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川田三兄弟死す。そして和泉を知る男、河内飛鳥

 それはカネの塔と呼ばれる木造の塔で、五重塔をさらに縦に伸ばしたような形をしている。真ん中に通る太い柱はギシィギシィと音をたてて揺れている。

 もうすぐ真昼になろうかというのに、その最上階は一切の窓はなく陽の光は入らない。小さなロウソクの灯火のみ、薄暗い闇の中でその会話は行われていた。


「飛鳥様、ヤラーンを殺したロックと素性不明の男の行方ですが」

「見つかったのか?」

「はい。3日前10代の女を車に乗せてここトツカに入り、翌朝突如姿を消しました。そして今朝、突然酷道沿いに現れました」

「見つからなかった原因は?」

「陰陽師曰く、神隠しの一種のようなものと」

「通りで人員を増やして捜索しても見つからないはずだなで、今は場所を押さえてあるな」

「はい」

「では川田三兄弟を向かわせろ。ロックは殺しても構わんが、男と女は捕らえろ」

「はっ」



 そう、モンスタートラックに乗った3人御一行は半世界崩壊前の道から酷道に出た後、常に見張られていたのだ。しかし彼らの会話はこのようにのんきだった。


「うおおおおおあ! な、な、なんだこれ?!」

「ゆ、ユイ! ロック運転してるんだからイタズラしてやるなよ」

「アハハハ! イモムシだよ!」

「え、ユイ、サンショウオは無理なのにイモムシは触れるのか」

「あああ! 背中に入った、とってぇ!」

「うん。だってムシって筋肉ないし?」

「いや虫にも筋肉はあるだろ……」

「あと虫ってたんぱく質で出来てないし」

「ああ! 座席に背中ベターンてしたから虫ベチャーンって潰れたぞ!」

「いや虫もたんぱく質だよ…… 背中の虫拭くよ」

「ありがとう和泉ぃ!」

「とにかく虫は平気なの」


 その時車が急停止し、3人は前に投げ出されそうになるが、シートベルトが身体を受け止める。


「うお! ロック、なんで急ブレーキを?!」

「いや、ブレーキかけてねえぞ!?」

「2人とも車体をみて!」

「な、なんじゃこりゃあ!?」


 窓から車体を見ると、金色に輝く大量の腕が車を押さえ込んでいた。


「この腕が無理やり車を止めたってのか?!」

「木の上に人がいるぞ! 2人だ。とりあえず降りてみる」

「待て和泉。同時に降りるぞ。ユイ、バスローブを渡してくれ」

「はい!」


 ロックは5秒程度でバスローブを装着した。なんでも改造して装着時間を大幅短縮したらしい。ロックが合図して同時に降りた彼らは、木の上にいる黒装束の忍者の格好をした2人を見る。目元しか素肌は見えず、骨格にもほぼ違いがない為見分けがつかない。ロックは右腕の銃口を向けながら話す。


「何もんだテメエら。急いでるんで車、離してもらえるか?」

「我は川田二郎」

「我は川田三郎」

「ご丁寧に名乗ってくれてどうも。だがなあ、こっちは名乗り返さねえし、そもそも名前なんてどうでもいい、お前らがどういう奴らかって聞いてんだ!」

「名乗らずとも貴殿の名は知っている。ヤラーンを殺した組織、タリナーの新主導者ロックだろう。だが、道着を着た男は知らん。貴殿の名は?」

「え、俺? えっと、島村和泉ですけど…… それで、川田二郎さんと三郎さんはどういった御用で?」

「ここトツカ森林地帯の守護、河内(かわち)飛鳥(あすか)様の命令で貴殿らを捕らえに来た」

「ヤラーンを2人で殺すほどの者を野放しにしてはいけないとのお考えだ」

「なにぃ? 河内だと?」

「ロック、貴殿は殺しても良いと言われている」

「車の中の女も捕獲する」

「ロック、戦うぞ」


 和泉の目には漆黒の炎が燃えていた。昨夜のユイとの会話で帰りたいという気持ちが爆発し、今の彼は手段を選ばない状態だ。ロックは和泉の目を見て頷き返す。

 すると木の上の黒装束の、1人の後ろには金色に輝く千手観音像が、もう1人の後ろには灰色の金剛力士像が現れた。


「へえ、それがお前らの能力(パワー)かい。んじゃ車を引き止めてる方から倒すかな!」


 ロックの右腕から銃が撃たれる。それは千手観音像を後ろに連れた男に向けられた。しかし千手観音像から腕が離れ銃弾を受け止める。千手観音像の腕の一本が壊れるが男自身無傷だ。


「じゃあその腕、あと999本全部ぶっ潰すか!」


 ロックが剣を抜き両手に構える。


「潰すより避ける方に専念してはどうかね」


 千手観音像から何本もの腕が離れ、拳を握りロックに全方向から遅いかかる。

 だが、ロックはそれを斬って躱して斬る。彼のバスローブはそもそも脳波で操るのだが、実はヘルメットには全面にカメラがあり、それを脳に直接電波のようなもので送って、脳でモニターしている。

