第19話 ダークエルフの使者
俺に総統から使者が来た。討伐依頼か?
「手紙を一通、伽盧皇国の皇都へ届けて欲しいという依頼を持って参りました」
「宛先は誰だ?」
「那桜人皇王です」
「内容はなんだ?」
「トルメキアと伽盧皇国との停戦依頼です」
「なんで俺なんだ?誰でもいいじゃないか」
「総統のご指名です」
「面倒な事は嫌いなんだがな」
「そこをなんとかお願いします」
「まあ分かった。届ければいいんだな、それ以外はなにもしないぞ」
「ありがとうございます」
なにやら土下座して総統の使者は帰っていった。
グラビティフォースでさくっと皇都に着いた。飛ばして3日だ。やはり走るのとでは全然違う。
レベル120になるともはや魔物の森で寝ていても、余裕で対処できる。
HPが高いので睡眠中に攻撃されても平気なのだ。まあ、それでも痛いんだが…。
久しぶりの皇都だ。懐かしいな。今になってみればいい思い出だ。
南の城門の衛兵にギルドガードを見せる。
なにやら怯えている。無言でスルーだ。
とりあえず、用事というのを先に済ませよう。
皇宮に向かう、衛兵がいたがアルノールからの使いだと言ったら通してくれた。
なにも見せずともダークエルフだから分かっているようだ。
宰相とやらに会った。真田政宗という名前だ。
「何用で参った?」
「アルノールの総統からここの皇王に手紙を届けに来た」
そういって手紙を渡した。これで仕事は完了した。楽だぜ。
「それじゃ、帰るわ」
帰りに久しぶりに酒場にでも行こうか。
伽盧皇国の皇宮では、緊急会議が行われていた。
「アルノールからの手紙が届いた」
「どのような内容ですか?」
「我が国とトルメキアとの停戦依頼だ」
「なにをふざけたことを!アルノールには関係がないではないか!」
「内容が問題なのだ。依頼を拒否すればダークエルフを差し向けるということだ。すでにあやつはこの皇都に来ている、これは脅迫だ」
「龍殺しのダークエルフか!」
「あやつは、ウルズとトルメキアの軍を一人で潰した。今度は我が国を潰すということだ」
「龍殺しのダークエルフを使うとは卑怯だ!」
「これをどうするか、皆の意見を聞きたい」
「暗殺をしてはどうでしょうか?」
「失敗すればこの国は滅びるぞ、それにあやつは覇竜よりも強い。普通に殺せるとも思えぬ」
「では、停戦を受け入れるということですか!?」
「停戦などしたくないから皆を集めたのだ、トルメキアを潰せるのは今だけだ」
「皇都にいるなら呼んでみればいいのではないでしょうか?」
「あやつは我を嫌っている。呼んでも来ないだろう」
「宰相が会いにいくべきでしょう」
「なんで私が会いにいかなくてはいけないのだ!機嫌を損ねれば殺されるかもしれないのだぞ!」
「では他に誰が行くというのでしょうか?」
「宰相にこの件は預けた、なんとか懐柔しろ!」
皇王は宰相に命令した。
「…、分かりました」
宰相はギルドに入って、窓口の女の子に声をかけた。
「ギルドマスターはいるか?」
「これは政宗様ではないですか、こんなところに何用でしょう?」
「龍殺しのダークエルフを探しに来た、どこにいる?」
「迷宮に潜っていったみたいですよ」
「いつ出てくるのだ?」
「分かりませんよ、最下層の10階までいくつもりなら翌朝になるんじゃないですか?」
「そこまで一緒について来い」
「無理ですよ、SSランクじゃないと死にますよ?」
「そのSSランクとやらを連れてこい」
「SSランクは龍殺しのダークエルフだけです」
「私に迷宮の出口で朝まで待てというのか?」
「誰か見張りに立たせましょうか?」
「そうしてくれ、私はここで寝ているから見つけたら起こせ」
俺は最下層にいる。出てくる魔物がノワールと同じでつまらん。
いつもと違う歯ごたえのある奴はいないのか?
うろうろと探しているがいない…。
轟竜と出会ったが、探しているのはお前じゃない。グラビトンで殺した。
結局、覇竜と出会ってしまった。お前じゃない。グラビトンで殺した。
やはり、トルメキアに行かないと会えないのか?
でもあそこは行きにくいしな。軍隊丸ごと殺したし。
世知辛い世の中だと思い悩む。
やることもなくなったので地上にあがったら誰かいた。
「宰相がお待ちしております」
無視することにした。総統の使者にも手紙を渡す以外、なにもしないと言ってある。
「知らんがな」
グラビティフォースで城壁を超えて逃げた。ノワールへ帰ろう。
ギルドでは、徹夜でギルドマスターが報告を待っていた。
「龍殺しのダークエルフに逃げられました」
報告が来たのは、真夜中だった。以外に早く迷宮から出てきたようだ。
「政宗様起きて下さい」
「ダークエルフがでてきたか?」
「逃げられました、既にこの街を出たようです」
「城門の門番はなにをしていた!」
「この時間ですと、門は閉まってますよ」
「では、どうやって出たのだ?」
「城壁を飛び越えてしまったようです」
「…、分かった、皇宮に戻る…」
皇宮では、真夜中に会議は招集された。
「宰相、お前はなぜ見逃したのだ!」
寝ていたとは言えない…。
「ギルドマスターに言って迷宮の出口を見張らせていました」
「それで逃げられたのだろう?なぜお前がそこにいなかったのだ!」
「申し訳ありません!」
駄目だ、もう謝るしかない。
「過ぎたことはもう良い、問題はどうするかだ」
「もう停戦するしかないでしょう」
「軍隊はどうしておる?」
「国境で待機してます」
「呼び戻せ、停戦じゃ。トルメキアとアルノールにもそう使者を出せ!」