ご飯
全く似ていない、と思った。
いや、もちろん部屋は同じ部屋なのだ。
扉の位置も、窓の位置も、押入れの位置も、大きさも、扉の模様、床の木目ですら同じだ。
だけど、違う。これはりんりんの部屋だと1発でわかる。
まず、戸棚の中。僕の部屋だと小説が多いけどりんりんの部屋は漫画ばかり。
それに、僕の部屋にはないものがある。
ギターだ。
弦を弾くと、ポロンと優しい音がした。僕の家にはギターはない。誰も弾けないから。
あとは、部屋の真ん中にある小さな机の天板が丸かった。僕の家のは四角いけど。
そして、全体的に片付いていた。
僕の部屋はもう少し床にものが散らばっている。もちろん、片付いている方だし、普段の生活をする分には支障は何もないんだけど。
部屋の中を観察していると、りんりんがやって来た。手にコンビニの袋を持って。
「はい、これ。こんだけしかないけど……」
手渡されたのは、ステックパンの袋が一袋。りんりんはもう一つ同じ袋を取り出して、食べ始める。
時計を見ると7時過ぎ。
「僕、少し外出て来る」
そう言った僕に、りんりんは首を傾げながらも時計を見て、「うん、気をつけて」と言った。
幸いなことに、顔見知りには会わずに済んだ。
「ただいま」
帰ると、「どこ行ってたの」とりんりんが訊いた。パンはもう無くなっている。
「これ、一緒に食べようよ」
取り出したのは、野菜の千切りの袋が1袋に100円の小さなデザートを1つづつ。レジ袋の中には割り箸2つ。
「マジで? いいの?」
りんりんは驚いて、僕を見る。
「うん」
僕がうなづくと、りんりんは大喜びして「ありがとう!」と言った。
野菜の袋を開けて、割り箸を渡す。
「先に半分食べて」
「うん」
りんりんが割り箸を割って野菜を食べている間に、僕はパンを食べる。りんりんの好みなのか、チョコチップが入ったやつだった。僕もチョコチップ入りのパンは好きだから、ペロリと平らげてしまった。パンを食べ終わった頃に野菜の袋を受け取ると、残っていたのは半分ではなく、1/3ほどだった。でも、そんなこと気にしない。野菜を平らげた。
デザートは、りんりんが待っていてくれたから、一緒に食べた。
「なにこれ、うまい!」
「これ、好きでたまに買って食べるんだ」
最近のコンビニスイーツは、どれも美味しい。遠出しなくてもこんなに美味しい物が買えるから助かった。まさに"コンビニエンス"な店だ。
「これ、コンビニ?」
「うん」
「最近のコンビニってすごいよな。まさに"コンビニエンス"じゃん」
「……同じこと考えてたよ!」
——そうか。
並行世界だとしても僕は僕。
だから気があうのかもしれないな。




