第16話 反撃
2ヶ月たった。スカンジナビアでの反撃の開始だ。
だが、レックス軍が少ないのだ…。前回の半分しかいない。
ヘルハウンドを量産したがいいが肝心の乗るパイロットが前回の戦いで大量に戦死したのだ。
主力はモスコーヴィア軍になることになった。こちらは前回よりも増えている。しかも全部がケルベロスだ。
俺たちはそのままフュリアスの隊に組み込まれた。
一次目標はノールボッテンの奪取だ。
戦いの火蓋が切られた。
スウェーデン北部からの侵入だ。
今回は、あのお荷物ヘヴィタランチュラがいない。自分の身は自分で守ればいい。
だが、俺たちの部隊は主力ではない。弱くなった戦線を救う遊撃隊なのだ。
主力が進んでいく。俺たちが2ヶ月間、ギガスコーピオンを倒していたので敵の数は減っているはずだ。
敵はこちらの動きを掴んでいないようだ。
散発的な戦いが続いた。機人は戦力を広範囲に分散していたようだ。一気に支配地を広げすぎたのだろう。
ノールボッテンの奪取は速やかに終了した。
俺たちが戦った際に分かったのは、ノルウェーの最北部、フィンマルクには機人はいないということだ。
ノルウェー北部トロムスの奪還が次の目標になった。
部隊を分けて、トロムスに侵入していった。そこで俺たちの出番が来た。トロムスでようやく俺たちが戦うのだ。
機人を見つけては撃破していくが、どうやら機人達はスウェーデン中部、すなわち俺たちの本隊の方に移動しようとしているようだ。そのため、トロムスの奪還もほどなく終わった。
ギガスコーピオンが集結してしまうとやっかいだ。
本隊はそのままスウェーデン中部へと向かうことになった。俺たちの部隊はノルウェー中部の奪還だ。
抵抗を見せ始めているが、敵は動きがにぶい。進軍速度を維持しながら突破をしていく。
ノルウェー中部のヌール・トロンデラーグのスタインシャーで俺たちの進撃は止まった。
とうとう、敵の抵抗が強まったのだ。機人たちは2つの戦線に分かれているはずだが、俺たちの戦力も半分しかいない。
一進一退の戦いが始まった。本隊の方はスウェーデン北部の南方メーデルパッドで進軍が止まったようだ。
つまり、機人たちの集結が終わったのだ。スウェーデンの中部をかけた戦いが始まった。
少しづつ戦力が増えてきている。北欧の冒険者たちのケルベロスだ。恐らく、ジブラルタルのときのようにバーゲンセールでもやってるに違いない。もちろん、条件はこの戦争への参加だろう。
俺たちはギガスコーピオンを沈めながら機人たちを押し込んでいく。こちらの機人の圧力が弱いということは本隊の方に機人が集まっているということだ。本隊が心配だが、そんな余裕もない。
戦いから2ヶ月が経って、機人たちをノルウェー南部の手前ソール・トロンデラーグまで押し込んだ。
今は俺たちの部隊は休息中だ。
「フュリアス隊長、本隊の方はどうなってるんだ?」
「ヘルシングランドで止まってるわ、向こうのほうが戦線が広いからやっかいなことになってるようね。軍の援軍もほとんど本隊のように向かってるのよ」
「こっちも冒険者たちが集まってるぞ、戦力は増えている」
「それが問題なのよ、こっちの方が優勢なので冒険者たちはこちらにきてるのよ、冒険者も厳しい戦線には行きたくないわ」
「まだ援軍を送っているとうことは、モスコーヴィア軍には投入できる戦力はあるのか?」
「パイロットを至急育成しているようね、新しく増えているのは新兵たちよ」
さすが、元ロシア。数で圧倒する気なのか。
「俺たちも本隊に行くことになりそうな気がするが」
「そうね、こちらが落ち着いたら本隊に行くことになるでしょうね。そういえば、マザーシップを沈めたのはなんの魔法なの?」
そう、俺は気づいたのだ。マザーシップは銀色のジャマーをはっていない。おそらく、チャフの特性で空では常時機体を覆うことはできないと読んだのだ。俺は8機のマザーシップをデストロイの3発で沈めた。
