第19話 ジブラルタル陥落
俺たちはエジプトに着いた。レックスからの返事も来ていた。そのまま戦えということらしい…。
ここからスーダン、エリトリア、ジプチ、ソマリアと南下していかなければならない。
気が遠くなるがやれという以上仕方がない。準備に2ヶ月かかるようだ。兵站の用意が大変なんだろう。
北アフリカ戦線では中央アフリカへは進出したことがないそうだ。2カ国では戦線を維持できないからだ。
俺たちはカイロで準備が整うまで待つことになった。武装獣はこの街の整備工場でメンテをしてもらっている。もちろん無料だ。
俺はモロッコの戦いでレベル230まで行った。どこまで上がるんだ、これ?
どうやら、北アフリカ戦線にヴァラーハが投入されるらしい。モロッコであの大火力が有効的と判断したんだろう。
2カ国で生産中のようだ。
そうして、2ヶ月たった。いよいよ戦争の始まりだ。
俺の仕事はマザーシップの相手だが、スコーピオンやドラゴンとも戦わなければならない。そういえばここにはジャイアントがいないかった。ギガースもモロッコの山地にしかいなかった。やはり砂漠では二足歩行は速度的に問題があるか?
砂漠では転びやすい気もする。安定しないしな。
俺たちはスーダンに進出した。やはりヴァラーハが配備されたのが大きい。戦いが楽になった。どんどん後ろからヘヴィスナイパーキャノン砲が撃ち込まれていく。
機人はスコーピオンとドラゴンだ。俺も戦っているが駆逐する速度が速い。兵站がいるため、速度が上げられないが順調だ。
1ヶ月でスーダン、エリトリア、ジブチを突破した。後は、エチオピアとソマリアだけだ。
俺たちは、エチオピアに進出した。そこで機人たちは待ち構えていやがった。
そう、ギガスコーピオンがいたのだ。そのエナジーサークルはギガースよりも白い。一番固い強敵だ。
ジャイアントの代わりの機人も出た。砂漠用の新型機人だろう。全長100mはある機械のトカゲだ。軍はリザードと命名した。しかし、エナジーサークルは赤だ。防御力はジャイアントくらいだろう。
しかし、ここを突破しないと終わらない。ギガスコーピオンはジャマーを出しながら、スコーピオンを吐き出し始めた。
ギガスコーピオンは地味にうざい強敵だ。
しかし、ここには猪ことヴァラーハがいる。スカンジナビアの時とは違うのだよ!ヴァラーハの猛攻にギガスコーピオンは沈んでいく。前衛はスコーピオンとリザードを片付ければいい。
マザーシップも出てきた。12機もいる。俺はデストロイ3発で沈めた。これでマザーシップは当分こないだろう。
俺たちは徐々に圧していった。
ギガスコーピオンが抵抗しようとするが、ヴァラーハの大火力の前では無力だ。
俺は、スコーピオンとリザードを破壊していく。
空には雲がない。晴れ渡っていやがる。サンダーボルトは撃てない…。このまま地味に圧し続けるしかない。
1ヶ月で機人をソマリアまで押し込んだ。戦闘は続いている。ソマリアを奪取しないと紅海は確保できない。
時おり来るマザーシップは俺が撃ち落とす。
さらに1ヶ月戦い続けた。ようやくケニアまで機人を圧しこんだ。ここまで3ヶ月もかかった。
野営しているときに、話してみた。
「フュリアス隊長、俺たちの仕事はここまでですよね?」
「軍からの命令はここまでよ、ここの司令官と掛け合うわ」
ここの司令官はナポリターノというらしい。おいしそうな名前だ。
フュリアスが帰ってきた。
「司令官との話はついたわ、ここで撤退よ」
問題は帰りだ。また戦いながら戻るのは嫌だ。アヴェルアーカも嫌がるだろう。
「帰りはどうするんですか?また陸路で戻るのは嫌ですよ」
「紅海は確保したわ、船で帰るわよ」
水中用機人とかいないんだろうか?野暮なことは聞かないでおこう。まあ、相手は機械だから水中は駄目だろ。
俺たちはソマリアから1ヶ月で中欧連邦のベネチアに着いた。そこからは陸路でネロディに戻る。
本部があるベルリンまで一緒に戻らないかとフュリアス隊長に言われたが断った。また仕事が増えるのは面倒だ。
だが、報酬はベルリンで払うことになるとフュリアスが言うので結局は折れることになった。まあ、ネロディからは遠くない。
報酬だが、ケルベロスが4機買える金額になった。結構な大金だ。ケルベロスはフェンリルの6倍はするのだ。
ベルリンについてお偉いさんに会うことになった。仕事は増やしたくない。あれだけ戦争に付き合ったのだ。
「私がベルリン本部の司令官、ヴルフだ。君のおかげでモロッコの制圧と紅海の確保ができたそうだな。感謝する」
モロッコではがんばったが、紅海方面ではそんなに働いてないんだがな。
「モロッコで少し働いただけですよ」
