう。


「少し考えさせて貰えませんか?」


「うむ、急には判断できんか。分かった、時間をやろう」


金を貰ったら即効で逃げよう。


「まず、今回の報奨金を頂きたいんですが?」


「分かった、これでいいか。約束の金額より多めにしてある」


どうでもいいよ。これで逃げれる。


「では仲間とも話して今後のことは決めさせて貰います」


俺は金をアヴェルアーカに渡してそのまま2人で逃げることにした。


逃げる先は念のために西アジア連合国のイスタンブールだ。





「アヴェルアーカ逃げるぞ」


「急にどうしたのよ、なんで逃げなくちゃいけないの?」


「しっ、隊長に聞かれる、静かに!」


「ちゃんと説明してよ」


「俺たちの次の戦場はイングランドだ、ドーバー海峡を渡って上陸することになる。そして、上陸作戦には大量の戦死者がでるもんなんだよ。アヴェルアーカは死にたいのか?」


「死にたくはないわね、セージが無理と思うのならその戦いは負けるんでしょうね」


「分かったらさっさと逃げるぞ、金は貰った。すぐここを出る!」


金をアヴェルアーカに渡した。


「分かったわよ、どこに逃げるのよ?」


「ベネチアから船でイスタンブールまで逃げる」


「まあ、いいわ。付いて行くわ」


イングランドを守っているのは恐らくギガースだろう。拠点防御にあれだけ向いている機人はいない。


ホークアイを吐き出すあの凶悪な機人だ。そして俺のサンダーボルトはギガースには麻痺魔法としてしか効かない。

それも単一攻撃魔法だ。全体攻撃魔法ではないのだ。イングランドに行けば間違いなくやられる。


戦線の極端に短かったジブラルタルと違ってイングランドは広いのだ。

無数のギガースに包囲攻撃されれば殲滅されるしかないのだ。


俺の考えでは上陸作戦は無理だ。戦死者が出るのを覚悟して波状攻撃をかけるしかない。戦死者が大量にでるのが前提の作戦なのだ。


俺たちはベネチアに着いて、そこからイスタンブール行きの船に乗った。


程無くして、西アジア連合国のイスタンブールに着いた。


後は、イングランドの上陸作戦が終わるまでじっとしていればいい。





俺は日よけのコートを頭から被ってアヴェルアーカを連れて酒場で情報を仕入れることにした。


ダークエルフはこの世界には俺しかいない。俺の姿は目立つのだ。


冒険者らしいグループがいた。なにか情報が聞けるかも知れない。


「私たちはレックスから来たんだけど、最近の情報が知りたいのよ、なにか知ってる?教えてくれたら酒を奢るわよ」


アヴェルアーカに任せて俺はじっとしていた。


「ジブラルタルが落ちたって聞いてるな、凄腕の冒険者がギガースを殲滅したんだってな。レックスから来たんだったらそのジブラルタルの英雄とやらの話を知ってるんじゃないか?」


俺のことかよ、そこはスルーだろ。


「ええ、知ってるわよ。その冒険者はセージっていうエルフらしいわよ」


だから、スルーしろよ。


「それより、イングランドの方で戦争が起こるって聞いてないかしら?」


そうだ、それでいい。


「サウスランドとレックスが準備をしているって聞いているぞ、ジブラルタルの英雄というのを探しているそうだ」


やはり、そうなるのか。ジブラルタルで俺はやりすぎたようだ。


「その英雄を見つけると賞金がでるらしいぞ」


俺は賞金首になってしまったようだ…。


「アヴェルアーカ、ここをでるぞ!」


「色々と情報をありがとう。お金は置いて行くわね」


俺たちは宿に戻った。俺は宿から出るわけにはいかなくなった。アヴェルアーカがいてよかった。1人だったら早々に捕まっているだろう。


「俺はしばらく宿に篭っている。アヴェルアーカは好きに動いていいぞ」


「あなたは見つかったら大変なことになるわね。私が情報を仕入れておくわ」


どうやら、俺を見つけるのを諦めて上陸作戦は決行されることになったらしい。


結果として失敗したらしい。俺の思った通りだ。それで大量の戦死者が出て上陸作戦は断念したそうだ。


やはり、イングランドに行っていたら俺たちは死んでいた。


「セージの言った通りになったわね、イングランドに参加していたら私も死んでいたわ」


「これでレックスもサウスランドも懲りただろう、ネロディに戻るぞ、アヴェルアーカ」


俺たちの逃避生活は終わった。ネロディに戻るのだ。


イスタンブールからベネチアを経由してネロディに戻った。





ネロディに戻るとギルドから呼び出しを受けた。


そこにはフュリアス隊長がいた。


「あなたたちをずっと探していたのよ」


「イングランドに行きたくなかったからですよ、どうなったかはもう知ってるでしょ?行っていたら俺は死んでましたよ」


「確かにあなたは正しかったわ、上陸作戦は断念したわ。そこでヴルフ司令官からあなたへ呼び出しが来ているの」


「嫌ですよ、行きたくありませんね」


しかし、俺は無理やり連行された…。


「セージくん、君を探してたんだよ。どこに行ってたんだい?」


ここはベルリン本部でレックス軍の司令官ヴルフがいた。


「ちょっとしたバカンスで南の方に行ってたんですよ」


「君がいなかったせいで上陸作戦は失敗したよ」


「俺が使えるのは敵を倒す魔法じゃなくて麻痺させる単一攻撃魔法なんですよ、ギガースに包囲攻撃されたら俺でも死にますよ」


「ほう、イングランドに行ってもいないのにずいぶん詳しいね」


「行ったらどうなるか分かっていたから逃げたんですよ」


「なら、君に聞こう。どうすればイングランドは奪えるのかね」


「ただ1点に波状攻撃を繰り返すだけです。大量の死亡者を出すことを前提にですね。それなら橋頭堡を奪える可能性はあります。ただし、死亡者は膨大な数になるでしょう」


「そんな作戦を命令できると思うかね」


「普通の人なら無理ですね、死ぬために戦争に行けと命じるわけですから」


「分かった。イングランドは諦める。正直、今度の戦争の敗北で戦力がガタ落ちしているのだよ。これ以上は無理はできないのだ」


「イングランドに力をいれるくらいならスカンジナビアを制圧することですね、そちらの方が現実的です」


「君の言うことはもっともだ。検討しよう、もう帰ってもいいぞ」


言うだけいったので、もう無茶な作戦は立てないだろう。昔の戦艦があれば沿岸射撃で機人を減らせただろうが言わなかった。大型戦艦でなくてもいいのだミサイルを使えばいい。まあ、いらんことは言わないでおこう。

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