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Shine!!

 ユイの話によると、このタリナー本部には戦闘員は俺が来るまでロックしかおらず、あとはタリナーの脳を務める人物だけらしい。


 ユイの役割は、彼女自身は非力だが母の残した能力(パワー)により確約された安全で、隠密行動やサポートをすることらしい。


 このカプカムという都市の中でたくさんのタリナー支部があり、そこはほとんど戦闘員らしい。彼女は紅茶を飲みながら話す。


「今のカプカム守護のヤラーンにはみーんな不満だから、戦闘員が思いのほか集まっちゃったらしいの。でも、さすがに重犯罪になってる人身売買の証拠を超東京政府に送れば、政府が動いてヤラーンを処罰してくれる、って代表が考えたんだ。」

「じゃあもう仕事も終わりかぁ」

「ううん、ヤラーンの性格からすると全軍動員して抵抗すると思うから、きっと超東京と戦争状態になる。その隙に超東京に攻め込むって作戦」

「上手く行くのかなあ、それ」

「やるしかない、って感じかな」


 ドアが開いて少しふくよかで、40か50代らしい女性が入ってきた。電車とかでお菓子をくれそうな気の良さそうなおばちゃんって感じだ。こちらの元気が吸い取られそうな大きな声で話しかけてくる。


「ユイちゃんお帰り! なあにその男の子? もしかして彼氏かい? もーいるんならオバちゃんにも教えといて欲しかったわ! それとも今日は挨拶しにきたのかい」

「もうオバちゃん、この子は和泉君って言ってロックの相棒で、このタリナーの新しい戦力なの」

「なんだいユイも年頃らしくようやく男の子連れてきてくれたかと思ったのに! ロックはいつも違う女の子連れて歩いてるしオバちゃん心配だよ!」

「それよりコレ」


 ユイが証拠の紙をオバちゃんに渡す。


「あらあ! ついにやったのね! 明日にはもう運搬班に超東京政府まで送らせるわ。ありがとうユイちゃーん!」

「違うよ。コレはロックと和泉が取ってきたんだ。」

「あらぁ! ありがとね和泉くぅん!」


 バタバタと腕をこちらに振るオバちゃん。俺は戸惑いながら


「いえ、この程度…… その、失礼ですがあなたは?」

「ああ、あたしね、タリナーの代表してるの!」


 何というかこんな人がこんな組織の代表なんて意外だ。この人にオバちゃんは失礼だろう。


「あ、あのお、お名前は?」

「あたしね、大葉って名前なんだけど、大葉さんって呼ばれても、オバさんなんだか大葉さんなんだか、なんなら大おばさんにも聞こえてくるし、みんなからオバちゃんって呼んでもらってるの! 和泉君もそう呼んでね!」


