第五話
「……お客様、この度は
ご不快な思い
大変な思いをさせてしまいまして
誠に申し訳ございませんでした」
ゴナの隣に立ち
男性客に改めて向き直ると
姿勢を正し、頭を下げる
「ア、アンタが謝ることは無い!!
悪いのは呪いがかかったままの剣を
売りやがったコイツだからな!」
思わぬところからの謝罪に
男性客は少したじろぎながらも
ズビシッ!!とゴナを指差すが
チラッと目線を動かすだけで
ゴナには何も響いていない
「はい、お客様のおっしゃる通り
私の隣にいます店主のゴナが
お客様に販売する前に
商品の状態をちゃんと説明するべきでしたが
それを怠ったために
このような事態を招いてしまいました。
本当に申し訳ございません。
また、店主であるゴナが自分のミスを認め
きちんとお詫びを申しあげ
この後の対応も
ご提案させて頂く…べきなのですが
…見ての通りでございますので…
そちらに関しても重ね重ね
本当に、誠に、申し訳ございません」
本来であれば事が事だけに
店主が動くのが当たり前なのだが……
当の本人は腕を組んで
眉間にシワを寄せたまま
男性客を睨んでいる
「い、いや…そりゃ……
あー……そこまでアンタに頭下げられたら……
俺も……朝早くから…すまなかったな」
「いいえ、怒らせてしまったのは
コチラの責任です
本当に本当に、申し訳ございませんでした
つきましては、今後の対応なのですが……
店主であるゴナと話し合い
改めまして謝罪とご返金等の件も含めまして
必ず…ご対応させてみせます
本当に重ね重ね申し訳ございませんが…
少し…お時間を頂けないでしょうか?」
頭を下げたまま
真摯に謝り続けた事で
男性客はこちらに対して
少し心を開いてくれた
ここまでくれば日本であれば
『商品の返金、治療費
そこにお見舞い金を乗せてお支払いする
同じことが起こらないよう改善することを
お約束する』
それが当然の流れなのだが……
すぐに提案出来なかったのは…
一つ気にかかっていることがあるからだ
「…………分かった、俺はサースだ
アンタ…いや、ラーヤさんを信じるよ
一ヶ月後、もう一度来るからそれまでに頼むよ」
「はいっサース様ありがとうございます
この度は…本当に申し訳ございませんでした
一ヶ月後、お待ちしております」
お店の外までお客様を見送ってから
店内に戻ると
不機嫌そうに剣を商品棚に戻す
ゴナと目が合う
「…それ、呪いかかったままなんでしょ?
そこに戻して大丈夫なの?」
「……分かるやつが見れば一発だ
うまく使えば最強の味方になるはずだ
見抜けなかった、使え無かったアイツが…
弱かったってだけだ」
「でも、それであの人怪我したんだよ?
仕事も失ったんだよ?
このまま、あの人が{弱かったから悪い}で
本当に済ますの?
私には…あなたが…
ゴナが、済ませれるとは思わな……」
ーーーガンッ!!ーー
言い終わるか終わらないかのうちに
ゴナが目の前に立ち
私の顔の横の壁を殴って怒鳴る
「うるっっせぇな!!
昨日来たばっかのお前に何が分かんだ!!
俺がアイツが悪いって言やー
アイツが悪いんだよ!
ここは俺の店で俺が店主だ!!
出しゃばってくんな!!」
怒鳴る声とは裏腹に…
薄金色の前髪の隙間から見える瞳が
どこか苦しそうに…
泣き出しそうに…歪む
(…………どうして…そんな顔……)
真っ直ぐにゴナを見つめ返すと
ゴナの瞳の中に自分が映っている
なんだかとても…胸の奥が痛い
泣きたいような
抱き締めたいような
なぜだか…そんな気持ちが溢れてくる
そっとゴナの頬に触れると
ビクッと怯えたように瞳が揺れ動く
「ゴナ…私の持つ接客の知識を全部あなたにあげる
昨夜、あなたに助けてもらった御礼。
ね…私と一緒に頑張ってみない?」
まだ出会ったばかりではあるけれど
昨夜からのゴナの態度を思うと…
やはり先程のお客様への態度には
違和感しかない
何か理由があるのか…
それとも接客の仕方が分からないのか…
どちらにしても
『この人の力になりたい』
初めてお客様以外にそう思えた
「……俺の代わりに謝らせてすまなかった…
それから、怒鳴って………悪かった
よろしく…頼む」
頬に触れたままの私の手を
ゴナが握り返し優しく微笑む
「…こちらこそよろしく。
私はスパルタよ?頑張ってついてきてね!」
ゴナの手を強く握り返し…
久しぶりに自分の口元が柔らかく…
緩むのを感じた
「さあ、そうと決まればやることたくさんよ!
サース様との約束は一ヶ月後。
それまでに一つ一つ問題を片付けてかないとね…
まずは、私一つ気になってることがあるの
店内の商品の仕入れ先はどこなの?」
そう店内の様子を見た時から…
ずっと気になっていた
仮にも商売人なのだから
こんなにたくさんの商品を
後先考えずに仕入れるわけが無い
長年の物が…という見方も出来るが
店の外観からも
物で埋め尽くされた店内や二階も
そんなに古さは感じない
それに仕入れるにしても資金がいる
ホコリ化粧をしている商品の状態からして
売れているものがあるのか怪しいところだ
ではその資金はどこから?
サース様に
すぐ返金などの提案が出来なかったのは
そこが引っかかっていたからだ
「…簡単に言えば
俺の仕事は物の愚痴を聞くことだ
物達の愚痴を聞いて満足させてから
持ち主に返したり
新しい持ち主を探してやったりするんだ」
「物の…愚痴?物が喋るの??」
「あー…口で説明するより
聞かせた方が早えーな
そうだな…
さっきの呪いの剣の声を聞いてみるか?」
呪いの剣を手に取り
何か小声で呟くと剣が光り出した…