エピローグ
主人公ミカとミラのちょっとしたお話。
昔々、何もないこの大地に、ないはずの命が二つありました。
どちらも人の姿をしており、一人は男、もう一人は女です。
二人は、それが世の理かの如く身体を重ね合わせ、沢山の生命を生み出しました。
中でも一番最初に生まれた子に特に愛情を注ぎました。
彼女の名前はシルフィと言い、その世界の基礎を作り、今でもどこかで見守っているそうです。
そんな彼女は――
「――でしたとさ。おしまい」
しばらくして絵本の物語は終わった。
本を手にし、子供たちに読み聞かせをしていた少女はみんなに笑顔を向けた。
「今の物語が面白かった人は手を挙げて」
そういうと子供たちは皆、挙手した。
彼女は手がたくさん上がっているのを見て満足気な顔をしていた。
「ミラお姉さん! もっと絵本読んで!」
「一日一冊だから、また明日読んであげるね。楽しみにしてて」
「「はーい!」」
ミラは座っていた小さな椅子から腰を上げ、幼児学校の図書室に向かった。
次はどんな本を読んであげようか悩んでいるのだろうか、しかし表情は明るく楽しそうであった。
幼児学校なので建物はあまり大きくない、しかし子供達の声でにぎわっている。
「あ、ミカ! 学校に用でもあったの?」
彼女が意識を向けた先には幼馴染のミカが居た。
「校長にちょっとだけ頼まれてたんだ。 彼女にはたくさん仮があるから断れなくてな」
「そうなんだ、それじゃあまた後でね!」
「おう」
そういってミラは図書室に行って本を戻し、別の本を探す。
何となく次読み聞かせたい本は決めていたのか、探し物を見つけ取り出す。
少し古くて、彼女にとっては思い出の本。
軽く誇りをぱっぱと払ってあげる。
「あったあった、これにしようかな。 私の大切な思い出の絵本」
彼女は軽くその絵本を抱きしめて幸せそうな顔をする。
俺……ミカは二回にある校長室の前に来ていた。
少し年期を感じる校長室のドアを開けて入っていく。
「校長先生、物置の掃除と屋根の修理終わったよ」
窓の外を眺めてた小さめの魔女帽子を被っているブロンドヘアの女性が振り返る。
「いつもありがとうね、私は力仕事も苦手だし物置広いから掃除しきれないもの」
「息子なんだから。 それくらい任せて」
すごく見た目は若い美女だが、外見とは裏腹にかなりの長寿だ。
彼女は精霊族で、寿命が無い。
この世界は人間も精霊も魔族も獣人も、何もかもが平和に共存する世界。
だから、この学校に通う子供も様々。
しかし、平和といっても完全な平和は実現できない。
どこかで必ず悪いこと考えたり負の感情が起こったりもする。
俺は捨てられていた。
精霊の村の一番の大樹の根元に、丁寧に布に包まれて置かれていた。
その時拾い上げ、育てたのが彼女、学校の校長であり村長を任せられているクリス・ヒストリアだった。
あの時、彼女が見つけていなければ俺は死んでいたと思う。
だから彼女に頼まれたことは嫌と言うつもりはない。
少しでも力になれることが嬉しい。
「それじゃ、そろそろ帰りましょうか。 学校も終わる時間だし、帰ったら美味しいもの作ってあげるわね」
そういって椅子からひょいっと立ち上がり校長室から出ていくのを俺は着いていった。
クリスの料理はおいしいから、今日も楽しみだなぁ。
新しい物語を書き記していきます。