第12話 ノワールの統治者
目的の本は見つかったが、埃をかぶってる。
この世界で魔法語を理解できる人はほとんどいないようだ。
面倒なので、王様みたいなところに乗り込もうと思うが、あまり荒立てたくない。
強力な全体拘束魔法を作ろう。
イメージは掴んでいる後はその方法だ。
グラビティとグラビトンがあるのでその重力系全体魔法グラビティワールド(重力全体拘束)だ。
この国の中枢は、ノワールから南下したラングという街らしい。
グラビティの応用技を使う。重力制御で推進するイメージだ。
グラビティフォース(重力制御魔法)。
グラビティフォースで一気に街道を南下する。使用するMPもそこそこなので連続使用する。
3日かかってラングの街に着いた。この国の中枢だけあってでかい街だ。
この国は共和国ということで貴族院と平院の2つから代表を選出される。任期は連続できる。
事実上は、10年連続して治めているジオクライオンという貴族が王様みたいなものらしい。
その場所に乗り込もう。
総統府というところにいるのは、分かっている。
城門からは入らず、グラビティフォースで城壁をくぐった。
総統府の衛兵をパラライズする。痺れているが見た目は立ってるからすぐにはバレないだろう。
どんどん、パラライズする。
中をくぐって行く。さすがに騒ぎ出したようだ。
まとまってきたので、グラビティワールドを発動する。
全員硬直した。
総統の部屋は目の前だ。
誰にも邪魔させない。
部屋のドアをブラストで吹き飛ばす。
目を白黒させているお偉い人がいた。これがジオクライオンか?
「お前がジオクライオンか?」
「龍殺しのダークエルフ!!なんでお前がここにいる!?」
「監視を俺に付けたな?俺は気に入らないものがあったら龍でも軍隊でも国でも滅ぼす。監視なんて面倒なものをつけてお前は俺をどうしたい?」
「!?」
「俺にノワールの街をよこせ、統治してやる。龍の首に鈴を付けたいんだろう?ノワールが鈴だ!だが、依頼は受けても命令は受け付けん。依頼を受けるかどうかは俺が決める!これが俺の妥協点だ、受けるかどうか今決めろ!」
言いたいことは全て言った。
「私の一存では、決められない…」
「だったら1日だけ待ってやる。俺の気に入らない答えだったらどうなるか分かってるだろうな?」
とりあえず、1日、外でブラブラ見物でもしてこよう。
街がどうも慌ただしい。まあ、そうなるわな。
珍しい屋台料理でも齧りながら、武器屋と防具屋を覗いてみる。
その頃、総統院では、貴族たちを集めて議会を緊急招集していた。
「だから、ダークエルフにはなにもするなと言ったんだ」
「だが、監視をつけることには同意したじゃないか?」
「問題は、ノワールの街をダークエルフに渡すかどうかだ」
「ノワールは事実上この国の中心だ、渡せるわけがない」
「この国は迷宮があるからできたんだぞ、その迷宮を渡せるものか」
貴族は全員反対した。
「渡さなければこの国は破滅する、そうダークエルフは言ったんだ。ダークエルフが選択させたのは渡すか滅ぶかだ。お前たちはダークエルフと戦う気があるのか?」
ジオクライオンはただそう告げた。
「…」
「ウルズ連邦からの間者とギルドマスターの報告がこれだ。火系最上級攻撃魔法デストロイによる軍隊の壊滅、魔術師たちによる攻撃魔法はすべて無効、剣士と魔術師は皆殺し、将軍も含めて皆殺しだ!我々にはもう選択する余地はまったくないと私は思う」
ジオクライオンは結論づけた。
「渡すことにはもう反対しない」
全員がそう納得した。
「ノワールはダークエルフによる街になる。国の命令も受け付けない完全な自治だ、これでいいな」