手作りの流れ星
読んで頂けると嬉しいです。
わたしは縄跳びが上手。
いっぱいできる。すごくたくさんで、幼稚園のミホ先生がびっくりするくらい、できる。
ミホ先生が数えてくれたら120回で、すごいでしょ、って思った。
だけど、本当に本当のことなのに、家の近くの男の子たちは私のことを「嘘つき」って言った。嘘なんかついてないのに。
日曜日、縄跳びを持って、ママと一緒に公園に行った。
みんなに嘘じゃないって見せるために。
「ちゃんと見ててね。出来るんだから。」
ピョンピョンピョンピョン・・・・
私の横で男の子達が数え始めた。1、2、3、4、5、・・・
でも、ずっとしてたら、男の子達がだんだんいなくなって、ママと2人になった。
そして50回くらい回った時、ママが、
「もういいんじゃない」
って言った。まだ全然、100回だって飛んでないのに。
「もう、みんなも分かってくれたんじゃない?」
もう1度ママが言った。
だからそうしたのに、止めた途端、男の子達が戻ってきた。
「まだ120回出来てねーぞー。」
「やっぱり嘘つきだ。」
「嘘つきー」
・・・・・・・・・・
「ママのせいだっっっっ!!」
おっきい声でママに言ってやった。だって私は、ママがもういいって言ったから止めただけなのに。
「ママなんて、だいっきらい!!」
いつもいつもママは意地悪をする。
パパも、ママと喧嘩したからいなくなったんだ。
その夜、なかなか眠れなかった。
ママに背中を掻いてって言ったら掻いてくれたけど、気持ちいいな、眠れそうだなって思ったら、ママが先に寝ちゃった。
「ママ起きてよっ!ママのせいで目が覚めちゃったじゃんっ!」
ママを揺すったら、寝ぼけてポンポンて叩いてきた。
「止めてよっ!叩いてって、言ってないじゃんっ!!」
せっかく眠たかったのに、ママのせいで目が覚めた。やっぱりママは意地悪だ。
ある日、ママは、ばーちゃんと喧嘩した。ばーちゃんは怒って、家から出て行った。しばらく、叔母ちゃんのところに行くんだって。
ママは毎日お仕事に行くから、幼稚園のお迎えはおばあちゃんなのに。ママのせいで私は、遅くまで幼稚園にいないといけなくなった。ママのせいだ。
消しゴムでお手紙が破れたのもママのせい。だって、ママが綺麗に消したらって言ったから。
鉛筆が折れたのもママのせい。だってママが、丁寧に書いてっていったから。
お風呂で転けたのもママのせい。だってママが、ちゃんと私を見ていなかったから。
ママのせい。ママのせい。ぜーんぶママのせい。お腹の中がむかむかして、机の上の物を、全部投げてやった。そしたらママが怒ったから、大きな声で泣いた。これもママのせい。
夜、ママが泣いていた。
「今日、流れ星が見えるんだって。」
幼稚園の前にママが言った。
「流れ星って?」
「お星さまが、ぴゅーって動くの。」
「ふうん。」
「見ながらお願い事したら、叶うんだよ。」
「ふうん。・・私も見たい。」
「うん、夜に、一緒に見ようね。」
見ようねって、言ったのに、ママはまた意地悪をした。
「ママの意地悪っっ、見るっていったのにっ!!」
「だって、眠ってしまったから仕方ないでしょう?起こしても起きなかったんだから。」
「嘘つきっ、嘘つきっっ、ママの嘘つきっっっ!!」
その日の夜、夕御飯を食べ終わった後、ママがまた言った。
「流れ星、見る?」だって。
「昨日だったじゃん、無理だよ。」
「ほらっ、流れ星。見て見て。」
ママが、紙で作った小さな星を投げた。
「それ、紙でしょ?違うじゃん。」
それでもママは、ぽいっ、ぽいっ、て投げた。
1個、2個、3個・・
「何個あるの?」
「いっぱいだよ。ほら、お願い事してっ。」
「へへへ。紙なのにぃ?」
でも、面白いから、やってみよう。
目をつぶって、声に出さずに言ってみた。
ママに優しくできますように、って。
言ってみたら、お口がもぞもぞしてきた。
本当に言ってみようかな。どうしようかな。
目を開けたら、ママが見てた。
私が笑ったら、ママも笑った。
「ママ、ママのせいじゃないよ。」
ありがとうございました。