第18話 サンダーボルト
俺たちはネロディに戻っていた。
新しい情報を仕入れようとボルベルクを捕まえて酒場に行った。
「あれからデリックとバロンをエストニアから連れて帰るのが大変だったんだぜ」
金をせびってきた。セコイ。仕方なく報酬を追加することにして渡した。
「ありがとよ、北欧はどうしたんだ?まだ戦争してるだろう」
「レックスが引いたから私たちも戻ってきたのよ、今はモスコーヴィアが単独で戦っているわ。それよりいい儲け話はないの?」
どうやら、中欧連邦ではヘルハウンド、西アジアではケルベロスの生産が行われているようだ。
北アフリカを破られるのはサウスランドやモスコーヴィアにとっても都合が悪い。同じ欧州連合ということもあった。
「今はスカンジナビアに行くか、北アフリカに行くかどちらかだろうって話だ」
「それは戦争じゃない。私たちは戦場から戻ってきたのよ、他にはないの?」
「討伐クエストか護衛クエストを普通にやるかだな」
俺たち2人では護衛クエストは受けづらいのだ。戦力は高いが2人だが、人数がいないと護衛相手が嫌がる。
ちなみに、俺のケルベロスもアヴェルアーカのケルベロスもバレットの並行発動が可能だ。
さらに、アヴェルアーカの魔導機関は最新型になっている。俺のも交換して欲しかった…。
アヴェルアーカのケルベロスはキャノン砲が4門のままだ。魔導機関が新しくなったので動きやすくなったと喜んでいる。
金はある、あれだけ戦ったのだ。しばらくは休暇を取ることになった。実はあることに気づいた俺は新しい魔法を作りたかったのもある。
1ヶ月がたった。どうも、サウスランドとレックス、モスコーヴィアの3国で新しい後衛武装獣の開発をしているらしい。
ヘヴィタランチュラで痛い目にあったので、後衛の武装獣の代わりが必要になったのだ。
後衛の武装獣には乗りたくないもんだ。守って貰えなければやられるだけだ。逃げ足も遅い。
試作機がすでにスカンジナビアで戦闘をしているそうだ。
名前はヴァラーハ、猪という意味らしい。8門のヘヴィスナイパーキャノン砲と2門のキャノン砲を搭載しているケルベロスの2周りはでかい大型武装獣だ。シールドの並行展開も可能で足もそれなりに速いらしい。ケルベロスの大型版のようだ。
そして、それを目の前で見る目になった…。
レックス軍のフュリアスがギルドにやってきて俺を指名してきたのだ。もちろんアヴェルアーカにも付いてきてもらった。
「久しぶりね、セージ」
「こちらこそ、お久しぶりです。隊長が俺に何の用なんですか?」
「北アフリカでギガースが出現したわ、あちらには既にヘルハウンドやケルベロスがいるけど、レックスに援軍依頼が来たの。実際にはあなたをご指名なのよ。スカンジナビアでの活躍を聞いたらしいの」
「あそこは中欧連邦と西アジア連合の管轄でしょう。レックスは関係ないじゃないですか」
「だから、あなたを指名したからレックスは小規模でしか部隊を出さないことにしたのよ、それで受けることになったの。大規模な援軍なら出さないわ」
俺に北アフリカに行けっていうのか…。アヴェルアーカ次第だけど、ギガースが嫌いみたいだしなぁ。
「アヴェルアーカはどうする?俺はどっちでもかまわないぞ」
「私は行ってもいいわよ、でも弾切れで死ぬのは嫌よ。兵站はちゃんと用意してくれるのが条件ね」
「地中海を欧州連合が抑えているから北アフリカの兵站は維持できてるわ」
問題はデストロイを何発撃てるかだ、俺のレベルは220までいった。上級魔法を24発は撃てるだろう。最上級魔法なら12発といったところか。
「分かった、俺は行く。部隊はどうなってるんだ?」
「あなたたちに合わせてデザートケルベロスを40機用意したわ。それと後衛に砂漠仕様ヴァラーハが20機よ。あなたたちのケルベロスもデザートケルベロスに改修するわ」
「デザートケルベロスってなんですか?」
「砂漠では細かい砂が常に舞っているわ。それが精密機械である武装獣を痛めるのよ、その対策よ」
なにやら、砂漠では勝手が違うようだ。まあ、任せるしかない。
そして、砂漠用迷彩が施された俺のデザートケルベロスが返ってきた。
