11・領主の学友
宇宙人が人にもたらした最大の恩恵は、電子機器とそれに基づくさまざまなものか安価になったことだった。
戦後のはじめは大型で使いにくいものしか、宇宙人は提供してなかったものが、数年もしないうちに個人が片手で持ち運べるほどの大きさになった。
したがって領主およびその通う学園も遠隔授業を積極的に取り入れ、生徒は毎日学校に直接来なくても教育が受けられるようになっている。
なお、教師が教育のために制作した動画などは倍速で見られるのが当たり前になってしまったため、領主の持っている倍速能力は、電子機器によってその半分ほどは能力としての意味をもたなくなった。
ただし、誰でも倍速で視聴はできても倍速で勉強することはできないから、領主の能力の優位性は、それなりにある。
領主が通う学校の学園長は、せめて月の3分の1ぐらい、連絡情報時間にだけは顔を出してください、と言っているし、領主も学園長の意見に関しては積極的である。
なにしろ一対一の情報交換における予想外のできごとや対面でのやりとり、それに学友との肉体的な接触は、領主としての身分や帝国内の制度とは離れて、楽しみと交流の原点になるようなものであったからである。
この時代、貴族でも平民でも、個人情報は電網の中では伏せておける、というより、住んでいる地域・年齢なども曖昧にして接しなければならない。
したがって、領主は領地内外に同年齢の友と言えるものは、学園に入るまで特にいなかった。
電網での遊び相手はいることはいるし、仕事上の付き合いは多方面に渡っているけれども。
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まだ領主の能力が学園内外の一部のヒトに知られるようになる前だった。
能力持ちは基本的にどんな能力があるかを隠しているものなので、ばらそうと思わなければいつまでもバレないものなのであるけれども、最初に気がついたのは両親と同じ教室で学ぶとある人物だった。
そのものは、自分を一等貴族のタツミと名乗り、ちょっと話があるという風こ、領主を校庭の裏に呼び出した。
なぜか知らないけれども、当時の領主がそんな目に会うのはしょっちゅうだった。
つまり、学園内での優劣や能力の強さを競う、たわけた遊びには慣れていた。
今度もどうせ似たようなことだろうと思いながらその人物を思っていた。
タツミは現実感と自己主張の強さに関しては、領主よりもきっちりしており、平たくいえば圧迫力があって、きちんとした身なりの、それなりの財力がある、商人の支援も得ている優等貴族と思われた。
領主は、しょっちゅう人事大臣には現実感が欠けている、と言われるし、学内で目立つほどの人物にはならないように気をつけていた。
タツミは、私はあんたの能力知ってるよ、と、いきなり言った。
そして学校指定の大きめの肩掛け袋からリンゴを取り出し、上に放り投げた。
それは倍速の速さで上がり、0.5倍速の速さでゆっくりとタツミの手に落ちたので、領主は驚愕した。
さらにタツミはそのリンゴを0.5倍速の速さで領主に、ぽい、と投げ渡した。
私の能力は他人の能力を複写するものなんだ。
ふたりで学園を支配してみないか、と、タツミは提案したけれども、その前にちょっと笑わせてくれ、と領主は言った。
よりによって複写能力とはねえ、なんていうか様式美、えーと共和国語で言うと、てんぷれ。




