10年ぶりの再会と、
この話を読む前に【モザイク世界の下で】、【肉食世界の下で】、【よつき の たのしい にっき!】、【Fleisch im Käfig】を先に見ることを推奨します。
謎の肉生生物が世界を侵食して63日目、
ムラクモ「おやおや。これは珍しい乗り物で来たねェ〜。」
ニジ「飛行船か。ほぇー。」
どうもニジです。
あれからなんだかんだで2ヶ月が経った。本当に時間はあっという間に過ぎていくもんだ。
今現在船着場の上空に飛行船が丁度いい位置に止まっていて、上から少しずつ飛行船が降下するよう下がっている。それを見た俺らはサッと離れて、ちょっと時間をかけて上空に浮かんでいた飛行船が船着場へと着地した。
カイド「おお。近くで見ると案外デカいのぉー。」
アマノ「飛行船なんて懐かしいねェ。私らの時代じゃぁ金持ち連中しか乗れない空飛ぶ豪快船扱いだったよ。」
リクト「そうなんだ。」
後部のハッチ部分が開くと数人の若者達が現れ、独特の黒いボディスーツと緑のマントを羽織った姿を俺らは目にする。
シンラ「ムラクモぉ。こやつらが前に聞いた【火山地帯のコミュニティ】か?」
ムラクモ「そうだよォ〜、シンラ君。さて直接ここに来てくれた彼らへご挨拶と行こうか。」
そして俺らが居る場所へ若い彼らと対面し、そのリーダー格でもある短髪で太眉な年長さんがムラクモさんと俺らへピッシリとした敬礼モンを目にした。
綺麗に直立し、胸部に腕を添える形で。
「通信のやり取り以外ですが初めてお目にかかります。私はヤマト。火山地帯コミュニティのリーダーです。」
ヤマト「そして彼らは私達のコミュニティを支える優秀な兵士。左から兵士長のキリシマ、隊長のカワセ、カワセの助手のカゲロウ、新兵ですが最優秀として抜粋したトビとツグミです。」
ヤマト「今回は私ども火山地帯コミュニティとこのR孤島との共同同盟させて頂きたく直接参上致しました。どうかよろしくお願いします。」
うん。すっごい真面目な人だ。
これはすんなりとオッケーするんじゃないの?
その後、軽くお辞儀する若い彼らへムラクモさんはいい笑顔を浮かべて
ムラクモ「いえいえぇ〜。遥々と此処に来てくれてありがとねぇ〜。ヤマト君。何度も君と通信で何回かやり取りしてきたけど、これはいい感じに話がまとまりそうだねぇ〜。」
ムラクモ「ひとまず立ち話はあれだからアッシの部屋で話をしようか。」
ヤマト「はい。お願いします。」
ヤマトさんへと歩んだムラクモさんは軽く握手をし、ひとまず話をまとめる為若い彼らを孤島内へ迎え入れつつムラクモさんの医者部屋へ案内した。
リーダー同士の会話中で、
カワセ「ヤッホー。10年ぶりって先に言うべきだったね。」
ニジ「ん?って。つかアンタらは…」
ムラクモさんの部屋前に待機するよう待っていた俺へと歩んできた若者二人。
その容姿を見た俺は一瞬だけ目を丸くさせた。
そう、彼らは…
キリシマ「覚えているか?ニジ?俺だ。10年前に俺たちと例の店を救ったあの時を。」
リクト「ニジ、知っている人か?」
シンラ「?」
ニジ「ああ。」
ほんの数秒だけだったが10年前の出来事が脳裏内に映し出される。
それは偶然通りかかった25歳の時の俺が、数人の反社の連中に小さな店へとカチ込んで理不尽に取り立てている所を。
そこで何度も殴られ蹴られ傷付いても守るように立ち上がる若造二人が、その店の老いた主人だけでなく店内に居た幼い子供達の為に戦う姿を目にしたから。
ニジ「本当に偶然だった。そしてこの大変な時になって無事にこの日まで生きていた。」
ニジ「懐かしい。偶然通りかかって助けた君たちと、あの店のご主人が作ってくれた【カレー】がとても美味かったよ。」
だから成長した彼らを目にした俺は少し背を曲げて、見上げる彼らの肩へ軽く手を置いて
ニジ「見てない間にまぁ…少し、大きくなったな。お前たち。」
キリシマ「アンタが…異常に…デカすぎる、だけだ。」
カワセ「他にもデカい人居たけどね…。でも私達を覚えてくれて嬉しいよ。ニジ。」
トビ「(へ、兵士長と隊長が…嬉し泣きしてる!?)」
ツグミ「(初めて見た!いつも強面で手厳しいキリシマ兵士長と行動含めて全く読めないカワセ隊長が…)」
カゲロウ「(二人がこんな表情を浮かべるなんて…。この3メートル級の背がデカい人は一体何者なんだ…。)」
リクト「(ええええ。な、なんか泣いちゃってるー!?あのタ●ちゃん頭の人とゴーグルメガネの人ー…。)」
シンラ「(うむむむ…。そこはニジ本人に詳しく聞くべきかと…。)」
少し背が伸びて大人になってもちょっと幼い部分がある彼らへ笑みを返し、ついでに頭をそっと撫でて彼らをあやした。
そんなやり取りをしていた俺らと変わって、
ムラクモ「うんうん。この条件ならいいよォ〜。今後ともご贔屓にぃ〜。」
ヤマト「はい。こちらこそ末永くよろしくお願いします。」
R孤島と火山地帯コミュニティとの結束が結ばれ、協議書らしい紙へと双方の名前で記入する。
ムラクモ「これで成立っと。ああ、そうそう。一つ尋ねてもいいかい?」
ヤマト「何でしょうか?」
平和的に結ばれた後、ムラクモさんは一言ヤマトさんへ伝えた。
それは、
ムラクモ「確か今から2・3週間前かなぁ〜?肉食種に侵食されたミスミ街からの至急避難民受け入れ要請。あれから大分経っているから何か掴んでいる情報はない?」
ヤマト「ミスミ街からの避難民受け入れ要請ですか…。」
だいぶ前に外部からやり取りしていた内容。
それをヤマトさんへ尋ねたムラクモさん。
しかしヤマトさんは首を横に振って、申し訳ない表情で応えた。
ヤマト「いえ。こちらの追加情報は…。」
ムラクモ「そうかぁ〜。なら彼らは大方…」
そして次のムラクモさんの言葉で、
ムラクモ「あれから音沙汰もない以上、【全滅】してるかもねぇ〜。」
ヤマト「大陸はほとんど肉食種に侵食されている以上、忌避方法を知るに限られている今では【移動中に予期せぬ襲撃・全滅】することは今の世界からにすれば淘汰される運命かと…。」
ムラクモ「無慈悲な世の中だねぇ〜。例え運良く生き延びたとしても、明日はどうなるか分からない。」
ムラクモ「だからこそ、選択だけはミスっちゃいけないねぇ〜。ああ、怖い怖い。」
ヤマト「それでも何度でも私達は抗わなければならない。迫り来る死を何度も躱し本来求める安永なる人の終わりを迎える為に。」
ムラクモ「そうだねぇ。」
今の世界の非情で無情・そして残酷さ。
それでも必死に生きようと、前に進む俺たちへ向けたやり取りがその二人に交わされた。
終




