CHANGE!!!!
ロックは低空を高速で飛び、恵体とは言えないその身体に見合わないスピードで走り続ける敵に追いつきそうだ。俺も少しずつだが距離を詰める。
敵は服を売っている露店に飛び込んだ。ロックはそこめがけて背中のスラスターを一気にふかす。
その敵はまたも不思議なことにハンガーを握りしめていた。それをロックに向かって投げる。
先ほどの爆弾トマトを思い出したのか、ロックはスピードを落とし大きくそれを避けた。そして再び敵に向かって剣を振りかぶりながら突撃するが……
俺は見た。なんと先ほど敵が投げたハンガーがブーメランのように戻ってきたのだ!
「ロック! 後ろだ!」
ロックはなんとか反応しスラスターが一気に吹き、後ろから迫るハンガーを避けた。
そのハンガーはブーメランのような動きをしたが、アボリジニの使うそれとは違い、打撃を与えず露店の支えを綺麗に切断した。
敵はハンガーを2本両手に持ち走って逃げ出す。だがロックは高速で先回りし目の前に立つ。
ロックは右腕の剣を振り下ろすが、敵はハンガーでその剣の動きを受け流すように弾いた。
間髪入れず左の剣、右の剣と交互に襲いかかるも敵は全てハンガーで受け流していくが、ロックの方が上手のようで敵の動きはドンドン遅れていく。
この間に俺は、敵をロックとはさみうちに出来る位置に向かって走り出す。
すると敵は両方のハンガーを投げ出し大きく後方にジャンプする。ロックはハンガーを2本共避けるが敵との距離が空いてしまう。
ロックは直ぐに距離を詰めようとするが、敵は既に露店のビンを取りこちらに投げていた。ロックがビンに直撃してしまうと、けたたましい音と熱と光がビンの中から出てきた。
ロックが吹っ飛び倒れる。敵は振り返り逃げようとするが、正面に居たのは俺だ。もう既に俺の攻撃範囲に入ってる。
敵は黄色い歯を見せて悔しそうな顔をする。その顔に向かって俺は言葉を吐く。
「もうどこにも行かせない。どの露店で万引きもできない。あんたが使うものはなんでも武器になるんだな。子供の喜びそうな能力じゃないか」
「そうさ、これが俺の能力……『CHANGE!!!!』さあっ!」
敵の左足の甲が俺の顔面めがけて飛んでくるが、それよりも早く敵の下腹部に俺の左拳による突きが決まる。
手の甲の3分の2ほどまでが敵の下腹部にめり込んだ。敵は露店に吹っ飛び派手に商品が飛び散る。店主は走って逃げる。
ロックは既に立ち上がり始めていた。俺とロックは敵の目の前まで歩く。
敵は血を吐きながら勢いよく立ち上がる。だがその体は右に傾いており、息もゼイゼイと荒く弱々しい。その雰囲気に見合わない威勢の良い声で
「動くなあ!あんたらが欲しいのはこれだろ!」
そいつは何かの紙を持っていた。露店の商品を払いのけて展示台の上におき、その紙の上にトマトを置き、ヘタを掴んだ。
「ヤラーンからツネヒコへの手紙!これの回収が俺の仕事…… あんたらもこれが欲しいんだろ? だが、俺の方に向かってきたらこのトマトを爆破して消す!」
ロックが少し身体を動かすと
「動くなっつってんだろマヌケ!爆破すんぞ!」
「ロック、あいつ本気だぞ」
「こりゃかなりピンチだぜ……」
マズイ。焦る俺の視界に映ったのは、腰まで届きそうなピンクの髪をたなびかせて、敵に向かって歩く1人の小柄な少女だった。
その少女はどんどん敵に近づいて歩いていく。
「なんだこの女! 近づいてくんじゃねえ! ぶっ殺すぞ!」
敵は商品の中からネギを取った。そしてネギの枝分かれした股の部分を銃のように持ち少女に向ける。おそらく奴が持ったことで実際に銃になっているのだろう。
「来るなっつってんだろぉ!」
少女は敵の怒声を聞いていないかのように、地面についてないような軽々しい足つきでどんどん敵に近づきもう目と鼻の先だ。
「じゃあ死ねや!」
ネギの先が光り銃声がする。
だがなんと、銃弾は彼女の着た白いワンピースの布の上を滑るように軌道を変えそれたのだ!
