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王宮騎士兼反逆者!  作者: 花時計
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第四話 操り人形

私はテニーちゃんと目を合わせて頷き、勢い良く教会の扉を開ける。


「動くな!王国騎士だ!」


「これは…」


教会内部は酷く荒らされていた。


椅子は真っ二つに割れ、床や壁も穴だらけだ。そこら中に赤い染みがある事から恐らく奴らがここで暴れたのは間違いないだろう。


「もう逃げられたか?」


「いえ、それにしては街の被害が少な過ぎます。多分まだこの中に…」


確かにテニーちゃんの言う通りこの建物内に居る可能性は高い。しかし果たしてこのまま進んでも良いのだろうか?


私達は今入口に居るがあまりにも死角が多過ぎる。下手に進むと奇襲に逢い二人とも命を失うかもしれない。増援が来るまで待つのもアリだがもし教会内部に居なかった場合待ってる間に反逆者は他所でやりたい放題だ。


一体どうする?


「…テニーちゃんはここで待ってて。私が安否を確認してくる」


「え、でも危ないですよ!?」


「大丈夫。平気だから」


剣を構えてゆっくりと前へ進む。いつ何処から襲ってきても返り討ちにしてやる。そう思いながら前に進むと椅子の影に動く物体が見えた。


「そこだぁっ!!!」


剣を振り下ろすと影で動いていた人は動かなくなった。殺した訳では無いが致命傷ではある筈なので暫くは動かないだろう。


所でこの人、何だか少し変な気が…?


「アリスさん!危ない!!!」


ハッとして後ろを振り返るとたった今攻撃した人と全く同じ容姿の男が五、六人程剣を持って飛び掛ってきていた。


私は転がって男達の猛攻を避けるが完全に囲まれてしまった。流石に二対六では敵わない。最早背後にある神様の像にお願いするしか無いか…


そう思った時、背後からステンドグラスが割れる音が聞こえてきた。そして謎の人物が私を飛び越え男一人を蹴り飛ばす。その後ろ姿には何だか心当たりがあった。


「あなたは…ロイさん?」


「下がってな。危ないぞ」


お兄さんは私から剣を奪うと男達に向かって行く。一振りで三人倒れ、残った二人も簡単に剣で真っ二つにした。秒にも満たないその動きはとても美しく、同時に恐怖も覚えた。


お兄さんは私に剣を返し立ち去ろうとする。


「あ、待って!」


お兄さんの腕を掴む。この人にはまだまだ聞かなければならない事が沢山ある。何故反逆者が私を助けるのか、この人達は何者なのか、あの化け物じみた動きは何だったのか…


「悪いが急がなければならないんだあいつらはまだ残っている」


お兄さんは私の手を振り払い、目にも止まらぬ速さで教会から立ち去った。私とテニーちゃんはただそれを呆然と見ていた。


とりあえず返して貰った剣を鞘に納めてるとテニーちゃんが口を開く。


「その人達………もしかして人形じゃ無いですか?」


そう言われ見てみると床に転がった人達の体内から綿が出てきている。確かによくよく見ると皮膚や目も全て本物の人間の物では無い。人形が独りでに動いて襲いかかってくるなんて明らかに可笑しい。


異常事態、夢に出てきたお兄さん、化け物じみた動き。やっぱりあの夢は本当にあった出来事で、この事件には魔法が関係している…?


そしてじーっと人形を観察していると人形の隣に何かが落ちている事に気が付く。


「これは……ペンダント?」


赤い石のペンダント。お兄さんが戦っている時に落としたのだろうか。ここに置いておくのもあれだし、とりあえず首に掛けて持っていく事にした。


そして二人で教会を後にすると街の景色は先程までと大きく異なっていた。テニーちゃんは驚いて腰を抜かしたようで、地面に座り込む。


「まさか私達が教会に居たこの短期間でここら辺一体が崩壊してるなんて…」


建物は崩れ、至る所で炎が燃えている。遠くから人々の叫び声や戦闘音が聞こえてくる。まるで戦争だ…


「アリスさん!上を見て下さい!」


テニーちゃんは教会の屋根の上を指さす。そこには赤いローブを羽織った謎の三人組が居た。彼らは屋根から飛び降りて私達を囲む様に着地する。


そしてその中の一人が口を開く。


「我等は王を抹殺するべく結成された正義執行機関の組員だ。王宮騎士である貴様らを殺す」


「正義執行機関?………つまりはテロリスト共って事ね」


「教えてください。どうしてこんな酷い事をするんですか!」


「問答無用」


男が合図を送ると他の二人はローブの中から剣を取り出す。そして私達に刃を向けて襲いかかってくる。


するとすかさずテニーちゃんは腰に掛かった二本の鞘から両手に一本づつ剣を取り出し、お得意の二刀流でローブの男達の剣を受け止める。


「この二人は私が相手します!アリスさんはそいつを!」


私は「分かった」と言い剣を鞘から取り出す。テニーちゃんは一流の剣士、テロリスト二人に負ける様な人じゃない。


「うおおおぉぉぉお!!!」


ローブの男に向かって走る。男に剣を振り翳すが男はローブの中に隠し持っていた杖で刃を受け止める。


そしておよそ人間とは思えない様な力で剣を跳ね返し、隙だらけの私のお腹に蹴りを入れる。


「ぐ……はぁ!」


次の瞬間私は5mも先の家の扉に叩き付けられていた。あいつは一体何者なんだ…


剣を杖にして必死に立ち上がろうとすると男は私に杖を向ける。男のローブ、杖、杖を向ける動作。その全てがまるで……魔法使いの様だった。


「ロブス」


男が静かにそう言うと杖は輝き、そして空中に紫色をした大円形の物体が出現する。


そいつは私に恐ろしく早いスピードで私を貫こうと飛んで来るが、事前にこうなる事を察知していた私は奴が杖を向けた瞬間から回避する動作に入っていたので何とか寸前で避ける事が出来た。


「ほう、俺がチカラを持っている事を知っていたのか」


「魔法……まさか本当にあったなんてね」


「だが貴様は俺に勝つ事は出来ない。今の攻撃で足を怪我しただろう?それでは次の魔法は避けられぬぞ」


確かに奴の言う通りだ。私は足を負傷しているし次の攻撃も避ける自信が無い。


だけども……私は騎士として、テニーちゃんの先輩として、ここで簡単に死ぬ訳には行かない。


しかしそんな事を思ったって足が上手く動かない。私には遠距離攻撃の武器や一瞬で距離を詰めるような術も無い。正にチェックメイトだ。


「ロブス」


策を考える時間も無いまま死の言葉は簡単に告げられてしまった。

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