20・軍事大臣とモフモフ・ホッコリとの戦い
いつものとおり領主は昼食に軍事大臣を呼び、軍事教練のほうには励んでいるのか、と雑談として聞いてみた。
領地を守るための軍隊はほぼ必要ないとはいえ、自然災害や過激派、あるいは疫病発生のために、ある程度の税金がかかるのは仕方がないことではある。
ただ一応、領民に説明する責任はあるので、と領主は言った。
今の時期は害獣も魔獣も出てはいないので、モフモフとホッコリ退治に集中しております、と軍事大臣は答えた。
え。
ここ、魔獣とか出るの、と領主は驚いた。
いや、出たらいいな、ぐらいに思ってるだけで、シカやイノシシ、それからえーと、カラス、そんなもんですかな、ていうかそんなことに驚くなよ、領主。
軍事大臣はしょっちゅう同身分と同じような口の聞きかたをするのである。
領主が閣僚のなかではいちばん若い、というより小さいのだから仕方がない。
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モフモフというのは、工場の隅っこで繁殖するもふもふな生き物で、工場内や労働者の衣服に溜まるゴミなどを食べて繁殖する。
ホッコリは農場で繁殖し、雑草や害虫などを食べる、ほっこりとした小さな生き物である。
どちらも害にも益にもならない生き物ではあるとはいえ、平和時の繁殖力は抜群だった。
電脳世界では、物語のモフモフ感、ホッコリ感は書き手の心を折るような正しい嫌がらせで減らせるんですけどね、と、人事大臣はいつものとおり、めたなことを言った。
よく見る発想ですけど、とか、ぼんやり見える個性が、といった、運営側にも誹謗中傷とは判断しにくい、雑な感想を書いてやると、作者はだんだん弱ってくるのです。
と、人事大臣は言うけど、そんなことはない、と作者は強調したい。
唐突に作者が出てきてすみません、読者がひとりでもいることがわかると、作者はひどい感想でも喜ぶのである。
こう、イナゴでも大量発生して、畑焼き尽くすとか、疫病が大流行して、村を焼き尽くすとかしてみたいなー、と軍事大臣はろくでもないことを言った。
今は世界各地で洪水、山火事、大地震など自然災害は増加してるので、うかつなことを言っちゃだめじゃん、と、領主も馴れ馴れしく注意した。
高度に進化した宇宙人のおかげで、地球のいたるところを観測できる気象衛星がぐるぐる回っているから、台風や大雨の予報は戦前とくらべると抜群なのはいいけど、治水のための金や気象衛星の代金は各国家の自腹であるし、地震予知に関しては、きみらにはまだ早いよ、みたいな感じで技術を教えてくれない。
しかし、平和はいいものですな、と人事大臣は言った。
戦争中は、贅沢は敵蛇、とか、欲しがりません勝つまで羽虫とか、ヒトを噛んだり、ぶんぶんうるさく飛び回る害虫がそこらへんにいたものです。
とりあえず、お前ら、もっこり、じゃなくて、ほもふり、でもなくて、モフモフとホッコリの狩りすぎは禁止な、と領主は軍事大臣に言った。
えー、いーじゃんよそのくらい、やらしてくれよ領主。
代わりに河原で土嚢作りでもしてろよ。
そんなん、重機があればヒトの何十倍も効率よく出来ちゃうしー。
じゃあ、下士官以上のものはみんな、自動車免許か重機免許か、共和国語検定準2級以上の資格をとること。
危険物取扱とか、放射性物質取扱とか、そんな資格でもいいよ。
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それから数日後、人事大臣は領主に、いい知らせがある、と報告にやってきた。
モフモフの件なんですけど、喜んでください、こんなこと言っちゃっていいのかなー、でも言いたいよなー、あのですね。
15万字分のモフモフは、圧縮すると3万字になることがわかりました。
えー、あいつら「匹」とかじゃなくて「字」で数えるの、と領主はまたしても驚いた。
え。
あいつら。
「字」で数えるのか。
ほらほらー、そういうのは一行で書けるじゃないですかー、と人事大臣は言った。
確かにそうだね、でもってそれはどこらへんでどう喜べばいいんだ。
読むのが楽になります、と人事大臣は言い、領主も納得した。
だったら、もっと圧縮して1万字ぐらいにはならないのかな。
それは、登場人物や風景描写などをばしばし削れば、ならないことはないとは思います、しかしそれを15万字にするのが、作者の腕なのです。
領主も毎晩、寝る前にモフモフを2000匹、という言いかたはやっぱ違和感あるので、2000字ほど、寝床に入れて、あーいーなー、モフモフ、と納得しながら眠りにつくのだった。




