第9話 死の実感
死者はギルドの職員によって運ばれた。
生き残った冒険者には、報奨金が出された。1人4000ゾル。俺は2つの職業分で8000ゾルを受け取った。
明日またギルドにくるように言われた。
そして、俺はAランクになった。
ギルドを出てると、もう夕日が沈む時間になっていた。俺は自然と酒場に向かった。
これはもう習慣みたいなものだろう。
狼たちがいた。覇竜のことを聞きつけたのだろう。
竜人はいなかった。狼、虎、エルフの3人だ。
「今日はすごい事件があったらしいじゃないの」
「あなたも参加したんでしょ?ダークエルフが活躍したって聞いたわよ」
「俺は後ろで魔法を撃ってただけだよ」
「上級魔法のコキュートスを撃ったそうじゃない」
「俺が上級魔法を撃てるの知っていて、それで呼ばれたので撃っただけだよ」
狼を見たら、頭をかいていやがる。
「悪いな、つい口をすべらしちゃったんだよ、悪気はないんだぜ」
「魔術も回復もすごいダークエルフがいるって噂になってるわよ」
あの能力がばれるのはまずい。有名になったら他の国にいくしかないかな。
「正直、あまり噂されるのは困るんですけどね」
「なんでよ、いいじゃない。有名になったら仕事も金も増えるんじゃない?」
金は欲しいが、公で仕事するとなるとあの能力をみせたくない。
だが、あのチート能力が使えなければ、俺の戦力はガタ落ちだ。
「迷宮で戦うのが好きなので、やることは変わらないですよ」
そういえば、明日ギルドに呼ばれているのってなんでなんだろう。
凱旋か葬儀でもするんかな。
「今回は、死んだ人もいるしあまり喜ぶ気にもなりませんけどね」
「5人も死んだそうだな、Aランクになったら呼び出されるんじゃ前衛は損だな」
「それなら、今回の件で俺もAランクになりました、明日もギルドから呼び出しを受けてますよ」
「それじゃ、明日はPTはお休みね。それと、今日はお祝いをしなくちゃいけないわね」
「おう、今日は俺の奢りだ!たくさん飲んで食え!」
狼はあいかわず陽気だが、俺はそんな気分じゃないんだけどな。探知で人が死ぬ瞬間を感じたんだ。
「今日は疲れました、早めに寝ますよ」
俺はそのまま、宿に帰って寝た。