 オバちゃんはドタドタ走りながら


「んじゃ今からお夕飯の支度するからのんびりしといてね!」


 と言いながら別のドアに向かう。するとドアが空きロックが顔を出した。


「オバちゃん! 俺明日の朝まで帰らねえから飯も要らねえ!」

「あんたまた女遊びかい? いい加減1人の女に落ち着きなよ。ほらコレいつもの!」


 そう言いオバちゃんはロックに小瓶を投げた。ロックは受け取り


「あんがと! でもちゃんと全員愛してるから大丈夫だって!」

「まったくもう……」

「和泉! お前もついてくるか?」

「えっ、俺にはまだ早いかな……」

「そうよ! 和泉君にはまだ早いわ! ああいう遊びはもうちょっと大人になってからでいいのよ! 今は健全な恋愛をするべきなの!」

「ちぇっ、まあ興味持ったら言えよ!」


 そう言いロックは部屋にまた引っ込んでしまった。ユイもオバちゃんを手伝うと言ってついて行く。


 やる事もないし、疲れも溜まっているのでソファで晩御飯まで寝てしまった。



 翌朝、朝食には他のタリナーの人員も集まった。

 俺はまったく知らない人の中なら人見知りにならないが、既にユイやロック、オバちゃんや、ぎりぎりモリと言う人とも喋れるので逆に人見知りを発動させてしまい無言だった。


 階段を降りてくる音がしてロックが姿を見せる。

 ミオとホテルから出るところをリンに見られて朝から修羅場だったと皆んなに話し、笑ったり、やれやれと言った声が聞こえる。


 また階段を降りてくる音がしてボサボサの黒く長髪の女性が現れた。オバちゃんは朝から明るい声で


「あら? ロックの彼女かい? ここ入っちゃダメなんだけど」

「俺はこんな女知らねえぞ! リスカ癖のある女とは俺は関わらねえんだ!」


 よく見るとその女の手首にはたくさんの切り傷がある。電車で見かけるとなんだか嫌な気分になるやつだ。


 その黒髪の女はナイフを取り出し左人差し指の先っちょを切り落とした。食卓にどよめきが起こる。その指はオバちゃんに向けられた。


「なんかヤバいぞアイツ!」


 ロックが叫ぶがもう遅かった。

 女の人差し指の傷から一筋の光が出て、オバちゃんの額にあたり後頭部まで貫き、通し後ろの壁を溶かした。


「オバちゃん!」


 ユイが泣き叫ぶ。

 女は胸元のインカムマイクを触り


「タリナー代表死亡。残りはどうします?」

「消せ」

「わかりました」


 女が俺たちの方を見る。ロックはすぐさま、昨日バスローブを点検していた部屋に飛び込んだ。

 女はそれをチラッと見るがまたこちらを向き直し、今度は両手の指の先を切り落とし、身体中にも切り傷をつけ始めた。そして冷たい声で


「逃げないやつから殺す」


 俺はみんなの方を向き叫んだ。


「こいつ傷から光線をだすぞ!よけろ!」

「そう、この能力(パワー)『Shine!!』でクズだった私は輝ける」


 そう言い女が両手を頭の上でクロスさせる。俺は傷の位置を考え移動する。

 その瞬間女の指以外の傷から一斉に光線が出た。


 光は見てから避けれるものではない。俺は事前に避けた位置が正解だったので光線を喰らわずに済むが、服に守られたユイ以外は全員光線に当たり、身体が溶け血の海になる。貫通した光線は壁や床をも溶かす。


「能力持ちが2人……」


 女はつぶやきながらユイに左手を向けて光線をだす。しかし服が全ての光線を逸らす。顔にも光線は飛ぶが、なんと服の布が顔を守るように伸び光線を逸らした。


 舌打ちをした女はナイフを右手から左手に持ち替え、次は右手を俺に向ける。俺は反復横跳びを思い出しながら左右に飛び、傷口が俺に向かないようにしながら、女とのキョリを詰める。


 女が大きく跳躍した。それを目で追った一瞬を女は見逃さない。光線が俺に当たる。しかし道着に穴が開くだけで俺の身体には火傷の跡すらつかない。


「威力が足りない?!」


 女が絶叫する。俺はキョリを詰めると女はまた飛ぶが、逆に壁の隅に彼女自身を追い込んでしまう。俺はここぞとばかりに駆け寄る。


 すると女は自分の右手首をナイフで斬り落とした。右手首の切断面が俺の顔面に向く。


 俺は女の頭部めがけて拳を振り下ろすが、女の右手首が眩く光る。


 間に合わなかったか?


 拳が女の頭蓋骨を砕く音が響く。


 俺はどうやら生きている。光線が顔面に届くまでに攻撃を当てれたのか。しかし光の速度を考えると本当に紙一重だ。


「当たったかと思っちゃった」


 ユイの震えた声。彼女には何もできない故、余計心配だったのだろうか。


「俺も死んだと思ったよ」


 考えれば考えるほど当たっていたのではとゾッとしてしまう。ドアが開いて、バスローブを身につけたロックが現れ部屋を見渡す。


「クソッ! 遅かったか……」


 ユイが部屋を見渡しながら泣き始める。

 ロックはクソッと叫びながら壁を殴る。


 俺はなんて言えば、どんな顔をしてここに立っていればいいかわからなかった。

投稿時間に迷っています。

作品の行き先は迷ってません。

人生には迷ってます。

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