第3話 スペルオーガ
3ヶ月、1人で真夜中の戦闘をしているうちに10階層ある中階層はほぼ制覇した。
ギルドランクもCにあがった。探知の範囲も100mから150mくらいまで広がった。
手にしている武器も短剣から双剣に変えている。
ダーククローエッジ、真っ黒な双剣で俺好みだ。
切れ味もいいし、まあ、魔剣なんてまだ当分買えんしな。
魔法も少し増えた。ファイヤーフレイム、ファイヤーボルト。
それぞれ、炎で広範囲に焼き尽くす魔術と炎と雷のファイヤーボール版だ。
コボルトシャーマンに中階層の10階層で出会ったので、手持ちの魔法が3つに増えた。
つーか、なんで火ばっかりなんだか。
ということで下階層に潜ってみた。もちろん、真夜中のソロだ。
できれば、死にたくないので浅いところで当分我慢しておくつもりだ。
オーガを前衛にして戦っていたら、3階目でやばそうな奴がでてきた。
スペルオーガだ。向こうもオーガを前衛にして向かってきてる。
意思を奪おうにも時間がかかる。知力が足りないのか。
その間、スペルオーガはもがいていたが、意思を奪うのを諦めるとなにやら唱えてはじめた。
嫌な予感がして、前衛2人に盾になってもらった。
あとはダッシュで逃げた。後ろのほうで巨大な炎が燃えあがってる。
逃げ遅れてたらマジで死んでた…。全体強化のおかげだ。
ここらへんが自分の限界か…。
下階層3階目…。ここまでくると死ねる…。
とりあえず、このまま出口まで逃げよう。
そのとき、出口付近で爆発が起きるのを見た。
誰か戦闘してるんかい!
探知してみるとどうやら別のスペルオーガと5人PTが戦っているようだ。
近づいてみると1人倒れている。これは死んでいる。元々6人PTだったようだ。
他のPTの前衛もかなりダメージを受けているようだ。
スペルオーガの魔法に耐えるって魔法付与防具ってやつか?
全体回復を発動した。
上級PTならスペルオーガを追い込めるかも。
前衛のオーガが倒れたようだ。
全体回復しながらスペルオーガに後ろから飛び込んで首を狙う。
前からもPTの前衛が攻撃をしかける。
接近戦なら魔法を使えないだろう。、首に双剣が刺さった。そのまま掻っ切る。
さすが、切れ味がいいよ、この双剣!
首から血を吹きながら暴れるスペルオーガ。
一応、オーガだ。まとも攻撃を食らったら一発で動けなくなる。
タンカーじゃないしな、俺。
さらに首に双剣を突き刺す。さすがに倒れていくスペルオーガ。
「…、助かったよ、ありがとう。危うく全滅するところだった」
俺がダークエルフなのに驚いたようだが感謝された。
そのまま、出口まで一緒に行くことになった。
前衛の死体はこのまま置いていくことになった。まあ、冒険者ってのはそういうものなのだろう。
下階層を抜けるまでまだ2階層ある。でかい荷物は置いていくしかない。
2階層でしばらく回復してから、1階層に戻った。
実は、呪術師の全体回復は、神官のそれとは違う。
大量にMPを消費して一気に回復するのが神官の全体回復。
MPを消費しない代わりにじりじりと回復させるのが呪術師の全体回復なのだ。
それでもけっこうな速度で回復していくもんだが、さすが上級。HPがかなり大きいようだ。
回復速度も以前よりあがってるのだが、本職の神官にはさすがに負ける…。
中階層も抜けて、話ながら出口を目指す。
このPTは、前衛に剣士2人、後衛に魔術師2人、それに神官1人だ。死んだ奴は剣士だったのだろう。
バランスのいいPTだが、神官がMP切れだったそうだ。
「失礼ですが、なんであれで死ななかったの?そのプレートメールってやっぱり魔法付与防具とかだったりするのかな」
「そうだよ。2発防いだが、加護があったので生き残れた。」
あの爆炎を2発も耐えたんか…。魔法付与防具恐るべし。
「死んだ奴の加護は防御向きじゃなかったしな、しょうがない」
「加護ってなんですか?」
「下階層にいくくらいなのに加護も知らないのか?神殿で加護を受ければ戦闘が楽になるんだよ」
「ずっと、ソロだったので知らなかったです…」
つーか、それ知ってたら受けてるよ。なんだよ加護って。
「その加護って選べるんですか?」
「選べるんだけど、具体的な効果は加護を受けてからじゃないと分からない」
選べるのに、分からないって微妙だなぁ。
「その加護を受けるのってそれなりにするんですか?」
これが一番大事だ。
「下階層まで行ってればそこそこ金あるだろ、ってあそこでソロはないだろ、死ぬ気か?」
いいこと聞いた、さっそく受けよう。
「ずっとソロだったのでPT組んでないんですよ」
まあ、あそこでソロは確かに死ねるよなぁ。意識を奪えないってもう駄目じゃん。
でも上級PTには入れなさそうだしな、まだCランクだし。回復職なら入れてくれるかなぁ。
ダークエルフだから、それ以前の問題かもな…。
出口についたので別れることになった。
とりあえず、ギルドにいって加護とやらを聞いてみよう。