だてに4ヶ月もギガスコーピオンを倒し続けたわけではない。レベルもさらにレベルもあがってるのだ。200を突破して214だ。3発撃ってもまだ余裕がある。だが、レベルアップの速度が落ちている。
「火系最上級攻撃魔法デストロイですよ、おかげであれからこちらにはマザーシップはこなくなりました」
上空の敵にはテスラは使えない。テスラは空から雷を補給して地上の敵を一掃するために作ったのだ。
「恐ろしそうな魔法ね、軍隊相手に撃ったら殲滅できるわ」
「もともと、軍隊を殲滅するための魔法なんですよ」
「あなたを敵に回さない方が懸命ね」
「軍隊は機人と戦うためにいますからね、撃ちませんよ」
そう、俺は一国とも戦えるのだが、この世界の国はどこも機人と戦うので一杯なのだ。俺が割り込む理由もないし、無理に支配したとしても民主主義が浸透した世界だ。反乱が起こるだろう。面倒なことは嫌いだ。
結局、1週間後俺たちの部隊は本隊と合流することになった。
スウェーデン北部の南に位置するヘルシングランドについた。空にはやつがいる、マザーシップだ。12機もいる。
俺はデストロイを4発撃って沈めた。
あちこちから歓声があがった。それ程困っていたのだろう。
むしろ、よくあの数がいて耐えていたな、そっちの方がすごい。
マザーシップがいなくなり、均衡が破れた。そうモスコーヴィア軍が盛り返したのだ。
ヘルシングランドのギガスコーピオンが沈んでいく。そう、機人は手詰まりだ。
それほどケルベロスは優秀だった。火力で言えば対ギガース用武装獣ヘルハウンドの2倍なのだ。
俺たちのケルベロスも主力の支援に回る。武装獣が強いといっても中身は新兵が乗っているものが多いのだ。
俺たちはスウェーデン北部の最南端ヘリダーレンの戦線で戦った。こちらは戦線が広いのだ。それをモスコーヴィア軍は武装獣の数で圧倒していく。
あと2つスウェーデン中部ダーラナとイェストリークランドを奪取すれば元の戦線まで戻せる。後はどこまで進めるかはレックスとモスコーヴィア軍次第だ。
俺は戦えればそれでいい。どこまでも行くぞ。
2つの国の軍隊はとうとう、ダーラナとイェストリークランドまで侵入した。
俺たちの部隊はダーラナになる。弱っていた敵の圧力がまた高くなってきた。窮鼠猫を噛むというやつだろう。
戦争を初めて3ヶ月になった。
ダーラナとイェストリークランドから先に進めない。一進一退に戻ったのだ。
フュリアスによると、モスコーヴィア軍は完全に南部まで推し進めたいようだ。レックス軍は元の戦線まで押し戻したのでここで終わりにしたいようだ。意見が割れているらしい。兵も疲れているのだ。
それにここからはさらに戦線が横に広がる。ここからは2つから3つの地域で戦うことになるのだ。
下手をすれば戦線が崩壊する恐れもある。レックス軍は安全策を取りここで終わりにしたいということだろう。
4ヶ月目でダーラナとイェストリークランドを完全に制圧したところで戦争は終わった。だが、レックス軍が引き上げただけで戦線はこのまま維持しなくてはいけない。モスコーヴィア軍は残った。俺たちの仕事も終わった。
ネロディに帰りたいと言うとフュリアスが言ってきた。
「モスコーヴィア軍に入らないか?」
「軍隊に入るのは性に合わないんですよ、冒険者の方が気楽でいいですね」
「そこをなんとか入って欲しいんだよ、軍の上の方からも言われてるんだ」
俺の攻撃魔法デストロイが気に入ったようだ。
「デストロイを教えるくらいならいいですよ」
これが俺の妥協点だ。後は勝手にやってくれ。まあ、使えるやつはいないと思うんだがな。
「分かった、それで軍の上とかけ合ってみる」
結局、俺はモスコーヴィア軍の魔導研究所というところに行くことになった。アヴェルアーカも付いてきた。
地名がわかりにくくてすみません…。
補足に北部、中部、南部と説明書きをいろいろ増やしたけどそれでも足りないみたいです…。
今回はマザーシップにデストロイが効くことに気づいた主人公。
もう少しで暴走しそうです…。