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池の水

作者: 小鳥遊青空

 むかし、むかし、あるところに貧しい村があった。あるとき村で病が流行った。貧しいため薬も手に入れることができず、村人は次々に死んでいったそうだ。

 この村に弥助という、正直者で心優しき少年がいた。彼は毎朝家族のために池まで水を汲みに行っていた。

 「どうかみんなの病が治りますように。」

 彼は毎日池に祈った。すると一羽の金色の烏がやってきて、その池で水浴びをし去っていった。弥助はその水を汲んで急いで村に戻り、家族にその話をした。

 「きっと良い事の前触れだ。」

 家族がそう話しながら水を飲むと、なんだか体が軽くなった気がする。試しに病に伏せている村人にその水を飲ませると、なんと病がみるみる治っていくではないか。村人たちはこぞってその池の水を飲み始めた。


 しばらくして、その池の水の噂を聞きつけた悪徳商人が学者のふりをして村を訪れた。彼は池の水を独り占めしようとしてこう言った。

 「池の水を調べましたが、普通の水と全く同じでした。それどころかその池で何人もの人が身投げをしていたことが判明しました。だからもうこの池の水は飲まない方がいいでしょう。」

 こうして彼は池の水を独り占めし、街で「黄金烏の水」として売り始めた。最初のうちは「この水を飲むと病が治る」と評判になったが、そのうち「水が血の味がする」て苦情がくるようになった。彼は原因を探るためもう一度、村を訪れた。


 ところが、1ヶ月前には確かに存在していた村が跡形もなくなっていた。家であったであろう建物は朽ち果て、畑は荒れ放題になっている。悪徳商人が呆然と立ち尽くしていると、一人の老婆が歩いてきた。

 「おい、老婆。ここに村があっただろう。どうして荒れ果てているのだ。」

 「へえ。たしかにここは村だった。じゃが、村人はみんな死んださ。」

 「なぜ死んだ。」

 「なんでも偉い学者様が来て、『村人が飲んでいる水は人がぎょうさん身投げした場所から汲んでいるから飲まん方がええ。』と言ったらしくてな。そのせいで弥助という少年と家族が嘘つき扱いされてしもうてな。弥助は心を痛めて池で身投げしよった。ところがの。弥助が死んだ後、沢山の金色の烏様が現れて弥助の遺体を空へ運んだそうだ。村人はそれをみて、『嘘をついていたのはあの学者で弥助は本当のことを言っていた。弥助が正直者だと知っていたのに、信じてやれなかった』と悔やんでの、みんな池に身投げしよった。」

 二人はいつの間にか池まで来ていた。

 「そしての、自分たちを騙した学者が来るのをいまか今かと待っていたんじゃよ。」

 老婆が老婆とは思えない強い力で商人の背中を押す。池に落ちて商人は必死にもがく。だが池から無数の手が伸びてきて彼を押さえつける。彼は池の底へと消えていった。

 

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