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8・領主と領地の税収

 なかなか領地の収入が増えないので困っちゃうんだよね、と、領主は言った。


 ちゃうんだよね、とは、領主らしからぬお言葉ですな、と、人事大臣はいつものように相談に乗ってくれた。


 戦前の帝国は、工業面での技術力、つまりなにかを作る生産力は戦争の勝者である共和国に引けを取らないものがあったのだけれど、資源、つまりそれにもとづく生産量が全然足りてなかったのである。


 もっと植民地をたくさん持って搾取するという、悪役大帝国的なことができればよかったところを、世界の大勢は、そういうのは既得利権持ってるうちらの国以外はだめー、という流れになっていた。


 さいわいいなことに、帝国の工場はばりばり空襲で焼かれ(さいわい、じゃないですね、これは)、共和国はもうひとつの大国である連邦との冷戦状態に入ったため、共和国の援助によって焼かれた工場は建て直され、最新鋭の設備と資源が提供されて、帝国は有数の産業国になった。


「税収が増えないということは、つまり帝国民がまださほど豊かになってない、ということですな」


「うん、それが主原因なんだけど、ほら、いろいろ消費してくれる勤労・家族層がごそっと減っちゃったじゃん」


 ここらへんの、領主と人事大臣とのやりとりは、「と、◯◯は言った」と言うのがなくても通じるように、無駄なキャラ立てをしていると思いねえ。


 落語だったらカミシモの使い分けでなんとかなるところを、無理からにテキスト化するとそうなるのである。


 だよーん、とか、ござる、と言うほどには雑なキャラ立てではない。


「もっとみんなコ作りにはげめば、数十年後には生産・消費人口もあがるんだろうけど、そんな先まで待ってられないし、同時に老齢者の数もじわじわ増えていくわけよ」


 つまり富国強兵のためには、なにか儲かることを考え、あわせてにコの数を増やさなきゃいけないんだ。


「そうですねえ、コを何人以上持ったヒトには補助金を出すとか……」


「それより、コやツレを持たない者からは罰金、あるいは死刑ということにするのはいかがですか」と、軍事大臣は言った。


「あ、びっくりした、あんた、いたの」


「最初からいましたけど、食べながら話に参加するのはむずかしいのです」


「お前はなんでも、やたら殺したがるからいかんのよ。これだから戦中世代は」と、人事大臣は言った。


「馬を水辺に連れていっても、馬がのど乾いてなければ飲まないよね。そういうとき、あんたならどうするの」


「とりあえず馬を殺してから考えます」


「……って、聞かなきゃよかったね。とりあえず、税金に関しては、コやツレを持たない者からはがしがしもぎ取って、コを育ててる者に補助金を出す方向で、財務大臣と相談してみるか、それから、新製品の開発とか市場拡大に関しては、産業大臣の意見も聞いて……どうしたの」


「ほほお」


「あんた、わりと領主っぽいこと考えてんのな、三等貴族のくせに」


「ふぁんたじぃ世界の主人公にしては妙に現実寄りですね、最近はそういう傾向の、ゆるふわ産業ふぁんたじぃも増えてますけど」


 人事大臣の能力は、めた視点、という、実に奥が深いものである。


 単に長生きしているから、映画その他の物語にくわしいだけかもしれない。


 なお、軍事大臣の能力は、ヒトの3倍早く動ける、とか、殺せる、じゃなくて、早めし・大食いである。


 戦争が大規模になる前は、大火力とか大破壊といった、一個師団に匹敵するような能力者もいたんだけど、そういうのは初期に消耗されきったか、中立国に逃亡するかしていて、戦後の帝国内にはあまり多くないし、戦争以外には役に立たない能力は、平和時には無駄なのだ。


 そもそも、実際には魔力使ってなにかするより、火力発電所とか重機のほうが使い勝手がいいのだった。


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