表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/19

出会い

「あ、これ服と下着です。こんなんしかなかったですけど……」


 服はちょうどその部屋に飛び込んできた若者が持ってきてくれていた。なぜか道着だったが。これを着るのは中学の体育で柔道した以来だろうか。まあこれからすることにはピッタリの服装だ。


村長が横から心配そうに言う。


「相手は中能力持ちだ! キミがもし低能力持ちなら、いや中能力でもさっきまで倒れてたしね、記憶も無いじゃないかね! まともに戦っても勝てないね!」


 俺は帯の締め方に苦戦しながら話す。


「大丈夫ですって!最初のこういうのは案外どうにかなるんですよ!勝っても負けてもなるようにーーダメだ結べねえ!助けてくださぁーい」

「わかんないですか?こうですよ」


 結局帯は若者が締めてくれた。そして輝いた目でこちらを見て言う。


「じゃあ頼みます!このバキバキの筋肉、きっと勝てますよ!」

「任せとけ!」

「おいキミ……」


 若者は俺を信用してくれたようだ。俺は走って部屋を出て大勢の気配のする方へ走る。村長も走って追いかけてくるがすぐに見えなくなった。


 身体が異常に軽いのだ。いままでより筋肉がガッチリしてるのは若者の発言でようやく気づいた。

 しかしその筋肉は機敏な動きを邪魔しないようで、今なら軽々と100メートルを5秒フラットで走り抜けれそうだ。やはり俺は能力を持っているということだろうか。ウキウキする。


 しかしここで少し冷静になると肝が冷えてきた。相手は本物の殺人鬼なのだ。恐怖で足を止めそうになるが、脳の興奮と、だからこそ相手を許してはならないというほんの少しの正義感が走るのをやめさせない。


「あんたが取り立てにきた中能力持ちか」


 病院を出て40メートルほどのところに、その210センチメートルはあろうかという大男はいた。髪は後ろでひとくくりにされて、髭は顎の近くまで伸びてるが、逆に顎にだけは生えていない。

 5人ほどガラの悪い奴を引き連れていたのでそいつらが低能力持ちだろう。


「そうだ。俺が……」


 俺は話を聞かずに1番手前にいた低能力持ちまで跳び腹に足裏で蹴りを入れる。


「ガバァッ」


 口から何か飛び散る。そこまでするつもりは無かったが内蔵が砕け散ったのだ。吹っ飛んだそいつはその直線上にいたもう1人も吹っ飛ばした。


「ブゲェ……」


 2人は倒した。後で思えば不思議なことに、確実に1人は殺しているのに何も感じなかった。死人になんの感情も持たず、残りを見る。大男は呆れてるんだか怒ってるんだかなんとも言えない表情だ。

 低能力持ちが怒り心頭でこちらに走ってきて右腕を大きく振りかぶり殴ってくる。

 その右拳に俺は左拳をぶつけた。さっきの2人を倒してわかった。俺はこいつらより格上だと。肉が飛び散り骨が砕ける。相手の左腕が肘近くまで潰れた。


「うああああああああ」


 そいつは叫び転がった。完全に戦意は喪失だろう。

 しかしすかさずのこりの2人が同時に攻撃を仕掛けてきた。左から中段蹴り、右から上段蹴り。普通回し蹴りなんて片手ではガードできないので有効な戦術だろう。


 普通、つまり同じレベルならだ。おそらく俺はこいつらより上の能力持ちだ。両方の蹴りに力を入れて肘をぶつける。膝の骨を2人のスネにあたる。木の枝を折るような軽快な音がなる


「ぬぐぁ!」「ぎぃゃ!」


 2人の脚が折れた。バランスを失い倒れる前に左の奴に右拳、右の奴に左拳を当て気絶させる。しかし加減を間違えて顎の骨が砕けてしまう。


「格下相手にイキるのもそんぐらいにしときな」

「あんただってこの村の人相手に、同じだろう?」

「あ?」


 どうやら俺の図星をつく発言でキレてしまったようだ。大男が両腕を頭の高さ辺りまで上げ近づいてきた。気迫が変わる。

 次の瞬間真上から手刀が降りてきた。


 さて、どのくらいの攻撃か。俺はまず両腕でガードし受ける事にした。筋肉に拳が打ち付けられる。


 なるほど……思ったより『痛い』が、コレは食らっても『ダメージ』にはならない!


