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3・領主とふたりの大臣

 領主は基本的に、その日のうちに読むと決めた書類には目を通す。


 本当に早急のものは、担当の役人もしくは社員が、上司・役員とともに直接持ってくるから、一日の書類の山の、すべてに目を通すのは、翌日には確認される。


 そして、許可・いやいやながら許可・要検討、の3つに分け、領主の机のそばに置かれている秘書官の机の上にもどす。


 領主が秘書官と同じ執務室で、同じ時間に仕事をすることはめったにない。


 そっと領主の執務時間外に来て、書類を持って来たり、持ち帰ったりするだけである。


 領主自身が顔を確認・認識している度合いは、領主の館にいる副侍従長ぐらいな感じだろうか。


 書類のうち要検討のものに関しては、参考意見を聞きたい職員担当者の部署を記入し、付箋をつける。


 渋々ながらも含めて許可する書類は8割ぐらいであり、説明が必要と感じるものに関しては後日、現領主の他にも2人いる次期領主候補者と合わせて、別室で責任者と会う。


 話し合いではなく、ただの説明なので、そんなに時間がかからない。


 次期領主候補者のひとりは、領主のオジの子、つまり前期中等教育を受けている者なので、遠隔参加あるいは時間の都合をその者に会わせることになる。


 責任者による説明は早ければその日のうち、遅くても翌日午前中である。


 回された書類には、複数の者による確認印あるいは署名がされており、確認印は正しく押されたものから、次第に曲がって押されるものもある。


 領主は礼儀にのっとり、曲がった印が押されたものには、さらに曲げた印を押す。時にはさかさまに押すこともあるけれども、あまり角度を問題にする者は多くない。


 ほとんどの書類を片付けると、一般職員および担当大臣の入所、いわゆる出勤時間になる。


 日によって異なる複数の秘書官補佐からその日の予定を聞き、定期的におこなわれる大臣・会社役員との昼食会といった予定がないということになると、出前の献立を決める。


 食べごろ、育ち盛りということにはなっているけれども、昼食会の食事は他の参加者ものの半分にしてもらっている。


 出前の食事は、おもにもり蕎麦かざる蕎麦で、特別にふたりの大臣を呼んで、もっぱら領地経営に関する情報交換をする。


 ひとりは人事大臣で、末端の貴族の三男でさほど若くもなかったため、戦争には行ったけれども士官になることはなく、一般兵士とほぼ同じ扱いのまま伍長で終戦を迎えた。


 戦時中でも、別に捕虜の虐待や現地人の虐殺に関与することはなかった、と、残された書類と関係者の証言で確認されたため、軍事裁判にも形式的にかけられただけで、公職を追放されることもなかった。


 官吏としては有能であり、人を見る目もしっかりしていたとはいえ、一等貴族やその眷属が帝国の支配層を続けていたなら、現領主の支配する領地は小さくはあったけれども、一領地の大臣になることは難しかったろう。


 もうひとりは軍事大臣で、戦争がもうすこし長引いたら、爆弾を抱えた飛行機で敵の軍艦に特別攻撃をするはずの、現領主よりすこし年長の人物である。


 前皇帝による終戦の詔勅後も、若い兵士であったその者は、おれたちはまだ戦える、ここで戦いを終えたら、英霊のみたまにどう申し訳を述べるというのだ、という、過激で世間知らず、というより、社会の一方しか見ていない言動を示したことは知られている。


 軍事大臣という職を得たのは、三等貴族のあとつぎにふさわしいような格式と能力を持つものがほかにいなかったからでもある。


 そもそも、もう戦争はこりごり、という人が多かったため、軍事大臣などに積極的になりたいという者もいなかった。


 そんな軍事大臣が領主とともに昼食をすることになったのは、その者のいかれ具合がなんとも領主に気に入ったのと、もうひとつは、ものすごい勢いで大食する、というその芸、ではないかもしらないけど、その食事ぶりが見たい、という単純な理由からだった。


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