Outroduction
あの日、僕は日常がいつもやって来るとは限らないことを知った。本当に並行世界なるものが存在して、その世界には僕とは少し違う僕がいることも。
でも、並行世界での1日もなかなか楽しかった。いつもとは違う友達がいて、少しだけ違う日常がそこにはあった。ただ、またあの世界に行きたいと願っても、行くことは叶わなかった。だから僕は、当たり前の日常を大切に過ごそうと決めた。
やがて受験シーズンを迎え、第1志望に合格。今では上京し、安いアパートで暮らしている。レストランのアルバイトをしながらね。
朝がきた。
耳元でなるiPhoneを止める。
うんと伸びをして、呟いた。
「新しい1日が始まるんだ」
着替えてご飯を食べて、家を出る。
定期を触れると、ピッと音がする。
電車に揺られ、目的地まで約15分。
改札を出て、バスに乗った。
大学までは約10分。
正門前で降りて、門をくぐる。
新緑のトンネルとも言えそうな道。胸いっぱいに息を吸い、吐く。
僕が所属する大学の文学部の授業を行う主要教育棟まで歩く。
——とん、と肩に、誰かの手が触れる。
振り返ると、そこにあったのは、懐かしい顔。
耳に入る、聞き慣れているのに聞き慣れない声。
「——今度は僕の番みたいだ」
非日常は、唐突にやって来る。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。これで「ささやかな日常」は完結となります。いかがでしたでしょうか?
感想、評価等頂けますと幸いです。




