プロローグ
自分の名は真田誠司。36才。
廃人生産工場と呼ばれる携帯系IT企業に務めていたが、自分はこの年で廃人になりかかった。
廃人というと具体的には痛む、頭痛やら上半身がいろいろ痛む。
ストレス過剰による神経系の病気だった。
そのため、会社を長期休暇していた。
趣味は元空手、30才までやっていた。それからはウィンドサーフィン、クライミングが好きになった。
典型的なアウトドア派だ。
ただ、廃人生活でRTSをやるようになった。スポーツができなくなったからだ。
RTSというとリアルタイムストラテジーゲームだ。
古代文明から始まり農民により資源を採取して中世、近代文明へとレベルアップし、文明同士をぶつけ合う対戦ゲームだ。
自分は呪術師のいる文明が好きだった。
呪術師の能力は、農民の資源採取速度アップ、農民・兵の生産速度アップ、兵のHP回復、そして敵を味方に変えてしまう能力だ。
呪術師により敵より早く資源を採取し、敵より早く文明をレベルアップし、敵より多く兵を生産し、敵より有利に戦うのだ。
呪術師がいる方は、マヤ、アステカ、エジプトなどの文明。
呪術師がいない方は、ヨーロッパなどの文明だ。
。
RTSの説明は以上になる。
人生に挫折し、病院に向かう途中で駅のホームで線路に落ちる女性を見た。
女性を助けたはいいが、自分は助からないようだった。
いまから避難用の穴に潜り込む時間がない。目の前にはもう電車が来ていた。
電車に轢かれて死ぬ運命だとそのとき諦めた。
そのとき、なにやら眩しい光に包まれた。
そして、なにやら薄暗いところにいる。俺の目の前にはいわゆるゴブリン。足元の魔方陣が光っている…。
いわゆる魔方陣の真ん中にいるってことは、これは召喚術?
ありえないと思うが、ゴブリンシャーマンの召喚によりここに呼び出されたようだ。
ただ、俺が呪術師だということだけなぜか理解していた。そう、RTSの呪術師だ。
どうやらここは洞窟らしい。
そして、体が自然に動いた。目の前のゴブリンを蹴り倒した。
体が軽い。以前より遥かに体が軽くパワフルだ!
なにより頭痛がしない!廃人からの復活をとげた!
ゴブリンの首がへし折れる音がしたが、かまわず暴れた。
ゴブリンたちは短剣や長剣をもっていたが、俺を召喚したことに驚いたらしい。
その隙に2人まで倒した。
そのうち1人が落とした短剣を拾った。
夢中で3人目を刺そうとした。相手が動き始めたがその動きが遅く感じる。
ぐさっと首に刺した。一撃だ。
最後に残ったのはゴブリンシャーマンだけになった。そして、なにやら唱えているようだ。
火を吹いた!。驚いた、まじでファンタジーのようだ。火を避けたが、肩を掠めた。
まじで痛い(涙)。
短剣を持って襲いかかろうとしたが、呪術師の能力を使えるとなぜだか思った。
そして、杖を持っている右手を掴んでゴブリンシャーマンを地面に叩きのめした。
呪術師の能力を使った。
それは相手の意識を奪って操る力だった。ゴブリンシャーマンの意識を奪った。
落ち着いたところで探知を発動した。
探知とは、全体回復や全体強化(筋力や俊敏さを強化する)を行うために味方全員を全て探知してから発動する。
そういう機能だ。
有効範囲がかなり広いため、周囲の敵を探知することもできる。
死角でも半径100mくらいなら探知できるため、便利な能力だ。
どうやら敵が複数はいるがまだかなり距離がある。
100mくらいといったところか。死角になっているのでしばらくは大丈夫だろう。
意識を奪うこともできるが、今の所、同時に意識を奪っておけるのは3人くらいが限界のようだ。
それに意識を奪うのに時間がかかるのが痛い。それを一人づつやらないといけないので微妙な能力だ。
まずは、自分に全体回復だ。傷がみるみる治っていく。おおおおおおおお、感動した!
後は、このゴブリンシャーマンから情報をいただけるかどうかだ。
ゴブリン語は知らんし、試しに意思で念話のようなものができるか試してみよう。
とりあえず、洞窟から出ることが最優先だ。
今の位置を聞いてみると、中階層の最上部らしい。
低階層が上にある。そうすると、出口は上だろう。
階段の位置も確かめた。そこから先は知らないらしい。今一、使えないなコイツ。
長剣と短剣を持って、ゴブリンシャーマンを連れていくことにする。
そこで違和感に気づいた。
そう、以前の体とは違うのだ。背も高くなってる。なんか、やけに肌が黒い・・・。
嫌な予感しかしない。
体を眺めてみると人間っぽいのは確かだ。
服は以前のままだ。顔を触ってみた。
なんか人間っぽいけど、耳が変だ。とんがってるやん;。
猫耳とかそんなんじゃない。ふさふさしてないし、そうエルフっぽいとんがり具合。
・・・ダークエルフ?
いやいや、ここの世界の人はみんな耳がとんがっていて肌がインド人みたいなのかもしれん。
とりあえず、ここを出てから考えてみよう。
探知を発動しながらゴブリンシャーマンを連れて階段をあがっていった。
階段へ向かう方向には敵はいなかった。
ここが低階層というところらしい。
なんか景色が暗視カメラっぽい。この目は赤外線にも対応してたりするんかな。
それより、この階に敵がいる。探知によるとまたゴブリンっぽい。
3匹いる、とりあえず1匹を支配してから残り2匹を襲わせよう。
1番後ろのやつの意識を奪う。
どうやら知力の差によって意識を奪う時間が違うらしい。差が大きいほど簡単に奪えるが、逆に自分より知力が高いと無理っぽい。お馬鹿なのかさくっと奪えた。後ろから前の2匹を攻撃したところ、うまくいったようだ。
出口を目指して歩いていると大トカゲみたいなのがいた。
知力が低すぎると探知できないようだ。いきなり襲いかかってきた。
長剣で牽制しながらゴブリンシャーマンにファイヤーボールみたいな魔法を使わせた。
動きが鈍くなったのでトドメを刺した。
なんどか戦闘を繰り返してたら、だんだんと倒すコツが分かってきた。
そして、階段が見えた。また階段かよ!と内心思ったけど、探知と意識を奪うのが強いのでなんとかなった。
低階層の敵は知力が低いようだ。それに中階層と違って3,4匹の少PTだけだ。
むしろ、探知が効かないスライム、角が生えたでかいウサギ、大トカゲが邪魔だ。不意打ちで襲ってくる;;。
全体回復があるのでダメージはあまり気にならない。それと全体強化(筋力や俊敏さを強化する)がかなり使える。
ただし、全体回復と全体強化は同時には使えない。どちらか切り替えながら進む。
全体回復があっても、やっぱり怪我するのは痛い…。
全体回復や全体強化にも魔力を消費するんだろうと思ったら、ゴブリンシャーマンによると魔力を使ってるようには思えないと言っている。MP(魔力)じゃないとするとST系なのかな。使っててもそんな感じがする。
RTSでも呪術師は、無限に全体回復、全体強化を使ってたのでMP系だと無理があるんだろう。
なんどか階段を上がって、やっと出口が見えてきた。
どうやら低階層は10階層あったようだ。
いらなくなったゴブリンシャーマンの喉を掻き切った。
外でゴブリン連れてたらまず怪しまれるし、消すしかない。
外に出て見えたのは森かと思ったら、知らない街並みだった。