「なるほど、こんなもんか」


 俺はそのセリフをさきに大男に言われてしまう。


「やるじゃねえか小僧。名前は?」

「島村和泉だ」

「そうかいイズミ君。んじゃお前を殺すこの俺の名前を覚えとけ。俺の名は……」


 間違いなく油断している。この瞬間に俺は大男の懐に潜り込んで掌でボディーブローを繰り出した。まるでビンタの様な音がなるがダメージはその比ではない。


「ぐばぁっ」


 血を吐きながら吹っ飛んだ。どうやらテキトーに掌底をボディーに入れてこの威力なら相当俺は強いようだ。少し自惚れているところに水をさす声が。


「イズミ君大丈夫かね!」


 今さら来たのか村長。その一瞬の油断を次は俺が大男に取られた。大男の足の裏が俺の胸骨に当たる。大男のヤクザキックが決まったのだ。胸が圧迫されおもわず咳き込む。


 吹っ飛ばされ病院の壁にぶつかり、背中あたりの壁が崩れる。

 やっぱり、痛いけどダメージにはならない。


 足元の壁を蹴って大男まで跳躍する。壁は瓦礫となり地面を転がった。思いの外飛んだ。浮遊感が身体を包み、顔には向かい風、いや、自分が高速で宙を飛んでいるのだ。そのスピードプラス右腕のスピードで顎めがけて拳が飛ぶ。


 肉の爆ぜる音がして、近くの民家に大男の顎だけが残り、村の外に吹っ飛んで行ってしまった。


「おお!やったぞ!」「イズミってやつだ!」「クソ野郎が吹っ飛びやがった!」


「イズミ君……」


 村長が嬉し泣きしそうな顔でこっちを見ていた。やっぱり良いことすると気持ちが……


「ーーさんがやられたんですよぉ!イズミって奴に!かなり鍛えられた中能力っぽくて」

「何話してんだあ」

「ピィ!!」


 蹴って吹っ飛ばしたザコに吹っ飛ばされたザコがまだ生きていたらしい。トランシーバー片手に話していた。慌てながら、でも自信満々にザコらしく話す。


「もうお前の事はボスに報告済みだ!俺たちワンバラ団にお前は殺される!」

「フフフ、フフフハハハハハハ!」

「……はぁ?」


 本当に嬉しかった。RPGゲームや少し古めの漫画の第1巻みたいで。だから思わず笑ってしまった。これからどんな敵がいるんだろう。どんな組織が?!


「じゃあそのワンバラ団、俺が潰す」


 実際俺はこのとき調子に乗っていた。


「イズミ君!ワンバラ団のボスはね、高能力持ちなんだ!今の君が行っても負けてしまうからやめておくんだね!」


 村長の制止も全く聞かないほどに。


「おいザコ、お前達の団はどこにある」


 実際この団自体はたいしたことなかった。


「とにかく、あっちの方角に迷わず歩いてくんだ。だがなあ!こんなに親切に素直に敵対してるやつが教えてくれるってことはどういうことか考えるんだなあ!」


 この先に進んでいった未来。


「そうか。じゃあ村長、世話なったな」


 それがどれだけ苦難の道か知らずに。


「待たんかねイズ「頑張ってくれー!」「任せたぞー」「ありがとう!」


 かき消された村長の声を聞かずに進んで村を出ていく。そしてその方向にただただ歩くだけだった。



ーーーーーーーーー



 9時間昼ごはん以外止まらずに歩き続けたことはあるだろうか、疲れるってより精神的にくるものだ。とにかく考え事をする。


 ここはずっと低い草でたまに高い木でサバンナみたいなところだ。ここは日本ではないのだろうか。

 村には見たことのあるような木は植えてられてたが、街灯は無く道はコンクリートでも無かったし、いくつかの建物の前にはランプがつけられてた。

 電気がないのか?異世界に来たのか俺は?だがトランシーバーはあったぞ?


 幸いにも考え事は山ほどあった。だが考えても答えは出ない。そう、1人では……


 ブロロロロロロン


 重低音を響かせバイクが近づいてくる。頭の悪い音のバイクではなかった。思わずその音の方を見る。その黒く輝く鉄塊は俺の隣に止まった。


「おい! どこに歩いてんだ?」

「ワンバラ団ってのを潰しに」

「ハハ! ちょうどいい! 後ろ乗りな」


 そのバイクに乗っていた長身の青年。金髪で全体的に長くは無く、前髪は上げられている。タンクトップを着ており、その実用的な筋肉のみ残された見事な腕を露わにしている。彼の左手が差し出された。


「俺、ロック。よろしくな」

雑魚戦は書いてて楽しくないですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