敵は口をぽかんと開け驚愕する。
敵がフリーズしてる間に少女は紙を取ってしまった。そしてその真っ赤な口紅の塗られた唇を開き声を発する。
「これ、ちょうど欲しかったの。ちゃんと持ってきてくれてありがと」
そう言うと踵を返して歩いて行ってしまった。
呆然とした敵だったが思い出したように彼女を追いかけながら怒鳴る。
「ま、待ちやがれ!」
その瞬間彼の体が頭頂部から股間にかけて真っ二つに分かれて倒れる。
後ろには鮮血滴る剣を持ったロックが立っている。見事な切れ口だ。こっちを向いてヘルメットを脱ぎ俺に言う。
「今回の仕事は完了だ。んじゃタリナー本部に行こうぜ」
「おう……って待てよ、あの子は誰なんだ?」
「本人に直接聞けば良いじゃねえか」
「え?き、聞いて良いのか?」
「なんだ美人だからって緊張してんのか?」
俺はムッとして、歩いている彼女のとなりに並び声をかける。
「君、誰なんだ?なんか銃弾くらってなかったし、その紙欲しがるって……」
「キミこそだれなの?」
「あ、俺は和泉って言って、言ったらまあ、あのロックの部下ってとこかな」
「へえ、じゃあタリナーの一員って事ね。あたしは佐久間ユイ。まあ、詳しい事は本部着いてから話そうよ。これからよろしく。」
彼女はそう言いながら俺に手を差し出してきた。
俺は彼女の赤い瞳を見ながら握手を交わす。
その時俺は暖かい気持ちになれたんだ。
「手冷たっ」
彼女曰く俺の気持ちと体温は連動してないらしい。
3人は2階建てのコンクリートでできた殺風景な建物に入った。その中は居酒屋らしく畳と机と座布団が置かれてあり、なんとなく安心できる雰囲気だ。
ロックと佐久間ユイは店主に声をかけると店の人しか入れないスペースから関係者以外立ち入り禁止と書かれた階段を登る。
2階は厨房だったが、登ってきた階段とは別に降りる階段があり、それは一階のデッドスペースを通り地下まで続いた。
そこは外見から想像のつかないほどのスペースの部屋で、ドアがいくつかありまだ部屋はあるようだ。
この部屋の端では丸机を4人で囲って話し合いをしている。
ソファから上体を起こしながら筋肉隆々の男が話しかけてきた。
「おうユイにロック! 帰ってきたか! そいつは誰だ?」
「おはようモリ。コイツは和泉、今日から俺の相棒だ」
佐久間ユイが俺に意地悪そうな顔で言う。
「良かったね。部下じゃなくて相棒だって」
ロックとモリの会話は続く。
「和泉ぃ?たしかにガタイはいいけどよお、ホントに強いのか?」
「おいおい、ツネヒコにとどめをさしたのはコイツだぜ?」
「マジかよ!またタリナーが強くなっちまったな」
ロックがスーツを脱ぎ、さっきモリと呼んだ男の向かい側のソファにパーツを投げながら言う。
「んじゃ点検するからいつも通り手伝いよろしくなモリ」
「ええーめんどくさいって……」
「今の彼女、誰のおかげで出来たと思ってんだあお前」
「チッお前に借り作っちゃダメだなやっぱ」
2人はドアを開け別の部屋に行く。ドアを閉じる前にロックはこちらを向き、ニヤッと笑いながら
「まあ、くつろいでけや和泉」
そう言ってドアを閉じた。
会議をしている4人はすごく話しかけにくい。実質今部屋には俺と佐久間ユイの2人だ。
彼女はソファにかける。俺は彼女と話をしようと思い向かい側に座って彼女の事を見る。
よく見ると彼女の着る白いワンピースはおかしかった。そもそもワンピースか怪しい。それは一枚の白い布を身にまとっているようで、体の動きに合わせて形を変化させているようだった。
その布はカーテンのレースのように後ろが透けて見えるが、彼女の体の部分だけは白く濃くなり何も見えない、だがその身体の流線型のラインは隠せていない。
「何見てんのよ」
また意地悪そうな笑顔でこちらを見ながら話してくる。俺は素直に疑問をぶつける。
「その、佐久間の服、なんか凄いよな」
「ユイでいいよ、みんなそう呼んでるし」
「ああ、ユイ、君は能力持ちなのか?」
「ううん、この服は死んだママの能力」
「あっ、その、ゴメン」
彼女は優しい笑顔で話す。
「良いんだ。私ママの事覚えてないから。物心ついたらコレ着てて。ママもタリナーの一員だったらしいんだけど、私にこの服を託して死んじゃったって皆んなが言ってたんだ。だから、わたしには能力は無いんだ。」
「そ、そうなのか」
「和泉クン、ツネヒコを倒したんだって? 凄いね」
「でも、俺今記憶喪失らしくってさ」
今まであった事を話した。目覚めてから何があったか、超東京に行くためにロックについて行ってる事も、ただ2015年から2700年まで時間を超えたってことは伏せておいた。
「ーーでタリナーに入ることになったし、これからよろしくなユイ」
「うん。よろしくね」
ネット小説という媒体での表現は初めてなので至らないところがたくさんあるとおもいます。
一応小説家になろうでのルールは調べてから書きました。
できれば感想やご指摘をコメントやTwitterでもいいのでお伝えいただきたいです。