巨乳風紀委員長、文化祭の怪談の出し物を視察する。
「行くわよ、西園君。風紀の乱れを感じるわ。」
「は、はい。」
僕の名前は西園 隆、風紀委員。僕なんかの自己紹介はもう終わりだ。
今は風紀委員長の風祭 穂さんと学園祭の視察をしている。
この方、髪型がポニーテール、眼鏡を掛けた知的美人。あと胸がたわわである。どの位たわわかというと、下から風祭さんの顔を覗こうとしたら、胸で顔が見えないぐらいである。
厳格な性格の彼女は少しの風紀の乱れも許さない。男女の不順位性行為は勿論、不良が集まることすら許さない。
抵抗したり、話を聞かない輩には空手、柔道、合気道とカポエラを組み合わせた実力行使を喰らわせる。
歩く風紀の暴風雨とは彼女のことであり、学校で最も恐れられる存在である。
そんな先輩に僕は好意を持っているが、彼女は高嶺の花。憧れるだけで終わる恋である。
「西園君、ここから風紀の乱れを強く感じるわ。」
風祭さんが一つの教室の前で止まり、その教室の扉の前の看板には【怪談部屋】と書かれていた。
「入ってみましょう。」
「は、はい。」
扉の中に入ると、そこには沢山の見物客が居た。その中にはカップルも多くいたようだが、泣く子も黙る風祭さんの登場にビビったのか、カップル達は互いに距離を開け始めた。
「ふん、どうやらやはり風紀の乱れがあったようね。座りましょう西園君。」
「はい。」
どうやらこのまま怪談を聞くことになるらしい。怖いのは苦手だけど、ここは我慢するしかあるまい。
ふっと電気が消え、真っ暗になる教室。ご丁寧に窓という窓に暗幕を隙間なく貼っているので、ほぼ暗闇状態である。
暫くすると、前の方でロウソクの火がついて、不健康そうなガリガリの男の顔をユラユラと照らした。
「皆さん、これより怪談を始めます。割と怖いので覚悟してくださいね。ウフフ♪」
ガリガリ男は笑い。その顔が怖くて僕は生唾をゴクリと飲み込んだ。
「これは本当にあった話です。昔この地域には大きな廃病院がありまして、よく学生の肝試しに使われていたんです・・・」
おおっ、声のトーンといい、話のスピードといい、マジ怖いじゃないか。風祭さんはきっと今も凛々しい顔をしているんだろうな。
「西園君。」
ん?ヒソヒソ声で風祭さんが話し掛けてきたぞ?
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもない。」
「えっ?」
一体どうしたというのだろう?
はい、ここでまさかの風祭さんのカミングアウト。
「・・・めちゃくちゃ怖い。」
「えっ!?」
そんな弱々しい可愛い声で言われても、どうリアクションすれば良いんだろう?
「怖い、本当に怖い。もう無理。私、今も泣いてるからね。」
泣いてるの!?見てぇ、風祭さんの泣き顔見てぇ・・・っと、煩悩よ静まれ。ここは風祭さんを安心させなくては。
「あの落ち着いてください。どうせ作り話ですからこんなの。」
「そ、そうかい?」
僕はそう言って風祭さんを落ち着かせようとしたのだけど、ガリガリ男はどうやら空気を読めないらしい。
「手術室の中には目玉の無い医者の幽霊が居て、学生の一人に向かってメスを振り回し襲いかかった!!」
やめろやめろ!!声のトーンを急に上げてビビらせに来るな!!ここに泣いてる女の子が居るの!!
「や、やっぱり怖いわーーー。」
「な、なら外に出ますか?」
「無理、腰が抜けて立てない。」
泣く子も黙る風紀委員長様が腰が抜けて立てないとか、ギャップ萌えでキュンキュンする・・・っと、だから鎮まれ煩悩よ。
「マズい、マズいぞ西園君。」
「何がマズいんですか?」
「うん、このままだと怖くてオシッコ漏らしそうなんだ。」
「えっ!?マジですか!!」
「うんうん、マジマジ。これ無理。どうかして心を落ち着けないと、だから抱きしめさせてくれ。」
「はい?」
戸惑う僕を他所に、僕の事を風祭さんが抱きしめて来た。
無論そうなれば、柔らかくて弾力のある胸が僕の体に当たるわけで、僕の中の何かが弾け飛びそうになった。
「ちょっ!!えっ!?」
「終わるまでで良いから、頼むから、私が漏らしたら君も困るだろ?」
「こ、困りますけど。」
今も絶賛困ってる。風紀委員が風紀を乱しそうなぐらいにね。
このあと30分の長丁場を乗り切り、真っ白に燃え尽きた僕だったが、風祭さんは漏らさずに済んだし。何だか彼女を近くに感じることが出来て、高嶺の花だと諦めていたのが馬鹿らしくなった。