俺たちはイタリアのシチリア経由で海を渡ってアルジェリアに行くことになった。ギガースが出たのはやはりと言うか、地中海の入り口であるモロッコだそうだ。だが、ジブラルタルに機人がいるために遠回りせさざるを得ない。
砂漠対策とやらで足回りが太くなっていた。機体が砂漠に沈まないように改良されているらしい。それと水の補給機がついている。砂漠と言えば水だ。これも大事なのだろう。もちろん、暖房装置は取っ払った。代わりに冷房装置が付いた。
俺は暖房魔法ウォームの応用で冷却魔法クーラーを開発したが失敗した。凍傷になるのだ。代わりにアイスボールを開発した。氷の弾を撃ち出す魔法だ。この氷で少しは涼めるが一応攻撃魔法なのでコクピットでは撃てない…。砂漠は不便だ。
アヴェルアーカも砂漠の気候には苛立ってるらしい。
「なんでこんなに暑いのよ」
冷房装置があっても外に出れば暑いのだ。補給するのに外に出て一応は手伝うのだ。ここは戦場だ。怠けることはできない。寒い分にはジャケットを着ればいいのだが、暑くてはどうにもならない。俺は相変わらず革製防具だ。武装獣での戦闘では痛まないのだが革製用オイルは塗っている。双剣も持っている。これで暇な時は運動をするので必要なのだ。
「モロッコまでもう少しだ、がんばれアヴェルアーカ」
「それまでに戦闘を繰り返してるのよ、あと何回戦えば着くのよ」
そう、ここは戦場だ。機人が頻繁に出てくる。ドラゴン型機人もだ。戦わなければ進めない。軍隊もこの広いエリアではなかなか機人を掃討しきれないのだ。基本は拠点防御で周辺の駆除をしているのが北アフリカの現状だ。
ただ、救いなのが後衛のヴァラーハだ。後衛というより前衛の武装獣でもいける機体に仕上がっている。サブウェポンとしてキャノン砲も2門付いてる。庇う必要がない。猪の名前はダテじゃない。その圧倒的な火力で敵を粉砕していく頼もしい武装獣だ。だが、兵站が必要なので進みは遅い。弾薬と食料だ。ここは北アフリカ全体が戦場なので近くの街で補給なんてできないのだ。
そうして、モロッコの国境を超えた。ここはエジプトと並ぶ重要拠点なので兵站はもう要らない。いるとすれば武装獣の補修部品くらいだ。ヴァラーハはまだここには配備されていないのでいざという時には部品が必要だ。
モロッコの戦線は北と西と南だ。特に北からの圧力が高い。ジブラルタルと同じで海から機人は来ているに違いない。
戦場は山地だ。アトラス山脈が聳えている。そこが戦線なのだ。
そうして、俺たちはアトラスの戦場についた。
既に、軍隊は戦闘を行なっていた。相手はドラゴンとギガースだ。
新しい魔法を実験する時がきた。1ヶ月の休暇で俺は考えていた。物理攻撃しか効かない機人に有効な魔法がある。雷電だ。
テスラは空から雷を補給する。では、直接雷をぶつける魔法を作ればいいじゃないか。エナジーサークルへのダメージは撃ってみないと分からないが、麻痺効果はあるはずだ。雷系上級単一攻撃魔法サンダーボルト(雷電)だ。魔法で雷を生成しなくていいので上級の割にはMPを比較的使わないのがメリットだ。デメリットは雲がないところでは使えないが、幸いここは山地だ。雲はある。魔法で雲をかき集め、雷を発生させ、それを誘導し、敵に撃ち落とす魔法なのだ。
まずは、スコーピオンとドラゴンを排除してからだ。俺はヘヴィスナイパーキャノン砲を撃ちこんでドラゴンを沈めていく。スコーピオンは部隊に任せて近づくものだけ破壊する。いよいよギガースが見えた。サンダーボルトを撃つ。少し時間がかかるのがデメリットだがしょうがない。撃ち込まれたギガースはやはり麻痺を食らっている。その隙にヘヴィスナイパーキャノン砲を撃ちまくる。沈んだ!このデザートケルベロスはギガースより固いギガスコーピオンと戦った武装獣なのだ。これならギガースを沈められる!次のギガースへサンダーボルトを撃つ。麻痺する。沈める。
ホークアイが邪魔だ。シールドを展開する。キャノン砲とバレットで撃ち落とす。次のギガースもサンダーボルトだ。
ギガースに対してサンダーボルトは有効だった。どんどんこい!
