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壊れた心のコンパス

「ホゲェ! 意識が飛んでた! 敵はどこだ!?」

「あ、おはよ和泉。もうロックが倒したよ」

「え、おはよ」


 気絶している間に全て片付いて、俺は車の助手席に乗せられていたらしい。


「ようやく起きたか、もうトツカ森林地帯出ちまったぞ」

「え、もう終わりなのか」

「まあ、今出たばっかでまだカフークの村はずれだけどな」

「あっ! 建物が見えてきたよ!」


 村の建物は基本木で出来ていて、近代的でも豪勢でも無い。だが、どこまで行っても建物が立ち並び、だんだん人通りも多くなる。そこで俺は1つ疑問が生じてきた。


「なあ、ここって村なんだよな」

「ははあん。異様にデッカくてビックリしたんだな。このカフーク村は村にしては人工が多いし割と発展してるんだ。理由は3つあってな。1つは漁業がかなり盛んで食糧事情に困らない。もう1つは、ハマナ大工業地帯と渡船で濃密な関係を築いてその利益を分けてもらってる。んで最後の1つだが……」

「あ、デッカい鳥居が見えるぞ!」

「お、鳥居なんて名前よく知ってんな。あれが最後の1つの理由、海老神宮だ。近くはお土産屋や屋台がいっぱいだ。陰陽師もいるぜ」

「ねーねー、海老神宮にお参りしていこうよ」

「ユイは屋台で食べ物欲しいだけだろ」

「エヘヘ、バレたぁ?」

「そんじゃ、今日渡船の予約したら明後日の便には乗れるだろうしよ、明日の朝に行くか!」

「うん」

「ハーイ」


 船の予約をした後、カフークの名物のフニャフニャうどんを食べてから宿に行った。ユイは、コシのないうどんって邪道じゃない?! これはこれで全然美味しいけど、と言いながら3杯食べていた。


 翌朝俺たちは海老神宮に向かった。鳥居までは屋台が大量に整列していて、朝ごはんにベビーカステラやういろうを食べ歩いた。しかし海老神宮の敷地内に入ると屋台は一店も無くなり、一気に神聖な空間になる。

 海老神宮は俺の生きていた現代の時代の神社と全く同じ作り、仕組みだった。手と口を水で清めて、お賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼。その前にロックはこう言った。


「いいか? 神様にはお願いするんじゃねえぜ。誓うんだ。勝たせてくださいとかじゃなくて、勝ちます。とか、合格させてください、じゃなくて合格します、だ」


 だから俺は神様に誓った。自分の時代、2015年に帰りますと。


「ね、和泉は何を神様に誓った?」

「ユイこそなんだ?」

「えーっと、それは、乙女の秘密」

「じゃあ俺も秘密だ」

「なにそれー」


 会話に割って俺に声がかかった。


「そこの君」

「え、はい? 僕ですか?」

「そうです。私ここの神主です」

「えっ、神主さん?! なんか用ですか」

「巫女から不思議な気配がすると聞いて来てみたんだが、確かに君から不思議な感じがする。まあ、私たちにはそれしか分からないし、陰陽師の所に伺ってみるといい」

「は、はあ。どうも。なあロック、あの人本物の神主なのか?」

「ああ、俺は何回かここに来て見たことがある。あの人の言う通りいっぺん陰陽師のトコに行ってみようぜ」


 お参りを終えた俺たちは評判の良い陰陽師の所に行った。いつのまにかユイはカフーク名物の和菓子を買っている。四角い木箱に、一口大にあんこが置かれてその上に餅がかかっている。逆なら俺の時代でも見かけたが。

 陰陽師の居る建物に入り、奥の部屋に進むと椅子が4つと、机にお茶が4杯置いてあった。その向かい側に陰陽師らしき人がいた。


「いらっしゃいませ。私、陰陽師のヒロマサです。おや、3人でしたか。玄関の式神は4人と言っていたのに。これは失礼」

「どうも。島村和泉です。えっと、言われたから来ただけなんですけど、陰陽師って何するんですか?」

「まあ、占いが主ですかね。確かに貴方は興味深い。名前の漢字をここに書いて、手相と、お茶を飲み干して器を見せてください」

「は、はい」

「すごーい、陰陽師始めて見たー」

「たったそんだけの事で占えんのか?」

「はい。名前と手相は人生全体、お茶を飲み干した時の、偶然の形は近い未来を占います」


 俺は名前を書いて手相を見せ、お茶を飲み干した。


「そうですねえ。貴方は近いうちに旧友と出会います。またそろそろ人生の1番の壁に出くわしますが、前に進む意思を失わないでください。女運は、出会いは良いですが、何かしら運の悪い事が起こりがちですね。以上です。」

「え? それだけ?」

「それだけです」

「なんか、もっとこう、ないの?」

「妖怪退治でもない限りこんなものですよ。ではお代を」


 正直ガッカリだった。お代を払い、俺たちはイスから立ち上がった。


「でも旧友と出会えるんだってな! 良かったじゃねえか!」

「あと最後に1つ言いたい事があります」

「え、なんですか?」

「今、貴方は壊れています。正確には、貴方の心が壊れています」

「はい? どういうことなんですか?」

「目覚めて始めて人を殺してなんの躊躇もない。普通ではありません」

「目覚め?! 何故それを?!」

「手相は過去をも見れます。近い過去ならとても良く。貴方の記憶は失われていません。凍った記憶を思い出すことです。それはとても辛いことになるかも知れませんが」

「どいうことなんだ?!」

「ともかく、貴方の心は壊れています。壊れた心は隙を生み、物の怪の類に取り憑かれやすくなります。悪霊や妖怪、悪魔などです。壊れた心をそれらに取り憑かれる前に治してください。良いですか? 『心のコンパス』に従う事は重要ですが、『心のコンパス』という言葉の意味を誤解してはなりませんよ。ではお気をつけて」


 意味を理解できないまま俺たちは建物を出た。あの陰陽師の言ったことはどういうことか。凍った過去を思い出すとは? 疑問を1番最初に口に出したのはユイだ。


「どういう意味だったんだろねアレ」

「言われた当人の俺にもわからないや。心が壊れてるらしいけど、その壊れた心のコンパスは重要だってさ」

「占いって言って、意味ありげなこと言っときゃ稼げるからボッタクリだな陰陽師って奴らは」

「それよりお昼ご飯は?」

「あーテキトーでいいか。それと昼食べてちょっとゆっくりしたら、海に釣りに行くぞ!」

「え?! また釣りか!」

「今度は俺の慣れた海釣りだ!」

釣り楽しいからね。何回も行くのもしょうがないね。

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