7・領主と共和国政府の要職者
領主のツレ予定者であるルークは、軍務と商売のために月に何度かは帝国と共和国を往復しており、領主は電車で行けばさほど遠くない帝都にまで遊びと商談のため、ルークとときどき会うことにしていた。
はじめて領主の領地を訪れたルークは、季節の花束とくっきぃの缶を持って、人事大臣と軍事大臣にあいさつした。
「ルーカスです、よろしければルークとお呼びください、それからこれは、ツマラナイモノデスガ」と、領主のツレ予定者は流暢な帝国語に、不器用なカタカナをすこし、いささかわざとらしく混ぜて言った。
ルークは、背が高くて明るい髪の色を短めにそろえた、なかなか様子のいい人物だった。
そして、にこっ、と笑って、歯をきらりと見せた。
軍事大臣は戦争時代に戻ったかのように、がちがちに緊張しながら、ルークが伸ばした手をにぎった。
これは帝国ではあまり見られない、ふれんどりぃな仕草なので、軍事大臣は握手しながら頭を下げてしまった。
「こちらのかたは人事大臣ですネ。おうわさはかねがね、えーと、リゼたんからうかがっております」と言ったため、領主はルークの背中をぽかぽかと、力の加減を考えながら叩いた。
直立不動の姿勢で、共和国式の敬礼をしたルークに対し、人事大臣は伍長時代のように帝国式の答礼をした。
「先の戦争は、お互い不幸なことでした。ワタシは当時、志願して戦争末期に魚雷艇の艦長として赴任しました」
そして、ルークは腕を降ろして軽く斜め下のほうを向き、黙祷をした。
いつまでも。
いつまでも。
いつまでも。
なにしろ相手は、帝国基準では一等貴族で、戦後は共和国政府の要職につき、大統領になるかもしれない人物なので、人事大臣はさきに頭を上げるわけにもいかない。
ちら、と、相手の様子を見ながら、人事大臣は何度も黙祷の姿勢をやり直した。
それからしばらく、リゼたんは昔やんちゃだったんですよー、と、親戚の法事でみなさんも絶対体験したことがある、昔の話をしたあと、それじゃまた数日後に帝都で、と領主に言い残してルークは去っていった。
「おお、これは鳩さぶれ、ですか。あちらの国でもこのようなものが作られているとは。それでは閣僚の皆で分けて」
もともとは共和国由来なんだけどね、と、領主は言った。
だいたい帝国の菓子は諸外国が発祥の地なのだ、豆大福とか。
え、と、軍事大臣は、さっそく食べていた菓子をのどに詰まらせそうになった。
まだ帝国は、菓子工場をたくさん作るほどの生産的ゆとりはない。
「わが領地でも、返礼を考えなければなりませんな、何かありましたらよろしいのですけど」と、人事大臣は真面目に考えながら言った。
そうねえ、帝国茶でもやったらいいんじゃないの、ひと袋送ると百箱ぐらいお返しがくるけど。
あと、ちゃんと商売の取引はやってるんだ、と、領主は執務机の後ろにある棚から、じゃむの瓶を取り出した。
会社の役員は知ってると思うけど、そういう情報回されてないの、と、領主はイチゴじゃむの蓋を開けて説明した。
この部分の護謨ね、これがうちの提供してるやつなのよ、加工して、瓶を作ってる別の領地に送るとちゃんとした空き瓶が作られて、共和国に輸出されて、じゃむの入った瓶が帝国に輸入されるのね。
送るときには何入れてるかって……んー、空気、かな。
「ところで、あのかたも帝国基準では貴族、ということですよね」
「あちらにはそんな制度ないけど、一応能力持ちだし、帝国みたいな格式だけじゃなくて、ちゃんと資格試験受けてるよ」
失礼ながら、どんな能力なんですか。
えー、ちゃんと見せたやん、にこっ、と笑うと、歯がきらり、とする能力。




