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王宮騎士兼反逆者!  作者: 花時計
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第三話 暴動

「………はっ!?」


自分のベッドの上で目が覚める。さっきまでのは夢だったのか?何だか可笑しいとは思っていたけども……やけにリアルな夢だった。


私はベッドから起き上がってピンク色のカーテンを開く。太陽が眩しく、いつもの街並み。何の変哲もない普通の朝だ。


しかし人の数に何だか違和感を感じる。その理由に気付いた私は恐る恐るテーブル上の置き時計を見てみる。予想通り短針は理不尽にも九時を指していた。


「ち、遅刻だ……」


もうご飯なんて食べている時間も無い。急いで着替えてお城へ急がなければ!


下らない魔法の夢など忘れて全速力で職場へ向かうのだった。


………………


「おい、あいつはまだ来ないのか?」


「アリス・サスフィン。この城で働く人の中で最も抜けている奴だな。暫く遅刻なんてしなかったから油断していたが、健在だった様だ」


「まだ王様が来てないから良かったけど、バレたら絶対クビね」


近衛兵達が玉座の間で噂話をしていると急いで玉座の間へと続く階段を登る人物に気が付いた。その人物とは勿論私だ。


私は全身汗だくで膝もガクガクになりながらも何とかいつもの定位置に着く。良かった、何とか間に合った。


「おい、大丈夫か?今にも死にそうだぞ?」


「ハァ…ハァ……アベルトさん、お気遣い無く。こうなったのも自業自得なんで………ハァ…」


そうは言っても私の隣の近衛兵、アベルト・ドッグさんは未だに心配そうな顔でこちらを見る。彼は私の先輩であり誰にでも優しい人だが心配し過ぎなのが玉に傷だ。


必死に息を整えていると、玉座の後ろにある扉が大きい音を立てながら開く。そしてその中から大慌てで大臣さんがやってくる。


「大変です!例の反逆者どもがまた出現しました!」


反逆者の出現。それはこの王国に住む者達にとっては絶望の合図でもあり、同時に戦う者達にとっては今か今かと待ち続けていた言葉でもあった。平和を脅かす悪党共を殲滅したくてうずうずしてるのだ。


「A班は王の護衛。B班とC班は賊の排除を頼みます!場所は第七区の八、教会付近です!」


その言葉を聞くや否や私含むB班とC班は動き出す。無駄な動きは一切無くそれぞれ馬車へと乗り込み走り出す。一刻も早く奴らを倒さないとどんどん被害が拡張していく。それにいい加減反逆者騒ぎを終わりにしたいのだ。


それにしても私は初めて反逆者と対峙する事になるのだが、一体何故この三年間奴らを捕まえる事が出来ないのだろうか。ただのテロリスト集団、数も実力もこちらが圧倒的に有利。それなのにここまで国家権力に手を焼かせるのは一体……


「…魔法使い」


ふと今朝見た夢の内容を思い出す。まさか本当に居るとは思わないが、もし本当に魔法使いならここまで逃げきれたのも頷く。魔法なんてある訳ない、が。


「あのぉー、アリスさん」


「うん?なに?」


移動中に突然隣から声を掛けられる。その高い声に兎の髪飾り、そして私と同じぐらいの身長の金髪ロングヘアの女の子は私の親友のテニー・トラスパーちゃんだ。


彼女は実力を買われて十六歳という若さで騎士になれたかなりのエリートだ。見た目で言ったら私も彼女と同じぐらいの年齢に見えるのでよく実力派のエリートと間違われるが、実際はギリギリ試験に受かった程度のポンコツ派の愚民だ。


「その…第七区の八ってどういう意味でしたっけ」


そうだ、彼女はこの街に引っ越してきたばかりなのでこの国について疎いんだ。正直説明するのは得意では無いが、頑張って説明しよう。


「この国が正方形なのは知ってるでしょ?」


「はい。まるで人工的に作られたかの様な綺麗な四角ですね」


「そして均等に九つに分けられてて、左上が一区、その隣が二区って事なんだよ」


「なるほどー。じゃあさっき言ってた七区の八の後半部分はどういう事なんですか?」


「あれも単純でそれぞれの区を同じように九等分にしてるんだ。位置の情報を伝える時により分かりやすく伝える為だね」


「ふむふむ。大体理解しました!」


説明が終わると丁度目的地に着いた。今からここで戦闘が始まるのだ。住民の避難、標的の撃破、生き延びる事。考えなければならない事が沢山ある。


私達は馬車から降り、手分けして奴らを探す事にした。こちらは今現在合計八人しか居ないが、近衛じゃない方の騎士団もこちらへ向かっている様なので少々危険だがツーマンセルで動く事になった。下手に安全性を取って固まるよりも奴らを探し出す事の方が優先度は高いからだ。


私はテニーちゃんとペアを組んで颯爽と街の中を走る。何処に居るのか、何人居るのか、武器は何を持っているのか探るのが私達の仕事だ。


「あ!アリスさん!教会付近に居るって言ってましたしもしかしたら教会内部に潜伏してるかもしれないです!」


「わざわざ行き場の無い所に居るとは思えないけど…可能性はゼロでは無いね。行ってみようか」


この地帯では最も高く青銅で作られた教会を前にし、私達は覚悟を決めて息を飲んだ。

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