 他のセンサーも同じような手法でモニターしているが、当然彼の脳みそはかなりの情報処理能力を要求される。しかし平然とやってのけるところが彼の才能なのだ。


 和泉も千手観音像の男に近づこうとするが、腕が遅いかかってきて近づけない。とりあえず襲ってくる腕を潰していく。もう1人の男は腕を組み眺めるだけで手を出さない。


「ほらほらどーした! 腕の本数がだいぶ減ってきたぞ!」

「なにっ、ただのスーツ使いがここまでやるとは?! もう1人の男も只者ではない……」

「これで全部だ! もう『手』が無くなったなあ!」


 ロックが突撃する。もう腕の無い千手観音像が、ロックが向かってくるのに合わせて回し蹴りを放つ。だが、ロックはそれを読み、一瞬空中で静止し、蹴りをすかして千手観音像を斬った。するとボロボロと崩れ落ちる。無防備になった男を和泉は殴った。


「よし、手加減できた。歯は何本か折れたけど気絶で済ませたぞ」


 和泉は油断していた。もう1人の男が不意打ちに和泉の左脇腹に中断蹴りを当てた。さらに男は左上段回し蹴りをして、和泉の右腕でガードされるが、次の右ストレートは顔面に直撃し和泉は後ろによろめく。

 ロックが男に斬りかかるが避けられ、体制を立て直した和泉が飛びかかるも男は距離をさらに取る。


「まだ使いたく無かったが、くらえ!」


 男がそう言った瞬間金剛力士像が瞬間移動で突然和泉の目の前に現れ、和泉の左脇腹に蹴り、右腕にも蹴り、そして顔面に右ストレートを目にも留まらぬ速さで当てた。吹っ飛んだ和泉は白目を剥き気絶してしまう。


「和泉!」


 ロックの隙を見逃さず男は足刀を放つが、後ろに下がって避けられる。


「へえ、あんたの攻撃を何倍もの威力であの石像が再現してくれるのね」

「フン、石像じゃない、金剛力士像だ! お前のスーツをも砕く!」

「じゃあ、お前の攻撃を全部避けるだけだぜ!」


 男が右回し蹴りを放ち、そのままコマのように回り左後ろ回し蹴り。一旦足を踏みしめてから足刀、足刀、足刀の三段蹴り。ロックは全て横に躱す。

 四段目の蹴りが繰り出される事は無かった。なぜならその脚はロックが避けざまに斬り落としたからだ。男は片足を失い体重を崩し倒れるが、右腕でロックに掴みかかろうとする。しかしその右腕も肘のところで切り落とされる。


「三郎、撤退だ、伝えろ……」


 それが彼の遺言となる。ロックは男の胴体を真っ二つにした。ロックが気絶していた男を見る。男は立ち上がり走り出していた。ロックが彼を撃つが、男は血を背中から吹き出しながらも木を蹴り、森の闇に消えてしまった。


「クソッ逃げられたか。和泉起きろ!」



 逃げた三郎という男はなんと血液の半分以上を失ってまでもカネの塔にたどり着いた。それでも生きているのは執念か奇跡か。


「三郎! どうしたその傷は!」

「一郎兄さん、報告が先だ。飛鳥様、ロックも、島村和泉もとにかく強いです。三郎は死にました……」

「なにぃ?! 島村和泉だと! 今、島村和泉と言ったか!」

「はい。もう1人いた男の名は島村和泉です…… お伝え、しました」


 仕事を終えたその瞬間、川田二郎は息を引き取った。


「島村和泉だと! あいつが生きていたのか、バカな! 奴らの道の先はカフーク村だったな! とにかく、今すぐに出る!」

「お待ちください! その役目この川田一郎にお任せください。川田家の長男として弟2人の敵討ちをさせてください!」

「何を勘違いしている。彼らは殺さん。特に、島村和泉には用がある」

「で、ですが!」

「これは俺の決定だ。それとも逆らうというのか?」

「やむを得ない、か」


 一郎の腕から、黒い腕が伸び、その手が飛鳥の胴体を貫いた。


「俺に勝てないから部下になった事を忘れたか」


 胴体を黒い腕に貫かれたまま飛鳥は一郎に近づいた。ろうそくに近づいた事で、飛鳥の身体がその灯に照らされる。

 河内飛鳥は人間の形をしていながら、全身には鱗があり、その隙間からは多くはないが剛毛が生えていた。下腕部は通常の人間より一回りかふた回り大きく、さらに硬く頑丈でこれまた大きな爪があり、指だか爪だか見分けがつかない。また彼の瞳はヘビの瞳だ。

 人間と大きく違うのは尻尾がある事だ。ゴム状の皮膚でよく伸縮し自由に操れる尻尾で、その先には鋭利な刃物という人工物が融合されくっついている。


 飛鳥の爪で、一郎が貫かれた。力を失い倒れて、一郎の黒い腕が消滅した。

 ポッカリと空いた飛鳥の腹。しかしその傷口は見る見る間に塞がってしまった。


「島村和泉、奴はなぜ?!」

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