ギガースが減らされた機人たちは圧されている。ここで機人を殲滅してやる。ギガースはジブラルタルほどはいない。
さすがにマザーシップがやってきた。デストロイで撃ち落とす。中欧連邦と西アジア連合の軍隊も勢い付いた。
俺たちは1週間戦い続けた。機人は勢いを完全に失っていたが抵抗している。ギガースは出てこなくなった。
後は時間の問題だろう。補給を受けては戦いを行った。ドラゴンをヘヴィスナイパーキャノン砲で撃つ。
あの邪魔なホークアイが出て来なくなったので、戦いは一気に楽になった。スコーピオンとドラゴンを殲滅すれば勝てる。
3週間後、俺たちは機人を全て撃破した。
俺たちはもう帰れるのだ。
「フュリアス隊長、ここでの仕事は終わったみたいだな」
「ちょっと待って、まだ仕事があるみたいなの、ここの司令官があなたを呼んでるわ」
またかよ、お偉いさんと会うのは嫌いなんだがなぁ。だが、フュリアスの面子もあるし、断れない。
本部とやらに連れていかれた。ドナドナな気分だ。
「私がここの司令官ラルッサだ。中欧連邦共和国軍に所属している」
「冒険者のセージです…」
なにか仕事が増える予感しかしない…。
「君がセージか、噂通りの活躍だな、呼んでみて正解だった」
「俺たちはもう帰れるんじゃないですか?仕事は終わりましたよ」
「それがまだ頼みたいことがあるんだ、機人のせいで紅海が封鎖されている。そこの機人を殲滅して欲しいんだよ」
「言っておきますが、あの麻痺魔法は砂漠地帯だとたぶん撃てませんよ」
雨が降らないから砂漠なんだろ、無理だって。
「君はマザーシップを撃ち落としてくれたらいい、行ってくれるかね」
「俺だけでは判断できません、部隊長に相談しないといけないですね」
フュリアス断ってくれ。程なくしてフュリアスが来た。
「話は聞きました。本国の承諾が取れないとお受けすることはできません、エジプトまでは行きますがそこからは本国の判断に従います」
エジプトには行くのかよ。アルジェリアからの航路にしてくれよ。砂漠で陸路は面倒なんだよ。
「分かった、とりあえずエジプトに向かってくれ」
俺たちはエジプトに向かうことになった…。
「なあ、フュリアス隊長、まさか陸路でエジプトまで行くってことはないよな?」
「当たり前でしょ、北アフリカの端から端までどのくらいかかると思ってるのよ、アルジェリアから船でエジプトまで行くわ」
まあ、それならアヴェルアーカも文句は言わないだろう。
戻ったらアヴェルアーカは文句を言った。俺は知らない。フュリアス隊長なんとかしてくれ。
「嫌よ、仕事は終わったんでしょ?私たちは帰るわよ」
「そこをなんとかして欲しんだよ、報酬ははずむわよ」
「報酬次第ね、いくらになるのよ」
金で済むのかよ、後は勝手に交渉してくれ。
俺たちはアルジェリアへとまた戦いを繰り返した。広すぎる戦線なのは分かるがもう少し機人をなんとかしれくれよな。
アルジェリアからエジプトまでの航路に乗ってからはしばらく休めることにはなった。
ギガースにサンダーボルトが効くことに気がついた主人公。
少しチートフラグが付きました…。