これ以上、期待されても困る。あそこに行けと言われたくない。そうジブラルタルだ。
ジブラルタルには嫌な思い出しかない。
「モロッコを抑えたので後はジブラルタルを取ればドーバー海峡への出口を確保できるんだよ」
やはり来たよ。いくらヴァラーハを投入してもあのレーザーと爆発弾の嵐を突破するのは厳しいんだよ。
それよりアヴェルアーカが嫌がるだろう。
「ジブラルタルを抑えてもイングランドがあるからドーバー海峡には出れないでしょう」
抵抗してみた。
「ジブラルタルを取れば、イングランドが見えてくるんだよ」
海を渡るのは無理だって。上陸作戦なんか戦史を見ると戦死者だらけなんだよ。俺は死にたくはない。
「イングランドを取ってもそれを維持するのは大変ですよ」
「それは軍の仕事だ、なんとかする」
これは駄目だ。後はアヴェルアーカと相談だ。
「ジブラルタルに行くのは少し考えさせてもらえないですかね」
「無理強いはしない。考えてみてくれ」
やっと逃げれた。アヴェルアーカとの相談が面倒そうだ。
俺はアヴェルアーカの説得は無理だと思ってフュリアスに任せた。
「アヴェルアーカ、どうかジブラルタルに行ってもらえない?、上からも言われて困ってるのよ」
「また負け戦は嫌よ!」
ヴァラーハがいれば勝てないことはないと思うが俺は黙っていた。怒ったアヴェルアーカが怖いからだ。
「今度は勝てるわよ、同じ過ちはしないわ。前回よりも戦力を注ぎ込むわ」
「勝てる保証はあるの?」
「うっ、保証はできないが前回より勝ち目のある戦だとは言えるわ、報酬もはずむわ」
金かよ、確かにアヴェルアーカは金には弱い。
「前回と同じケルベロス4機分よ!これ以上は負けられないわ、戦いに負けても出して貰うわよ」
「分かった、それで手を打とう」
アヴェルアーカも納得した。後は、開戦まで待つことだ。
俺は1つ注文を付けた。ジブラルタルで戦うなら冬から春の間にすることだ。夏が一番まずい。この地域の雨が多い季節を選んだ。雲がなくなるとサンダーボルトが撃てなくなる。ちなみに今は春だ。今から始めるのは準備が間に合わないだろう。できるだけ有利な方がいい。
あと、俺は紅海方面での戦いでレベル252まで上がった。やはり、ギガスコーピオンか。やつなら上がるのか?
ジブラルタルまでにもっとレベルをあげる必要がある。もっとMPが必要だ。しかし、ギガスコーピオンがいるのはスカンジナビアかケニアだ。俺たちはフュリアスから話を通してもらいモスコーヴィア軍の戦線に参加した。
そして、冬が来た。俺のレベルは272まであがった。やはり、ギガスコーピオンじゃないと効率よくあがらないようだ。
ジブラルタルでの戦闘の開始だ。作戦は伝えている。俺はデストロイを撃たない。ひたすらサンダーボルトを撃つ。
麻痺したギガースを集中砲火で沈める。MPが切れたらその回復に努める。その間は、耐えてもらう。
そして、今天候は荒れている。サンダーボルト日和だ。
おそらく1日で撃てるサンダーボルトは今のレベルでは50発が限界だろう。それを繰り返せば2日で100機のギガースを減らせるはずだ。問題は、現実に一日でそんなに撃破はできるかどうかだ。後は俺がいない間に戦線を維持できるかどうかだ。
俺は戦闘の開始と共にサンダーボルトを撃った。ギガースが麻痺する。そこにヴァラーハの攻撃が集中する。
前衛の役割はスコーピオンとジャイアント、そしてやっかいなホークアイの破壊だ。
ギガースが沈むと次のギガースへサンダーボルトを撃ちこむ。麻痺する。ヴァラーハの攻撃が集中する。
俺たちは50回これを繰り返した。そして50回目を撃つ頃には夜間での戦闘になった。
俺はMP回復に努めることにする。仮眠を取るのが一番早い。
アヴェルアーカも引き上げてもらった。俺が寝ている間に死なれても困る。
「あの魔法使いはどこにいった?攻撃が止まないんだよ!」
「今日は引き上げたそうだぜ、それまで耐えろって指示がきてるんだよ!」
「無理言うなよ、ギガースだらけだ。なんとかしてくれ!」
起きると、サンダーボルトを撃ちまくった。なんか視線が痛い…。だが作戦通りに行くしかない。麻痺したギガースをヴァラーハの集中攻撃で撃破していく。
ひたすら繰り返しだ。変化が起きたのは2日目だ。昨日までに既に50機以上のギガースが沈んでいる。80機目のギガースにサンダーボルトを撃った時点でギガースは後4機しかいなくなった。
機人の攻撃はすでに弱くなっている。後は圧しつぶすだけだ。
3日間で戦いは完了した。ジブラルタルは陥落したのだ。
俺のレベルは4つしかあがらなかった。276だ。ギガースを倒すのではなく麻痺させるのにほとんど費やしたからだ。