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王宮騎士兼反逆者!  作者: 花時計
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第二話 拉致

商店街を抜けてから徒歩二十分。やっと愛しい我が家に辿り着いた。


新築のまぁまぁ立派なログハウスで、庭では向日葵を育てている。一階には広々としたリビングダイニングキッチンに浴槽とトイレ。二階には二つの寝室と物置部屋、そしてテラスがある。


私はすぐさま鎧を脱いで普段着に着替える。一番動きやすく、リラックス出来る格好だ。


着替えた所でリビングにあるお気に入りのソファに寝転ぶ。寝転びながらやけに味のしないりんごをかじりって手の平の上の宝石を眺める。


宝石に詳しい訳では無いがこんな宝石は今まで見た事が無い。値段はそこまでしなかったので高価な物では無いのだろうが、何だか気になる。


ガラスの様に透き通る訳でも無く、綺麗に反射する訳でも無いのになんで買っちゃったんだろうなぁ。惹き込まれる…と言ったら良いのか。よく分からない。


「まぁいいや、お風呂にでも入ろう。………!?」


何の気なしにリビングから廊下へ出た瞬間、何者かに後ろからハンカチで口を押さえられる。動転しつつも何とか犯人の顔を見ようとするも、力が強くて振り返れない。


意識が朦朧とする。だんだん重くなってくる瞼を押さえられずに私は深い眠りについた。


…………………


「おい、お前の言われた通り連れて来たぞ」


「アー?なにかたのんだっけ」


「お前の予言とやらに出てきた奴だよ。りんごと宝石を買ったんだ」


「アー、そうかい」


「そうかいって…少しは興味を持てよ」


「うーん………はっ!ここは?」


目が覚めると私は研究室の様な場所の床で寝転がっていた。目の前にはさっき会った売店のお兄さんに黒と桃のダボダボパーカーを着た子供が居る。特に拘束はされて無いけど、これ逃げて良いのかな?


「目を覚ましたか。俺の名前はロイ。さっきは手荒な真似をしてすまない」


「な、何の為に私を…?」


「何と言ったら良いのか分からないが……こいつの占いでお前を連れ去れと出たんだ」


「う、占い?」


「実はこいつはな…」


「ハーイ。ジブンは魔法使いなんですよー」


少年がそう言った途端、空気が固まる。まるで理解が出来ない。


一体何を言い出すんだこの子は。私は魔法なんて非科学的な事を信じない主義だけどもそれ以前に目の前の誘拐犯が魔法使いだなんて言い出しても普通誰も信じないでしょ。


ふとお兄さんを見てみると"そりゃ信じる訳無いよな"と言うような目でこちらを見ていた。


気まずい雰囲気の中沈黙が続いたが、お兄さんが口を開く。


「お前の疑う気持ちは分かる。正常な人間なら誰でもそうだ。だが冗談でも何でも無く本当の事なんだ」


「……もしかして」


「ん?」


確信した。この人達は例の反逆者に違いない。


私を誘拐するにあたって平気で何個も法を破っているし、超エリート一流騎士である私を簡単に連れ去る事が出来ると言う事はかなりの実力者だ。


あと魔法を使えるなんて変な思い込みをしてる時点で決して正常では無い!頭おかしいイコール反逆者だ!


「ふん。反逆者達が一体私に何の用ですか?」


「反逆者……あー、世間ではそう呼ばれてるみたいだな」


お兄さんは拘束もしていないのに簡単に自分の正体をバラす。私を逃がさない自信でもあるのか?それともやっぱりあたおかなのか?


「お前が俺達の正体を知ってるなら話しが早い。頼みがあるんだ」


「た、頼み?」


彼の口から発せられたのは予想外の言葉だった。敵対勢力である筈の騎士に頼み?そんなの聞く訳無いのに…


「世間では知られては無いが俺達の目的はこの国の王を潰す事だ」


「!?王を…潰す?」


「そうだ。その為にお前にスパイを頼みたい。お前が王を嫌っている事は知っているんだ」


「え?」


「お前は王に対して不信感を持っている。そうだろ?今まで王のせいで失った大切な物が山のようにあるんじゃないか?しかし高い地位を得る為に仕方なく奴に尽くしている」


「あ、あの」


「俺達の仲間になってくれるか?」


「馬鹿じゃないですか?」


「そうかそうか。では早速………え?」


お兄さんは想定外だったらしくキョトンとしている。普通は断るでしょ。


それにさっき彼が言っていた話は全部デタラメだ。不信感も持ってないし割と慕っている方だ。大切な物も奪われてない。何を思ってあんな事を言ったのか理解に苦しむね。


お兄さんは怒りで拳を握りながらずっとこちらに背を向けていた少年の元へ歩く。そして低くドスの効いた怖い声で語りかける。


「おい……てめぇ…」


「ンー?なにー?」


「お前言ったよな!?売店でりんごと宝石を買った奴は王に大切な物を奪われているから仲間に引き込めるって!!!」


「アー……それ言った時復讐系の本読んでたから後半ゴッチャになってるネ」


少年が文章を言い終わらないうちにお兄さんは無言で彼にスピニングチョークを仕掛ける。絞め技を食らった少年は当然苦しそうにしながら床を手でバンバンと叩いている。


すると少年と目が合い、彼は叫ぶように私に話しかける。


「見てないで助けてクダサイ、そろそろ死にます」


しかし今は逃げ出す絶好のチャンスだ。少年には悪いがさっさと逃げ出そう。


そう思い背後にあった出口から逃げようとすると、足に何か違和感を感じる。何かが引っかかってる様な……


「って、えぇ!?わ、私の足に………根っこ!?」


訳が分からなかった。足の裏から根っこが生えて、地面に刺さっている。この光景は明らかに異常だった。


「ふっふッふっ。逃げ出そうナンテ思っても無駄ですヨ?魔法使いを舐めないで頂きたい」


魔法、確かにそれならこの理解不能な状況も納得が行く。しかし今はそんな事を考えている場合では無い。早く逃げなければ!


私はめいいっぱい力を振り絞って根っこを引きちぎる。


「ア、根っこが」


「うおおぉぉぉぉお!!!」


異常者共から逃げるべく、私は今まで走った事の無い速さで出口へ走る。そして遂にドアノブを掴んだ!

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