第10話 再会
夕方起きた。飯を食っていると宿の女将のシルティさんが言ってきた。
「あんた一人で軍隊を殲滅したんだって?化け物のような強さだったって噂になってるわよ」
化け物ってもはや人ではなくなってるなぁ。まあ、どうでもいい。新しい魔法作りの方が楽しい。
「また戦争は起きないんですか?」
「ウルズ連邦は降伏して、賠償金をだすことになるそうだよ」
どうやら、当分戦争は起きないらしい。楽しかったのにつまらないな。
4階層1階にあいかわらず来た。
ここ最近、氷の最上級魔法を作っているがまったくうまくいかない。
ファンデルワールスゼロだ、分子結合を解体する氷の魔法は、難しいようだ。
その代わりに、ブリザードストームができた。
氷結状態にする全体魔法だ。威力はコキュートスの方が上だろう。微妙だ。
サンダーストーム、ブリザードストームの応用でブラストストームもできた。
やはり、最上級魔法は雷系の方が簡単なのだろうか。
手持ちはパラライズ、サンダーウェブ、サンダーストームと3つからなんとか編み出せないか?
でも、グラビティから攻撃魔法を作るのも捨てがたい。
重力系攻撃魔法グラビトン。これを作ってみることにする。
2ヶ月でできた。グラビティがかなり参考になった。重力制御の方法がこれで分かっていたからだ。
さっそく、石鎧竜を相手に撃ってみた。胴体に丸い穴が空いた。ただ、迷宮の壁にもかなり深い穴が空いてしまった。
撃ちまくるのは落盤的な意味で危険かもしれない。
次に、雷系最上級魔法テスラだが、なかなかうまくいかない。サンダーストームが完成されすぎてるからだ。応用するにも難しい。時間をかけて煮詰めていく必要がある…。
地上に戻ると、やつらがいた。
狼と虎とエルフだ。竜人はきていなかった。
俺が酒場に行かないから迷宮の出口に交代しながら張り付いていたようだ。
「見つけたわよ、真夜中のダークエルフさん」
酒場に連れていかれた。いきなり、酒場の冒険者達がいきなりどよめいた。逃げ出す奴までいる。
「懐かしい呼び名だな」
「ここでは龍殺しのダークエルフって呼ばれているようね」
「その呼び名になってるみたいだな」
「本題に入るけど、皇都に戻ってくれない?」
「断る、ここの迷宮が気に入ってるんだ」
「迷宮なんてどこも一緒でしょ?」
「皇都の迷宮は狭苦しい」
「皇都の王様からあなたを呼び戻すよう直々に頼まれたのよ」
「その王様とやらが嫌いでここにきたんだよ」
「皇都の王宮ではあなたが復讐にくるんじゃないかとも思われてるのよ、戻れば報酬がたんまりでるわよ」
「金には困ってない、復讐なんて面倒くさいことをする気もない。それとも伽盧皇国はこの国と戦争でも起こす気なのか?」
「あなたがいるのに戦争する気になるはずないじゃない!、一人で軍隊をやっつけたんでしょ?」
「あれは楽しかったな。また戦争が起こったら参加する気だ、戦争でもないと本気を出せないからな」
「覇竜がいるじゃない」
「あれは楽しめないんだよ、殺されるかもしれないからな」
「俺からも頼むから戻ってくれないか?」
珍しく虎が話しだした。
「皇国の軍隊に兄弟がいるんだよ」
知らんがな。
「とにかく、俺は戻る気はない。戻ってほしかったらここと同じ迷宮を用意しろ」
「無茶苦茶言うわね、またパーティを組む気はないの?」
「俺が篭ってるのはSランク専用の4階層だぞ」
「危険なことばかりしてると死ぬわよ」
「俺にとっては4階層は安らげる場所なんだよ」
「どんだけ強いのよ」
「巷では俺は化け物とも言われているそうだな」
「わかったわよ、諦めたわ。本当に復讐には来る気はないのね?」
「まったくないね」
「それじゃ、私たちはこれで皇都に戻るわ」
「ああ、達者でな」
3人が去っていくとまた声をかけられた。
「面白い話を聞かせてもらいました」
誰だ、コイツは?
「私はウルズ連邦からきたコーディと言います」
「話を聞いていたのなら分かるだろ、断る」
「うちの迷宮はここより広いですよ」
「話には聞いているがアリの巣みたいなんだろ?こっちのほうが好みだ、そっちの迷宮は面倒くさいんだよ」
「お金ではなく、領土をお渡しすることもできます。貴族になれますよ」
「強くなることが目的なんだよ、戦う以外は興味ない」
「十分お強いではないですか?」
「まだこれじゃ、全然足りないんだよ」
「あなたは一国の軍隊よりも強いんですよ?」
「俺の基準は、魔物であって人じゃない」
「既に、覇竜よりも強いじゃないですか」
「覇竜よりも強い魔物を用意できるのか?」
いたら、グラビトンを撃ちまくってやる。
「残念ながらうちの迷宮も最強なのは覇竜ですね」
「だったら用はないな、帰ってくれ」
この後も、話が平行線になったが、結局、帰っていった。
遅くなってしまった。宿に帰って寝る。