4:現実
「まず、私たちの世界では主となるエネルギーは電気です。」
先ほど全否定された部分から入る。
「基本的には、物を燃やすなどして電気を発生させ、その電力を、各家庭に線を通じて配るんです。もちろん、電圧が一定でないと家庭で使う場合困ってしまうので、一定に保つための施設を経由してからです。」
「でも、その施設や、線を魔物が襲った場合どうするのでしょう?そちらの世界には電気を食べる子はいないのですか?」
あーそうだな、大前提が違うんだ。
そもそもそこから説明しないとな。
「私たちの世界に、魔獣だか魔物だかはいません。動物はいますが基本的に人が何とか出来るものが殆どですね。」
驚いた顔をしていたがすぐにこちらの世界には魔法が無いのだと思い出したようで納得した顔をしている。
「なるほど、そういうことですか・・・やはりあの仮説は・・・」
何やら長考タイムに入ってしまったようだ。
「まぁ、お互いの世界の生態系に付いては置いておきましょう。正直突っ込まれても僕はあまり詳しくないので。」
嘘だ。化石とか絶滅した動物とか文明とか古代のものにロマンを感じ、やたらその辺の資料を調べていた時期がある。虫は実は宇宙生物説という記事を最近見てからは、もっぱら宇宙について調べていたが。
閑話休題
それから電気を使ったものやネットワーク等の仕組みを説明した。
こうやって話してるだけでも世は便利だったんだなと痛感する。
というかこの世界でそういった設備を開発すれば遊んで暮らせるのでは。と思ったがそもそも0から作る技術も脳みそも持ち合わせているわけがなかった。
「世界の反対側の情報が数秒で・・・それは凄いですね。正直、電気を侮っていました。」
「僕はその電気を使ってより世の中を良くするための仕組みを作っていたんですよ。こう見えても、そこそこやれる子だったんですよ。」
ドヤァ。嘘は言ってないぞ。断じて。
ほら、ライザさんめっちゃキラキラした目で見てくれてるわ。これはオチたな(確信)
「それはとても素晴らしいです!」
「でも、そうそういいことばかりでもないんですよ。」
「そうなのですか?聞いでいる限り、素晴らしい世界だと思ったのですが。」
「その通りです。僕達の世界は所謂1つの理想郷になって行きました。そして、理想郷になってしまったからこそ、破滅が始まったんです。」
そう、アダムとイブが林檎を手にしてしまったように。人は手の届く甘い蜜に手を伸ばさずにはいられないのだ。
それははるか昔からずっと危惧されていた事だった。
しかし、人は見ない振りをした。そして、それに直面した時にはもう、間に合わないところまで来ていたのだ。
「技術力の向上により、医療技術が飛躍的進化を遂げたおかげで、人は減ることが無くなりました。」
クローン技術の応用により、末期の病気以外は全て、そしてゆくゆくは転移場所をすべてクローンと入れ替える技術を生み出した。
首から下はもう生まれたままのものでは無い。などという人はザラだったのだ。
クローン技術はふわっとしか知らないし、実現も多分出来ないので軽く流しておいた。
「死なないということは、減らないという事です。そう、人は増えすぎたんです。食料は慢性的に不足し、私の子の世代は恐らく薬で栄養を摂取する時代になると言われていました。」
「そんなに・・・」
「まぁ色々と手を尽くした見たいですけどね。結局問題を先送りにすることしかできなかったため、最終的に政府は年齢制限を設けました。」
ライザさんの顔が驚愕に見開かれた。
「待って、それはどのくらいの年齢までになるの?それと、それまでに生きていた人達は?到底そのよううなこと、許されることではないでしょう!?」
「そうですね。誰もがそう思いました。噛み砕いて言えば、そこのあなた、死んでみませんか?従った場合、家族には少しばかりのお礼を。という情報を発信したのです。ですが、そうすることしかなかったのも、事実だったんですよ。神にさえ届くかと思われた人の栄光は、そこから終わりへと向かっていくしかなくなったわけですね。」
当時の暴動の記録は各地で記録されていた。しかし、それはそれで人口を減らす口実にもなるし、結局改善案は出ないしで上からしたらいいことずくめではあるのだが。
「まぁ僕の世界についてはこのくらいですかね。細かいところとか生活様式についてとかは話してるとキリがないので。」
「は、はい。ありがとうございました。」
どうやら結構ショッキングな話だったようで少しボーっとしていたようだ。
その時、見計らったかのようなタイミングでドアがノックされた。
「#/@!-.→¥」#*|%○=」
メイドさんが扉の向こうから声をかけてきた。
相変わらず何を言っているのか分からないな。
「あ、えっと・・・コウの部屋の準備ができたようです。一緒にご案内しますね。」
全然何言ってるか分からないので反応に困っていると、翻訳してくれた。ポータブル型の翻訳機さえあればこんな苦労はしなくて済むのに・・・。むしろそれに頼り切っていたツケがここにきているわけだが。
部屋を貸してくれるらしいので、とりあえずの住居が決まるまで泊めてもらえると非常にありがたい。厚かましいが、魔物がいる世界で野宿は御免被りたいところだ。後でお願いしておこう。
「では行きましょう。」
そう言って小さな小型のキーホルダーのようなものをそっと渡してくれた。
「¥°$++〒=*〆5$=¥¥=5$#☆%°#」
いや、全然わからんから日本語でさっきみたいに話してくれライザさん。
す困惑していると、慌てながら少しその機械を弄り、手渡してきた。
「これ、翻訳機なんです。言葉が通じないと不便だと思うのでお渡ししておきますね。常にどこか身につけておいてください。遺跡から発掘されたちょっと珍しいものなので、皆には内緒ですよ。」
可愛らしくウィンクしながら言われた。
たとえ、それが圧倒的にわざとらしくても、少しドキッとしてしまうのが男の悲しい性なのだ。
ところで皆さん、ご都合主義って好きですか?
オレは今好きになりました。言語問題はクリアしたし、このまま異世界転生者らしく、チート能力に開眼し、女の子をたくさん囲って、ハーレムでも築いて行ければもう元の世界なんていらないんじゃないかな!
異世界万歳!!
願わくば、コレが夢ではありませんように・・・。
本当は昨日投稿する予定だったんですが。
話が進まなさすぎるので、もう少し余分な話をはさまないように気を付けます・・・。