日常
僕はいつも通り、最寄駅に行く。いつもの時間の電車に乗り込む。窓の外を見ると、いつもと同じ風景が広がる。1年と7ヶ月、見続けてきた景色だ。
僕はいつも通り、他校に通う中学時代の友達と話す。
「今日は創立記念日だから学校は休みだし、普段より学生が少ないね」
「休みかあ、いいなあ。俺も休み欲しいよ。じゃあなんで制服なんだ?」
「部活があるんだ。流石に今日は部活入れなくてもいいと僕は思ったんだけどね。でも予定決めるのは幹部だし、僕は幹部じゃないからさ」
「そうか。そういや何部だっけ?」
「室内楽。チェロをやってるんだ……って言ったことなかったっけ?」
「ごめん、覚えてなかった」
友人の記憶力のなさに呆れていると、学校の最寄駅に到着した。
「じゃあ、またな」
「また明日な」
朝に『また明日』なんて笑えるよな、と思いつつ、電車を降りる。
電車を降りた途端、くらっとした。
……目眩?
目眩はすぐに治ったけど、僕は違和感を感じていた。
ずっと立ったまま静止してたから目眩がしたのかなぁ。でも僕は滅多に目眩なんか起こさない……。
——いいや。目眩なんか気にしていても仕方ない。僕は改札へと向かった。定期を取り出して、改札にタッチする。
しかし。
突然の警報音。そして、がしゃん、という音とともに、僕は行く手を遮られた。
えっ?
どうしてだろう。
不思議に思ったが、きっと定期が切れたのだと思った。いつも改札を出た後なんてまともに表示を見ていない。定期が切れる期限だってろくに見ていないのだ。
僕は仕方なく、繰越計算機に行ってチャージした。チャージ金額も、運賃に10円足りなかったのだ。
10円チャージしようとして、僕は思わず頭を抱える。
うう、そうだ。僕が使っている鉄道会社のチャージ機は、10円単位でのチャージができない。他のところだと出来るのになあ。大声では言えないけど、やっぱり不便だ。
仕方なく最低金額の500円をチャージして、改札を出る。
気を取り直して、学校へ向かう。
今日もいつもと変わらない日常が待っていると信じて。