BATHROBE!!
アジトであるモールの中に入ると早速5人のお出迎えがきた。素手の者、短剣や棍棒を持つ者がいるがそれらが役に立つことは一切ない。
ロックが一歩前に出る。
「どうやら早速『バスローブ』の出番みてえだな」
ロックが腰を低くして重心を落とすと脚のスラスター、続いて背中の物も吹き始める。身体が浮いた次の瞬間背中のスラスターが火を吹き、ロックが前方に吹っ飛ぶ。
いちばん手前にいた人間が反応もできず、右肩から左わき腹にかけて真っ二つになる。スラスターは小さな爆発を起こしロックは移動する。
なんと最初に斬られた人間の上半身が地面に落ちる瞬間までに、ロックは他の4人にの身体に死への斬撃を食らわしていた。
「どうよ?」
少し赤色に染まったスーツ『バスローブ』を身にまとったロックは両方の剣から血を振り払いながらそれだけ言ってきた。
ハッキリ言って俺には追いつけるか怪しいぐらい速かった。スーツ、圧倒的だ。おそらくロックのバスローブだけが特別強く、スーツ全てがこの強さではないのだろうが、こんなものがあるなら能力に意味があるのだろうか?
奥に歩いていく。その後もお出迎えが続くが、全て死体は見事に真っ二つか、首がはねられてる。四肢を欠損するようなことはなく、皮一枚残る事も無い。熟練の技だ。
ワンバラ団ボス、ツネヒコのところに行くまでに前腕部についた銃が撃たれることはなかった。ツネヒコは奥の空間から唐突に現れた、まるでそこから先に行かせたく無いかのように。
俺は思わず身体が力む。ロックは右手に持った剣を突き出しこう言った。
「お前がワンバラ団頭領ツネヒコだな。日頃の横暴、特にここカプカムの守護ヤラーンへの人身販売は許されねえ。死んでもらう」
「ケッ2対1かよ。まあ、スーツ着た奴に、お前は報告のあった能力持ちか? まあどうせ高能力じゃねえだろ」
「いいか和泉、奴は高能力持ちだ。今までの雑魚とは違って何かヤバい能力を持ってるし身体能力も高いかもしれねえ。絶対に油断すんじゃあねえぞ」
「ああ」
ロックの方を向いて返事をして驚く。なんとロックの右後ろすぐの上空にツネヒコが居たのだ。ツネヒコは空中でサッカーボールを蹴るようにロックの頭を蹴り飛ばす。
「何い?! お前!」
俺は声を上げながらツネヒコに飛びかかり蹴りを放つが次の瞬間にはそこにもう居なかった。ロックへの追撃に行ったのだ。
ロックはツネヒコの蹴りに吹っ飛んだが倒れる事無く踏ん張っていた。だがその右斜め前にツネヒコが突然現れる。
ロックは咄嗟に反応し左の剣で斬りかかるが、ツネヒコの左拳が先に頭部に襲いかかる。そして剣がツネヒコを斬る時にはツネヒコはその位置にはおらずロックの左後ろにいた。
俺は思わず叫ぶ。
「そいつは瞬間移動をしているぞ!」
瞬間移動することは分かってもどこに来るかわからないので援護の仕様がない。
ロックは後頭部に右回し蹴りを食らい膝をついてしまう。
「それは分かってるけどよぉ……」
どうやら同じような気持ちらしい。
ツネヒコの姿が消えた。どこだ。その瞬間俺の頭頂部付近に衝撃が加わる。視界が揺れる。敵の次のターゲットは俺だ、マズイ。
次々に死角から蹴りが、拳が飛んできて全て食らってしまう。避けたりガードができない。
ドンッと轟音が響く。ロックが左腕の銃を撃ったのだ。だがツネヒコは瞬間移動で避けてしまっていた。
「あっぶねえなあ!」
ツネヒコは苛立ちながら叫びロックに標的を変え、1人リンチを再開する。
「そうだ!」
俺は思わず口に出し、このモールの入り口に向かって出来る限り全力でダッシュをした。
するとツネヒコは予想通り俺の右斜め前方の上空に瞬間移動してきた。
そう。俺がダッシュしていると後ろから攻撃をしかけようとしても当たらないか、いまいち力の入らない間合いでしか攻撃できないので前方、見える位置に来ざるを得ないのだ。
ツネヒコは空中で前蹴りを放つが、俺はそれを両腕でガードする。そして一歩詰め寄り左フックを……瞬間移動で避けられる。
マズイ、今の俺は完全に立ち止まっている。またあらゆる方向から打撃が飛んできた。
視界がかなり揺れる、もう立ってられるか怪しい。そしてツネヒコは俺のすぐ前方、ほぼ真上に現れた。自信満々の顔でツネヒコは右脚でストンプを俺の額めがけて放つ。
「とどめぇっ」
その瞬間俺の筋肉が唸る。今までに無いスピードで腕が動きガードする。そうそう、そうだ。身体の動かし方ってこうだ。
ツネヒコのストンプはガードするが地面が衝撃に耐えられず崩れた。俺は暗闇に落ち、底を転がった。地面が荒いコンクリ、ここは地下駐車場だろうか。
「クソッ見えねえ!」
ツネヒコの悔しそうな声が聞こえる。対照的にロックは嬉しそうな声で
「お前今、見えねえって言ったな! 見えないって事が、困るって事だな? 見えねえと瞬間移動で追えねえんだな!」
「だったらどうした!」
ロックは大きくスラスターを吹かせ高く飛び上がり頭を下にする。思わぬ移動にツネヒコは瞬間移動しての攻撃をからぶる。
ロックは左腕で地面に銃撃をし穴を開けそこに飛び込んだ。ツネヒコはなぜか追わない。
俺はロックと合流する。ロックはヘルメットで見えないが、口のある位置に指を当てて近づいてくる。静かにしろと言う事だろう。剣は既に腰に納めていた。
「いいか、指向性スピーカーがあるから、声で場所がバレないように俺だけ喋る。俺のバスローブにはセンサーもあって、これであいつの位置を特定し、銃撃して倒す。」
ロックが音を立てず移動して左腕を右手で支えながら構える。左腕が光り轟き、天井が崩れる。
しかし次の瞬間ロックの真上の天井が崩れ瓦礫が彼を襲う。思わず身体が倒れてしまう。すぐに瓦礫をはねのけ立ち上がるが、次々と天井が崩れその瓦礫がロックに向けて飛んでくる。
暗かった地下が一気に明るくなってしまった。ロックが立ち上がり、その前方にツネヒコが立つ。
「不意打ちも視界を封じる作戦もこれで失敗だ!」
言い終えた瞬間ツネヒコはロックの右後ろに瞬間移動した。
だがなんとバスローブの全身にある小型スラスターが吹き身体がコマのように回り、左腕の銃口はツネヒコを捉えたのだ!ドンッと銃声が空気を揺らす。
「いい加減! お前の移動パターンも読めてきたぜ!」
確かに銃弾はツネヒコの下腹部に命中したが、顔が痛みに歪みながらも
「腹に1発程度おおお!」
なんとツネヒコの右ストレートがロックの顔面に決まる。パターンという弱点は意識すれば変える事ができる。これでロックの有利は無くなった。
ロックは殴られた勢いで後ろに倒れてしまう。倒したと判断したのか、ツネヒコがこちらを見る。
大丈夫だ。自分に言い聞かせる。俺には作戦があるし、何より身体の使い方を思い出してきたんだから。
敵が強くなりましたね。
どんどん強くしていくつもりです。