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1・領主の朝

「さて、今日もやるべきことをやるか」


 着ていた外套と、学校指定の紺色の上衣を衣装棚にかけると領主はそう言い、ほぼ腕まくりのためだけに着ているうす黄色の薄衣の腕まくりをした。


 領主の仕事場である執務室には大きい濃褐色の、なんとか戦災で焼けることのなかった机と、焼けてしまったため買い替えた、座り心地がほどほどに悪い作業用の椅子があった。


 机と失われた椅子はしっかりした素材でできており、先代の領主によると、やはり座り心地はそんなにいいものではなかったらしい。


 領主も一度、まだ小さいころに腰をかけてみたこともあったらしいけれど、よく覚えておらず、執務室の中にあった応接用の長椅子の、寝心地のよさそうなふわふわ感のほうをよく覚えていた。


 そして机の上にはいつもの通り紙の書類が山積みになっていた。


 領主の名前はミドリ。新領主になってからまださほど日は経っていなかった。


1・領主の朝


 だんだん日が長くなり、夜が短くなる季節で、時期の花は領主の館にある庭に咲いており、新芽・若草もその色を濃くしていた。


 どこの領地でも、領主の朝は農作業者と同じくらいに早いことになっている。


 まず日が出る前に、自宅の浴室で軽く沐浴をしたあと、領主は寝衣を準礼服にあらため、まずのぼる朝日、次に皇帝が居ます宮城に跪礼をする。


 その儀式は帝国が戦争に負けて、領主・皇帝が代わったはるか以前より続くものだった。

り、


 帝都・宮城は、帝国あちこちにある領国・領地の中央にあるため、領地によっては必ずしも日の出の方向に宮城ががあるとは限らない。


 そのためため皇帝の御真影を、朝日の方向に設け、それに礼を済ましている地もある。


 主人公である領主はまず東、そして東よりやや北の方角に向けて跪礼をする。


 次に立ち上がって、歴代領主の肖像が飾られている北面、つまり南面している肖像画に最敬礼をする。


 神と皇帝と先祖に関しては恒例の儀式として、暑さ寒さにかかわらず日の出に行われる。


 そのための準礼服は前日に清められて用意され、期が代わるごとの朔日に、新しいものとなる。


 その後領主は再び服を外出・公務用のものに着替え、準緊急の連絡通知がないかを携帯端末で確認しながら朝食を取る。


 本当に緊急なものは、通報警報が容赦なく届くため、その行為はむしろ日程の再確認と変更がないかをあらためるためでしかない。


 朝食はささやかながらも栄養案配がいい新鮮なもので、副食の肉と魚が隔日に出される。


 いく種かの野菜は隣の領地から採れたてのものが毎日運ばれてきて、長期保存に回される分も含めてたっぷりとある。


 領主は、馴染みでもある隣の自治体の領主に感謝しながらも、ときとして我慢しながら食べる。


 まだ味覚がお子様なんだよ、と相手が言いたいためだけに、試されるような種類のものがたまにあるけれども、領主の自治体で取れる同種の野菜よりは、環境がいいのか、館のほかの者には、どれも評判はいい。


 つまり領主の食事は、組み合わせとしては洋食・和食の肉と魚、麺麭と米で、それに緑色系統の野菜と赤系統の野菜果汁が添付される。


 領主はみかん色の髪と瞳を持ち、しかし成熟期初期でありながら成長が遅れめなのではないか、と、古くからの家令は配慮しているため、あまりいい味のしない野菜果汁も含めて残さず食べる。


 領主の館は先代の領主が使っていたもので、けっこうな広さがあった。


 しかし、空襲のため3分の1ほどは焼けて、雑な修理が施されており、今は一時的に、通いの従者や侍女の作業・待機所として使われていた。


 館の焼け残った部分には、身内である領主代理や、住み込みの下働きの者などが利用していた。


 つまり、館の新しい部分は雑であっても近代的な設備が置かれ、古い部分は広くても古くて使いにくい。


     *


 執務におもむく領主の服は、後期中等教育の学生が、制服として着るものと同じだった。


 周に何度か学校に行かなければならないとき、さらに着替えるのは面倒であり、領主は領主であると同時に、後期中等教育課程のいち学生でもあったからである。


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